甘い誘惑(笑) 👙

上月くるを

甘い誘惑(笑) 👙





 いや~ん、青嵐あをあらしさんったら、快晴だからって、そんなに無作法に吹かないで~。

 パープルカラーのスカートがほらマリリン・モンロー状態になっちゃうでしょう。


 いくら花言葉に「甘い誘惑」が入っていても、あたしたち、無節操じゃないわよ。

 ほかにも「友情」「謙虚」「青春の思い出」「純潔」なんかもあるんですからね。

 

 小説好きの方々は、ライラックと聞くと、釧路を舞台にした往年のベストセラー、原田康子さんの『挽歌』を連想するみたいだけど、わたしたちが登場したかは不詳。


 ただ、別名・リラとも呼ばれるあたしたちには、熱い心と裏腹に、どこかひんやりとした北海道の女性の肌の DNA を彷彿とさせるなにかがあることはたしかみたい。




      🚢




 ところで、宝塚歌劇団を象徴する曲として有名な『すみれの花咲く頃』の元歌は、ドイツさらにはフランスの『再び白いライラックが咲いたら』だったってご存じ?


 1928年というから和暦では昭和3年のことになるかしら、同歌劇団の創始者・小林一三さんの指示で渡欧していた白井鐵造さんが帰国後、日本語の歌詞を付けた。


 のち『パリゼット』の劇中歌として発表されたんだけど、コーカサスやアフガニスタン原産のライラックは日本人に馴染みがなかったので、すみれに変えたんだって。



 ――♪ すみれの花咲く頃 はじめて君を知りぬ……



 すみれがライラックやリラだったりしたら、ちょっと、雰囲気が変わるわよね~。

 わたしたちに言わせれば、妖しい魅力をひそませた大人の恋に、ね。(。・ω・。)ノ♡




      💋




 ねえ、もう、やめてよ、青嵐さん、地下鉄の吹き出し口のモンローさんとちがってスカートを抑えられないわたしたちは、吹かれるにまかせるしかないんですからね。


 それともなに、可憐なわたしたちが困っているところを見るのが、愉しいとか?

 まさかねえ、青嵐さんって、嵐と名づけられてはいるけど、本当はやさしいもの。




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