スターバックス
西しまこ
第1話
どうしようもなく好きだという思いと、もうこの恋は駄目なんだという諦念とがこころの中にあり、その狭間で、僕のこころはもがいていた。
「
「あ、うん。何?
「……いや、手が止まっていたからさ。休憩する?」
「そうしようか」
僕は友だちの
のだけど、僕は勉強が手につかずにいた。
「珍しいね。聡が集中出来ないなんて。なんかあった?」
図書館を出たところで、
「……うん」
でも、僕は胸のうちを
「スタバ行く?」
「うん」
スタバに行くまで、僕たちはあまり会話をしなかった。スマホを見たり、目に着いた何かについて短く話したり。
スタバで僕たちは二人ともコーヒーを頼んだ。中学生くらいまでは、何か甘い飲み物を頼んでいたような気がする。二人とも、いつの間にブラックコーヒーを当たり前に飲むようになったんだろう? ふいに切ないような気持ちになった。小学生や中学生のころを思い出し、あのときは、僕はほんとうの悩みや逡巡というものを知らなかったのだ、と思った。
「聡、だいじょうぶ?」
「うん、ありがとう、
「ほんとだ。前は甘いもの頼んでいたよね」
「うん」
「でもさ、
「え? そうなの」
美月は、
「そうだよ」と、
「今度、いつみんなで会う?」
「やっぱ、春休みかな?」
「予定が合うといいね」
「うん」
変らないものと変わってゆくもの。
幼いころからの仲のいい友だち二人が、ずっと仲良くつきあっているのを見ると、僕は、僕の終わっていく恋を前にして、ほんの少し慰められる気がした。
今日のコーヒーはなぜかいつもより苦く感じられた。
了
一話完結です。
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スターバックス 西しまこ @nishi-shima
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