第31話 尊師の罪
『誰か残っているのかなあ?』
『残っているとは思えないわ』
ルークとエレナは寂れたエルフの里に来ていた。
『誰か居ますか〜』
比較的被害の少ない建物から誰かが居る気配があった。
『お〜い。エルフの姫が帰ってきたぞ〜。誰も居ないのか?』
建物の影から3人のエルフが出てきた。
『おゝ、姫さまご無事で!』
誰かが戻って来るかも知れないと3人で残っていたらしいが、この3人も森の外に出ていたので実際に何が起こったのかは分かって居なかったが重症者からは『人族の襲撃を受けて何人かは攫われたが刃向かった者は殺された。』と伝えた後に息途絶えたとの事だった。
エレナは3人で里を守るのは大変だからと里を捨ててユスリムの街に移る様に指示を出した。ジョシュアも居るから他のエルフに混じって生きる様にする方が良いだろう。
ルークは尊師ルーエンが里に来ていたのか残っていた3人に確認したところ、愉快な爺さんが来て長のアメリアに気に入られ半年程滞在していたが『魚が食べたい』と出て行った。名前は覚えていないがシャンプーやリンスと呼ぶ物を配って喜ばれていたとの話だった。
『尊師だ。でもなんで持ってるの?』と独言るのだった。
ルークは里を離れる際に迷いの森の仕掛けについて調べ魔法陣として手帳に記した。
*****
ルークは港町エルグリアに戻ってきた。
もちろん、今度は少し賑やかな場所の宿に泊まった。宿泊代より安全が優先だ。
それからなるべくエレナを残して尊師が行きそうな場所を探し続けた。
船着場にギルド、市場や娼館など…。
やがて港の先に釣り糸を垂れる老人を見つけた。
『ルーエン尊師ですよね?』
ルーエンは突然の呼びかけに驚いたもののルークから解任された経緯を聞かされ『いずれそうなる運命じゃったのだろう』とルークを労った。
続けてルークはエルフの里が襲われた事を話し、尊師に誰かに里の話をしたかを尋ねた。
『アメリアさんは無事か!』と聞かれたが殺されたとも攫われたとも聞くと話すと、肩を落として『ワシのせいじゃな。この年寄りは生きてるだけで罪を犯す。あれだけ口が堅かったのが自慢じゃったのに…。』と項垂れた。
ルーエン尊師はポツポツと話出した。『このアルノー王国の王都に招かれた際に旅の話として話した。その時にエルフの里も話してしまった。こんな事になるとは思わなんだが、ワシの罪じゃ。』とその後にトーマス国王から最近では物忘れ酷いので探し物を見つける方法がないかと問われて探知魔法の魔法陣を紙に書いて渡した事まで自白した。
ルークは宿に被害者のエレナを残している事もあり、慰める事も出来ずに立ち去る事しか出来なかった。
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