最終話 マネージャー大ピンチ


「魔法パーーーーンチ!!」


 モモの拳が宇宙犯罪獣クイシンゾーに炸裂する。


 相変わらず物理打撃なので魔法の要素がよくわからないけど。


 その威力は凄まじく、瞬く間に犯罪獣を逮捕することができた。おそらくこの威力が魔法の力なのだと思う。


 口の中からクッキーが吐き出されると、食べられた人間は元に戻る。


「うわぁ! スターピンクだぁあ!!」

「ありがとうございますスターピンク!!」

「スターピンク!! 握手してぇ!!」


 群衆はスマホを構える。

 パシャパシャと写真の嵐。


「スターピンクって真寺野 桃ちゃんに似てるよな」

「スターピンクって桃ちゃんなんですか?」

「姉妹とか!?」


「あはは。みんなごめんねーー! 悪者がいなくなったら帰るねーー! んじゃーー!」


 これは人気モデル真寺野 桃の魅力の一つでもあるんだよね。

 彼女はモデルかヒーローか? 週刊誌の記事は大人気。

 テレビやネットでは検証の特集が組まれたりしている。


 まぁ、素顔を晒してるからね。

 こうなるのは必然といえば必然だけどさ。


 でも、女の子って化粧の雰囲気で全然変わるんだよね。

 モデルの桃とスターピンクのモモは化粧の雰囲気が違うから似てるようで別人にも見える。

 だから、丁度良い具合に彼女の人気に拍車をかけているだけだった。


 まぁ、なんだかんだで順調だった。

 この事件が起きるまではね。


「ジャーーン! 新発売のスターピンクラーメン!!」


 彼女のキャラが採用されたカップ麺が発売されたのである。


 ある日。私がお風呂から上がってくると、


「これ美味しいんだよね。ズルズルーー」


 と、彼女はポンニャンの体内で食事をしていた。

 テーブルには空の容器が2つ乗っている。


「ちょ! 桃! 何杯目!?」


「あ、3杯目だ。ゲフ」


「食べ過ぎーーーー!!」


 スターパワーは!?


「10秒ーーーー!? もうバカーー! 戦えないじゃないのーー!! チョコレート食べなさい!」


「あはは。もう入んない」


「こらーー!!」


「あはは。まぁ時間が経てばお腹が減るしね」


 ああ、何事もなく夜が過ぎればいいけど……。


「大変だポン! 宇宙犯罪獣が出たポン!!」


 ほらぁ。

 

 私たちは現地に急行した。


「宇宙犯罪獣タイガーンだポン!」


 それは虎のような化け物だった。


『ギャハハハ! 人間どもを食ってやるぅガオオオ!!』


 変身できる時間を有効に使うしかない。


「いい桃? 10秒で倒すのよ。できる?」


「うん。やってみるよ」


 10秒以内で魔法パンチを決める。これしか方法はない。


 彼女は魔法少女に変身した。

 高い場所からポーズを決める。


「魔法少女スターピンク参上! 悪い子ちゃんは逮捕しちゃうわよ!!」


 なんで名乗るのよーーーー!!


 彼女は淡い光に包まれた。


 まずい。変身が解ける。正体がバレちゃう。


「ポンニャン食べて!」


「わかったポン!」


 変身が解ける瞬間にポンニャンの体内に回収。

 その瞬間、変身は解けた。


「ご、ごめん。穂沙ちゃん」


「うう」


 彼女を責めても問題は解決しない。

 まずは打開策を考えないと。


『なんだぁ? 宇宙パトロールかぁ? 食ってやるぜ』


「逃げるポン!!」


 しかし、タイガーンは追って来た。


『おら! ちょこまかと逃げやがって捕まれっての!!』


「ひぃいいい! ポーーーーン!!」


 うう、捕まるのは時間の問題か。


「とにかくチョコ食べて!」


「ダ、ダメだよ。スターパワーは美味しくスイーツを食べないと回復しないんだから」


 うう、そうだった。

 無理やり食べさせてもダメなんだ。


 ポンニャンがタイガーンに捕まれば終わる。

 どこかに戦える魔法少女が必要なんだ。


 私の目に入ったのは以前に渡されたスタータクトだった。

 

 こ、これを使えば私が……。


「き、き、君がスターブラックになるしかないポンよぉおおお!!」

 

 で、でも私なんかが?


「私、超運動音痴なんだよ?」


「ま、魔法少女になれば魔法の力で全部解決だポン!! スーパーヒーローになれるんだポン!!」


 で、でもぉ……。


「ひぃいい!! もう限界だポン!!」


 ポンニャンが捕まった!


『グヘヘ! このモフモフがぁ。食ってやる。アガ〜〜』


「穂沙ーーーー!! 助けてポーーーーン!!」


 短時間で決めるしかない。



「スターブラック。 変身お着替えデコチュール!!」



 私は魔法少女に変身した。

 それは黒と白が基調なったフリフリの可愛いミニスカ姿。

 眼鏡がなくてもよく見えるのは身体能力が向上しているからだろう。


 この格好……。結構可愛くて好きかも……。


 ああ、そんなこと思ってる場合じゃない!


 目立たないように、10秒で決めてやる。


 ポンニャンの口から出るなり拳を突き出した。


「魔法パーーーーーーーンチ!!」


 それはタイガーンに炸裂。

 20メートル吹っ飛んで気を失った。


「よし。成功! 逮捕よ!!」


 マジカルロープで拘束して。

 宇宙銀河刑務所へ、


「強制送還!!」


ドシューーーーーーーン!!


キラーーーーン!!


 よし終わったぁあああああ!!

 私は逃げるようにその場を去った。


 次の日。

 新聞。テレビ。ネットのニュースでは新しい魔法少女の話で持ちきりだった。

 ほんの数分の出来事だったのだけど、周囲の目撃者によって撮影された写真と動画が拡散されたのだ。

 そうなると学校は、


「おい見たかよ。新しい魔法少女。めちゃくちゃ可愛いよなぁ」

「黒い魔法少女ってかなりの美少女よね」

「うん。めちゃくちゃ可愛い」

「強くて可愛くて最高よね」


 あああああああ!!

 なんか目立ってるぅううう……。


 奏也は少し照れくさそうにこう言った。


「な、なぁ。穂沙。今朝のニュース見たか?」


「え? ま、まぁね……」


「新しい魔法少女……。け、結構可愛いよな」


「はぁあ? ちょ、何言ってんの?」


「俺……。こんな気持ち初めてかも」


 何言ってんだよぉ!


「好きになったかもしれない」


 ああ、とんでもないことになってしまったな。

 魔法少女のマネージャーは楽じゃないわ。


「顔が特にさ」


「黙って! もうそれ以上喋るな」



おしまい。




────────


ご愛読、ありがとうございました。


今作は、

カドカワ読書タイム短編児童小説コンテスト用に書いた小説となります。


よって、これから、という感じで終わらせました。

受賞すれば続きを書くことになります。


コメント感想、貰えたら嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私、魔法少女のマネージャー〜世界を救う正義のお仕事。影ながらお手伝いをさせてもらいます〜 神伊 咲児 @hukudahappy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ