第150話 おまけその1

 第3階層のリスポーン地点を全て潰してはいない。

 だが、こんだけ広い土地を遊ばせておくのも違う。

 それで俺はミツバチを持ち込んだ。

 上手くいけばかなり上質の蜂蜜が採れるはずだ。


 天敵のスズメバチや寄生虫もダンジョンにはいない。

 花はある。

 草原だから。


 ミツバチはダンジョンの花だろうが問題なく集めるようだ。

 巣箱から飛び立って、足に花粉を団子みたいに着けて帰ってきた。

 あとはモンスターが巣箱を襲わなければ問題ない。



「長閑ですね」


 藤沢ふじさわが巣箱が立ち並ぶ光景を見てそう言った。

 さあ餌やり作業だ。

 防護服を着て、巣箱を開ける。

 巣箱の端にある薄い箱の中に砂糖水を入れる。

 蜂蜜があるのに餌が何で必要か俺も分からないが、砂糖水をやらないといけないらしい。

 ただやり過ぎると、この砂糖水で蜂蜜を作ったりするらしいが。

 砂糖水の蜂蜜はあまり美味しくないと聞いた。


 まあ、今は試験的にやっているだけだから。

 本格的にやる時は養蜂家に頼むさ。


 オークが巣箱に近づいてきた。

 オークはグルメだからな。

 意外に甘いものが大好物だ。


 オークが熊みたいにミツバチを襲うのか。

 オークは寄って来たミツバチに面食らった。

 異世界にミツバチはいないのか。

 いや、蜂のモンスターはいるから、きっといるだろう。


 オークは何もせずに逃げて行った。

 ミツバチを恐れる?

 ああ、異世界のミツバチはきっと猛毒なのだな。

 そうでなければゴブリンとかに全滅させられる。


 スタンピードの被害をなくすためにミツバチを飼いましょうと、宣伝するか。

 いや、今までそんなことに気づかない訳がない。

 何か穴がある。


「それですか。モンスターも普通に巣箱を壊しますよ」


 養蜂家に聞いたらそう言われた。

 違いはダンジョンの中か外かだな。

 ダンジョンの中のモンスターは餌を食べる必要がない。


 食欲が減衰しているのか。

 おそらくオークは蜂に刺されることと食欲で天秤に掛けたのだろう。

 ダンジョン内では刺される恐怖の方が勝った。


「美味しい蜂蜜ができると良いですね」


 藤沢ふじさわはそう言いながら巣箱にはけして近づかない。


「でも、毒の花の蜜とかも集めてしまったりしないか心配だ」

「養蜂も大変ですね」


藤沢ふじさわは何か蜂にトラウマでもあるの」

「ええ、学生の時に、首筋をミツバチに刺されまして、顔がアンパンのようになってしまって。休めない講義だったので、仕方なく出ました。面白い顔だったので、友達に写真を撮られまくりました」

「それはアレルギーという奴?」

「いいえ、刺された場所が悪かったらしいです。医者にはアレルギーではないと言われましたから」


「刺されたらすぐにアンモニア付けるといいらしいぞ」

「そうらしいですね。でもあの臭い薬品を常備したくありません」

「うん、俺も蓋を取って匂いを嗅いだらツーン鼻にきた。臭いがおしっこみたいだしな」


 ミツバチを何匹か捕まえて花粉のサンプルを採る。

 毒がないか調べるためだ。


 研究所で成分分析に掛けてもらって、それからマウスに与える。

 今のところ、毒はないみたいだ。

 ミツバチにとっては毒でなくて、人間にとっては毒という成分もあるかも知れないからな。

 念には念だ。


 蜜ができるのは花の量によるらしい。

 1ヶ月で絞ってみた。

 ドラム缶みたいな遠心分離機に巣を入れる。

 これに掛ける前にナイフで巣の表面を削ぐ。

 この時、巣に蓋がされていたら蜂蜜がある。

 削ぐとたらりと蜜が垂れる。


 今回は少し採れたようだ。

 毒の検査に出して今か今かと待つ。


 オッケーが出たので、食パンにバター塗ってその上に蜂蜜を塗る。

 うはっ、美味い。

 ダンジョンの花の蜜は美味いようだ。

 薬草とかも入っているらしい。


 お肌がツヤツヤになった気がする。


「お肌、ツヤツヤは嬉しいですけど、これ美容の敵ですね。こんなのパクパク食べてたら絶対に太ります」

「まあな。でも冒険者してたら太らないだろ。かなり歩いているし」

「ですね。戦車に乗っていますけど、降りてやる作業も多いですし。今日だけは気にせずに食べますか。うーん、魅惑の蜂蜜」


 藤沢ふじさわがご満悦だ。


「うひっ」

「どうした」

「ミツバチが入ってました」

「ガーゼで漉したんだがな。入ってしまったらしい。養蜂家あるあるだ」

「そんなあるある要りません」


 蜂蜜は大成功だった。

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 新作、始めました。

 よろしければ読んで下さい。


 タイトル『魔道具は歌う~パーティ追放の数年後、SSSランクになった俺を幼馴染は信じてくれなくて、振られた。SSSランクだと気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~』


 キャッチ『魔道具でほっこり、じんわり』


 タグ『異世界転生 ざまぁ ほのぼの 魔道具師 主人公最強 聞く力チート ステータス ハーレム』


 あらすじ『

異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。

音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、

幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。

魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。

そして再び出会う幼馴染。

彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。

もういい。

密かにやってた支援も打ち切る。

俺以外にも魔道具職人はいるさ。

落ちぶれて行く追放したパーティ。

俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。


https://kakuyomu.jp/works/16818093073204433967

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リフォーム分譲ダンジョン~庭にダンジョンができたので、スキルを使い改装して、分譲販売することにしました。あらぬ罪を着せて会社を首にした奴らにざまぁしてやる。不幸続きだった俺がスキルの力で幸福に~ 喰寝丸太 @455834

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