第3話アラハ級巡洋艦レゼングラース
≪火星・地球圏の中間宙域。
EDSFの新型艦アラハ級巡洋艦レゼングラースは、これまでの訓練の総仕上げとして、2隻巡洋艦による対艦訓練デスマッチのために、その黒塗りの艦影を
窓のない電磁ディスプレイで囲まれたEDSF艦の汎用艦橋。平時体制を示す青の床下照明で照らし出されている。
限られた
一際、青く縁取られたリンクシートに、特殊スーツを着込んだ
ヘッドギアを深々とかぶった薄紫色のショートヘアに清楚なコハク少尉の緊張した表情が隠され、誰も窺い知ることは出来ない。
なにせ、相手はシャロン准将。型破りな戦術家であり、時にルールを逸脱することすら辞さない。コハク少尉は、そんな相手に挑む自分の手が小さく震えているのを感じた。
何をするかわかったものではない。下手すると、性能テスト名目で茶目っ気出して実弾を使用する可能性すらある。
薄っすらとにじみ出る。そう覚悟しつつコハク少尉は異様な喉の乾きを感じていた。
「訓練開始10分前です」
艦橋の士官が訓練開始の時間を知らせると、巡洋艦レゼングラースが一気に騒がしくなる。
『こちら艦橋。これより、戦闘訓練を開始する。総員戦闘配置』
艦橋から全クルーへ艦内放送が
自動航行システムにより、慣性航行を行っていたレゼングラースの指揮権が、通常操舵手から、特殊操舵手コハク少尉へと委任される。
「
コハク少尉が艦隊と接続を開始する。
「
コハク少尉が、オペレーターに呼応する。
「…
足早に艦橋オペレーターが操舵リンクへの
「
「
「
「
コハク少尉の青い瞳が艦橋と同じ真っ赤にそまり、全身に紋章のような
EDF最新のルーンラビット・プロジェクト技術の極地である新鋭艦レゼングラースが大きく鼓動した。
「レゼングラースの腕の見せ所よ。あの女、シャロンに絶対負けるな」
レゼングラースのヒスイ艦長が、コハク少尉に近づき活を入れる。
「了解…ッ!」
コハク少尉は、緊張を払拭するように、私は艦橋に響き渡るぐらいの大きな声を張り上げた。
有望なヒスイ艦長は、一路、
副艦から渡された本訓練の環境情報をPADデータの情報を再確認していた。
ヒスイ艦長の勝率はイーブンだった。
レゼングラーセのほうが高スペックの新造艦とはいえ、シャロン准将のバニラは実戦でスペック通りに速度が出る違法改造を行っている。
EDSF特殊技術研究所や情報管理室は、バニラのことを
ヒスイ艦長は、
「シャロン准将の作戦…」
コハク大佐は、シャロン准将の一期後輩のである。
あやつの性格はわかっているし、内報で得られる情報は切り抜きにしてある。
金がかかってない作戦は、ほぼセオリーに近い動きをする。
しかし、今回は金がかかっている。
今回の勝負で、コハク艦長も千ドルの大金を、レゼングラースにかけた。これで、シャロン准将は、これで絶対にレゼンラースに襲いかかる。
お金が好きで仕方がない地球連合女性准将が借金を背負ったので自分を救うために職権乱用の限りを尽くすスペースオペラ むーんしゃいん @aeredx
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