第30話 エルフの里はパラダイス 

ルーエンは森の奥まで来ていた。


この辺で良かろうかな。迷いの森は人に幻覚を及ぼす魔法、人でなければ迷わんじゃろう。ルーエンは魔石を探す魔法陣を広げて魔力を込めた。

物忘れが酷くなった時に作った魔法陣が他で役立つとは思わなんだが。


『あゝアッチに何かある』と少し進む毎に魔法陣で位置を確認しながらエルフの里に着いた。

『思ったより簡単じゃった(笑)』


『おい!お前は人族だな。どうやって此処に入った!』

『拙者はルーエン。見ての通りの年寄りじゃ。此処の責任者に会わせてくれ。』


ルーエンはエルフの里の長の前に引き出された。

『この者は我がエルフの里に侵入した人族でございます。』


『これはお初にお目に掛かります。私はルーエン・バン・シュトラウスと申します錬金術師の老人でございます。憧れのエルフの里が見たくて、ここまで辿り着きました。我の錬金術の技をお気に召せば暫くの滞在をご許可願えればと存じます。』


『私はこの里の長をしているアメリア・ハイ・ファルセットです。それで何が出来ると言うのです?』

『おゝあなたがアメリア様ですか?あのエルフのステファンの求婚を袖にして、お逃げになったとお聞きした。』


『え!何故それを?』

ルーエンはこれまでの経緯を説明して国を追われた苦労を労った。


『ご苦労された姫君がお気の毒で私の錬金術で少しでもお慰め出来ればとお伺いした次第です。』

『何か気になる事はございませんか?些細な事でも、例えば肌がガサつくとか髪の艶が衰えたでも。錬金術師ですから色々なポーションをお作り致しますが。』

『そんな物が有るのですか?』

『御座いますとも』


これらは弟子のルークが考えた物だが弟子の物は師匠の物、師匠が居て弟子が作れば師匠の物。

以前にルークが作ってた物を失敬、否、献上品として収集した物をアイテムボックスから取り出して、『宜しければ誰かに試してからお使いください』とシャンプーやリンス、化粧水や保湿クリームなどを献上した。

気を良くしたアメリアによってルーエンは侍女に案内されて別室で使い方を教えた。

その日の夜には食事に招待され滞在を許可された。

ルーエンは侍女たちにも献上品と同じ物を大盤振る舞いして一気に人気者になった。

(ルークは度々作った品が消えたのを宮女の誰かが持って行ったのだろうと『好評だなあ』とセッセと補充していたのだった)

ルーエンはその後もルークが作ったドライヤーとか温水トイレとか電熱器とかの魔道具を献上してエルフのお姉ちゃんにモテモテの日々を送ったのだった。


『綺麗なエルフのお姉ちゃんのぱふぱふは良いなあ〜』とエルフの胸に顔を埋めるのだった。

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