第39話 エピローグ

過去に禍殃を討伐した伝説の死神のように、人知れず世界を救ったソウタたち。


「すみません、クライドさん」


「んあ? おでになにかようかぁ?」


「ちょっと、この岩をあっちに運ぶのを手伝ってくれませんか? あとで使うかもしれないみたいで」


「もぉちろんだ、力仕事ならおでにまかせてくれぇ」


「ありがとうございます。あ、キーランさん! それ、明日やるので置いといてください! ……っと、サマキさん、大丈夫ですか?」


「おお、すまんな。助かったよ」


「いえ、もしまた穴掘りスキルが必要になったら、いつでもいってください」


「ありがとう。じゃが……わしはそろそろ、お役御免かもしれんの」


「何を言っているんですか! ここだけの話、サマキさんが頑張ってる姿を見るだけで、こっちはもっと頑張らなきゃって思うんです。働いている姿、かっこいいです」


その栄光を世界から讃えられることはないが、そこにはソウタの充実した姿があった。


「じゃあ、すみません! あとお願いします!」


急いで職場をあとにすると、すぐそばで三人のパーティメンバーがソウタを待っていた。


「ごめん、おまたせ」


「そんなに待ってないわ。今ちょうど、行先がザラミル付近の海底にあるダンジョンに決まったところよ」


「おお、そうか。じゃあ、早速いこう」


リヴィエッタの時空間魔法を使って、ザラミル付近に飛んだ。


「しかしなぁ……なんか、世界を救ったっていっても、普段と変わらない日常が待っていたな」


「わたしは実際に禍殃をこの目で見ることができたし、データもたくさん取れたから満足だけどね~」


「私も同感です! 禍殃学において、私たちの右側に出る人なんていませんよ! ただ、論文を発表できないというのがとても残念ですが……」


「心配しなくても、ルシェが研究結果を後世に残してくれるわ。そのとき貴方たちの名前も入れてもらったら?」


「全員の名前を入れるつもりだよ~。もちろん、リオちゃんもね」


「おおっ! ありがとうございます! 私たち、きっと伝説になりますよ!」


「それで十分過ぎるほどじゃない?」


かく言うソウタも、富や名声より大切なものを得た現状には満足していた。


「ま、それもそうだな」


今夜も一行はダンジョンに向けて歩き出した。


――さあ、冒険だ。

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モグラくん ~穴掘りスキルで戦います!~ @Shun_Maxima

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