妊娠という危険性を徹底的に排除し、後遺症すら無いグローバル化の進んだ世界にて~AI作成~
メガ氷水
多様性なのに認められない
少子高齢化とグローバル化と多様性が進んでいる現在。
世界は日々少なっていく子どもに頭を抱えていた。
このままではいずれ未来を託す子どもがいなくなってしまう。
かといって、子どもを作るよう女性に呼びかけるのはどうなのか。
女性が子どもを作るのを義務付けることもできなくはない。
高校で必修科目、洗脳でも施してやれば産ませることはできるだろう。
しかしそれでは多様性の損害、ましてや子どもを作るだけ作って国が何もしないというのは自分勝手な行いだ。
女性への精神的負担はかなりのものとなるだろう。
女性による暴動が起きても仕方ないし、友好的な国が見放す可能性もあった。
そこで国は遊びで子どもを作る女性と、流産する女性に目を付けた。
ようは子どもを作りたくない女性はそのままで、何かの間違えで子どもが出来てしまった女性に声を掛けようと政策に踏み出したのだ。
時は現在、望まぬ妊娠をしてしまった女性が、望まない出産を出来るようになった時代。
女性の母体から、専用の機械に子どもを転移させ、そのまま人の手によって人工的に育むことを可能とした世界。
転移という性質上、帝王切開だのする必要が無い。
寝て起きたらいつの間にか手術が終わっている状態であり、何の後遺症も残らない。
こうして女性から妊娠という危険性を徹底的に排除したことで、誰もが気軽に子どもを作れるようになったのである。
問題は母の愛が無いという点と、母乳がないという点なのだが、そこは子どもを育てるのが好きな女性と、良く出てしまう女性や母乳に限りなく近い成分のおやつを作ることで何とかした。
避妊道具は徹底的に排除。子どもを国に渡した女性は逆に、それなりの金を貰って普段の暮らしに戻る。
世間では今日もどこかで、朝昼晩の営みが繰り広げられている。
流石に子を作るのは高校生になってからと決められてはいるが。
そんな世界で生まれた俺こと、山田士郎。
俺の通っている学校では、性に関する授業は基本実演で行っている。
妊娠したとしても学校生活になんの影響も出ないし、いずれ来るかもしれない本番に備えて練習になる。
初物好きって人の方が多いが、やはり快楽を優先してしまうのが人というもの。
今ではむしろ、初物好きの方が珍しい。
やりたくない人は見学しても良く、見学者を絶対に馬鹿にしてはいけないと校則で決まっている。
恋人とか、中身男性だとか、中には好きな相手に取っておきたいという桜もいる。
そういう人たちにもきちんと配慮されているのだ。
そんな誰もが自由気ままに、性欲を発散できる世界で、今日も保健体育の授業が始まった。
* * *
ところで、女性の本質は淫乱であるということをご存じだろうか。
よく聞く、男性よりも女性の方が興味深々という奴である。
しかし統計学を見てみれば、女性よりも男性の方が興味津々ということが分かっている。
ただのアンケートだとしても隠していたのか、はたまた妊娠のリスクを考えてとっかえひっかえで、男性とやりたくはないという気持ちの表れだろうか。
正直言ってどうでもいい。
ここで重要なのは、女の本質は淫乱であるという面である。
もし、もしもである。
妊娠のリスクや後遺症が無くなり、むしろ妊娠することで国から多額の報奨金を貰えて、苦痛も無く、そして再び男性との行為を楽しめるようになったのであれば。
あぁ、もしかしたら俺の目の前で広がっている光景と同じことになるのだろう。
同級生の女の子が、同じく同級生の男子となんの躊躇も無く交わっている。
中には目の前に男子がいるというのに、他の女子とえげつ容赦のない女子会が開かれていたり。
容赦なくとっかえひっかえされて心神喪失してしまう男子がいれば、むしろ興奮するという男子もいて。
これを地獄と取るか、天国と取るかはその筋の物書きにでも任せるとしよう。
クラスでアイドル的立ち位置の子も、委員長キャラの子も、天然ぶっている子も、小動物系の女の子も、一思いに楽しんでいる。
そんな中、おれはひとり息を吐いて見学していた。
ムードがねぇ……っと。
おれはロリコンで小さい胸好きである。
けど正直言ってそんなの抜きにして、誰とでも良いからやりたいという思いもある。
けれどこうなんか……、ムードがない!
今時女々しいと捉えられるかもだが、貞操観念自体は昔も今も変わらない。
あくまでも妊娠のリスクが無くなって、性の概念が緩くなっただけ。
服を着ずに外を出ようものなら公然猥褻だし、合意なしで襲えば普通に処罰される。
だからだろう。
おれは人前で裸を晒すのが恥ずかしいし、やるんだったら二人しかおらず、誰にも邪魔されない環境でやりたいのである。
だというのに、どいつもこいつもすぐに服を脱ぎだすから、情緒も初めも完全にない!
ムードやら場所やら時間やらを重視する男、山田士郎。
中学生ですら卒業率98%を誇る世界で、未だ童貞のトランスジェンダー説が囁かれている高校二年生。
それが俺である。
「あぁ、交わりてぇ」
「やればいいじゃねぇか」
教室の席でため息を漏らすおれに、同級生の後藤が机を叩きながらこともなげに言ってくる。
確かにそれはそうだ。実際問題やりたいとは思っているのだ。ただその自分の好きな状況にならないだけで。
「風俗なんか行ってみろ。大金払わなきゃいけないわ、年上は出てくるかもしれないわ、オプションでさらに金取られるわ。学生で授業ある内に卒業しないと損だろ」
「分かってる。分かってはいるんだよ。……けどさ! できるなら誰もいない空き教室とか、閉じられた空間でやりたいだろうがよ!」
「自分たちの世界に入ればいいじゃねぇかよ」
「……あれを見てもそう言えるか?」
おれの視線の先にいる女子四人組。
そこではクラスにいる男子との相性について、不満点をだらだらとクラス中に聞こえるほどの声で話し合っていた。
あんなの聞いていたらやる気起きなくなるっての。
しかも行為の最中にまで話しているので、お互いの世界に入ろうにも女子が勝手に第三の壁をぶち破りに来るのである。
嫌になる。
流石の後藤も若干口元を引きつらせながら言う。
「……けっ、けどお前妹いるじゃん? ビッチと名高い」
「一度や二度誘われたことはある。けどどこまで行っても妹なんだよ! いらずらする気起きねぇよ! 四六時中、年がら年中風呂上り裸でうろつく奴になんの感情も持てないわ! 慣れたわ!」
しかも誘われ方が「へぇ~、お兄ちゃん童貞なんだ? 貰ったげよっか? どうせ捧げる相手いないっしょ。今時恥ずかしいよ?」みたいな軽いノリだし。
できるかボケェ!
そんな我が妹は今月に入って、同学年全員の男子とやり終えたらしい。
とんでもない女である。
それと同時に、中学二年生の妹とやった=我が後続に続く援軍がひとりとしていないという事実に、ひしひしと打ちひしがれている。
近親は今でも重罪に値するので冗談で言っているのは分かるんだけどな。
……それでもちょっと泣きたい。
「まぁとにかく、俺は誰かと一緒にイチャイチャしながらやりたいんだ。けど周りにそれを分かってくれる人が……」
その時、ガタリと椅子を引く音がした。そちらを向くと、そこには同じクラスの女子。確か名前は。
田中里美。黒髪ロングで背が高くて胸もでかい、モデル体型で成績優秀で誰にでも優しい女の子である。……がしかし。こいつはとんでもない女で、男子との交際は一切なく、逆に付き合って欲しいと言った男子を完膚なきまでにフッていたりする、男嫌いとして有名である。
それゆえクラスの女子の輪にあまり馴染めていない様子だが、今日に限ってはどこかソワソワとしているような気がしないこともない。
ただ一つだけ言っておくことがあるとするならば。
彼女は、処女ではないということ。
* * *
「あぁもう最悪だよ!」
俺がそう言って頭を掻きむしっているのを見て後藤と周りの友人らは、またかと言いたげにこちらを見る。
「昨日の昼休みに、突然あいつに話しかけられたと思ったら『今夜、校舎の裏庭にきて。お願い。来て』だってさぁ。一体何事かと思いつつ行ったわけよ。そしたらいきなりビンタ食らうしさ。意味分かんねぇよ。訳聞いても答えようともしないし、理由も言わずに去ってったかと思うと今度はLINEのID教えて欲しいだとか言って」
「で、教えたのか」
俺の話に横槍を入れてくる後藤の言葉に対して、おれは首を横に振る。
「誰が教えるかっつの。だいたいあの時は、スマホの充電が切れかけてたんだよ」
するとそれを聞いた友人たちの一人、光がニヤつきながら言い出す。
「え、なになに山田君。彼女さんでもできたんですか?」
それに対して俺が反論する。
「そんなんじゃねぇよ。むしろ出来そうにないっていうのが実情で」
「じゃあ既成事実でも作ればいいじゃない」
そう言ってきたのは隣のクラスの女子、清水である。
こいつも胸は大きくスタイルも良い。
そして食べた数が自称三百本というアホである。
この学校、全校生徒五百人くらいなのに。
その言葉にすかさず光が突っ込む。
「それは犯罪よ! しかもそんなに簡単に出来るものじゃなくてね。まずはお話をしないと」
「あ、そうなの。なんか面倒くさいわねぇ、男の子って」
いや、あんたらの思考の方がもっと面倒臭いわ。
……ってあれ?そういえば田中どこに行ったんだ?
辺りを見渡すと少し離れた所で机に座り、何かを書いているようである。
「何してるのー。田中さん?」
光がその手を止めさせて、無理やり覗いてくる。
おい、プライバシーという言葉を知らないのかお前は。
しかし、田中の顔を見てみると、どこか悲しげな表情をしていた。
……なんだこの違和感は?おれの脳内に、なにかしらの警報が鳴る。
嫌な予感がするぞ。
「……みんなには言おうと思ってたことがあって。私、好きな人いるの」
まさか……な。
そんな偶然そう起こるわけが……ん?
今こいつなんて言ったんだ?
田中は、まるでおれたちに宣言するようにはっきりと口にした。
「私は……、士郎が好き!」
おれたち四人の時が止まるのが分かった。
「えっと……。マジで言ってるのかなぁ?ごめん聞き間違えちゃって。士郎君のことが好きだって言ったように聞こえたんけど」
最初に口を開いたのは光のようだった。
すると今度は田中がはっきりと言った。
「そう。私の想い人は、山田士郎。あなたよ」と。
はぁ?
いやなんで?
いや、待って。
え、嘘だろ?
なんで俺に惚れてんのお前。
しかもこんな大勢の前でバラすって。
正気か!?
いや冷静になって考えてみれば確かに納得いくところもあったわ。
でも今まで気づきもしなかった。
てことは、ずっと前からお前は、俺のことを。
……って、んなバカな話あるかよ。
いかん。
あまりにも現実離れしてて、思わず自分の世界に入り込んでしまった。
いやいやそんなはずはないだろ、いくら何でも。…………
「いや、ホントなんですか? 冗談じゃなくて?」
未だ状況が呑み込めてないらしい光が田中に対して質問をする。
それに対して田中はゆっくりと、力強くこう返した。
「冗談じゃない。私が告白するなら、みんなの前で言うと決めたから」
おいいいぃ!
なにやってんだぁ!
そんなもんわざわざ今カミングアウトすることないだろうがぁ!
心の中で絶叫した俺はきっと間違っていない。
だってこれバレた瞬間、明日登校したら間違いなく、男子どもがおれを殺しに来るだろうがぁ!
どうしてくれるんだよ。
「……あのさ。これはもしかしなくても、かなりマズイことになったんじゃないか?」
光と後藤が小声で会話しているようだが残念なことに丸聞こえだよチクショウ。
頼む、助けてくれませんかね?
……あ、無理っぽいですねハイ。
光が田中に聞く。
「ねぇ、どうして突然好きになったの?」
それに対し少し頬を赤らめながら、答える田中。
「初めて会った時に感じたの。この人だったら私を犬にしてくれるかもしれないって! 二人だけの空間で、誰もいないのを良いことに、あんな手やこんな手の卑劣な手法で私を辱めてくるかもしれないって!」
……おいこらちょっとまてコラァ!!
なんだそれは!
誰がするか!
俺がそんなゲスな真似をするもんでありますかこのアホンダラ!
だいたい俺にそういう趣味はないし、そもそも俺が求めているのって普通のカップルのような甘い関係だから!
何とんでもないことを言ってるんだコイツは!
もはや狂気の沙汰じゃない。
このままでは確実に俺の社会的地位が失われてしまうじゃないか!
いや待て、落ち着け。
俺はまだ何もやっていない。
そうだそのとおり。
ならば問題は無い。
さぁ続けろ田中。
……しかし彼女は俺の方を見て、
「見て! あの獣の欲望を全開にしたかのような目! 普段保険の授業を見学しているのも、食べるのに相応しいかどうか選り好みしているんだわ! その辺の棒で満足する女には目もくれず! たまんにゃい!」
田中の言動はもはや変態そのものにしか見えなくなっていた。
そして光は、「……へぇ、なるほどねぇ。……そっかそっか。……そうなのかそうなんだ。……田中さんはそういうプレイが良いんだ」とか呟きながら、まるで獲物を狙う肉食動物のような眼光をしている。
光、女友達みたいな気安さで付き合ってくれる彼女だけど、性質は例にもれず肉食獣である。
後藤はと言えば無表情ではあるが明らかにドン引きしているのが分かるし。
もうやだ帰りたい。……しかし、その願いが叶うことは無く、田中の話が続く。
「そして昨日の放課後に、ついに山田が私の方に向かってきて、こう言うのよ『お前の全てをぶち壊してやりたい!』と。それで私、思わず彼に駆け寄って、『お願い。乱暴はしないで』と懇願すると彼は、いきなり私に襲い掛かってきて、私の制服を脱がそうとする。そんな時、私は気づいたの。私はずっと傍にいたいって」
田中の暴走はとどまる所を知らなかった。
もはやこの場の全員の頭の中はカオスと化していたのである。その時、ふと我に返った田中が言った言葉は俺たちにとって衝撃的なもので、さらに事態の悪化を招いたのであった。
「ああ、ごめんね士郎!私なんかが士郎の事を好きだなんて、気持ち悪いよね。……分かった。士郎のことを忘れられるようにこれからしばらく家に引きこもって一人で泣くことにするわ。あっでも、それはそれで放置プレイされている気分で興奮する! 私のことを考えてくれるって考えたらもう、ウッウン! 絶頂しちゃうッ!」
田中は自らの体を抱きしめ、くの字で地面にしゃがみ込んだ。
しかし、彼女の表情からは何故か幸せオーラが放たれていたような気がしたのだが……、まぁ深く考えないようにしようか。
それよりもこの状況だ。
こうなった以上、俺は一度大きな深呼吸をした。
よし!言うしかねぇ。
俺の心の中の叫び声を全てぶちまけてやる!
俺は覚悟を決めて田中を見据えて、思い切りこう言ってやったのさ。
「俺はそんなにお前に興味はねぇよバーカ!!」
「やだ何それ! 新手の告白!? ツンデレ!? 想像妊娠しちゃいそうだから国に言って取ってもらわなきゃ! あっでも、育てるなら私の手で育てたいわ!」
さてはこいつ無敵か!?
などと考えていたら、今度は光がおれの腕に抱き着いてきた。
「私、人の狙っているものほど魅力的に感じちゃうタイプなんだよね! ねぇやろ! こさえよ!」
「俺の存在ガン無視ですか」
「ちゃんと見てるよ~? 士郎の士郎を!」
見てねぇじゃねぇーか!
かくしておれの思いも田中の暴走も露知らず、他の女子たちが身体目当てで近寄ってくる。
一見ハーレムみたいだけどなんてことのない、保健体育授業前の一幕でしかない。
女性の本質を拡大解釈したかのような世界。
田中のアレな性格は受け入れられるのに。
グローバル化とか多様性とか認められるのに。
なんで一部の多様性はまるで認められないんだろうな!
妊娠という危険性を徹底的に排除し、後遺症すら無いグローバル化の進んだ世界にて~AI作成~ メガ氷水 @megatextukaninn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます