第3話 マネージャーのお仕事
宇宙人モモとその支援型ロボット、ポンニャンは私の家に住むことになった。
家族の理解は宇宙銀河パトロールの特殊アイテムを使う。
記憶改竄きおくかいざんライト。そのライトの光を私の両親に浴びせることで記憶を書き換えたのだ。
「あら、桃ちゃん。しばらく会わないうちに大きくなって」
と、母さんはモモのことを親戚の娘だと思っている。ポンニャンは喋るぬいぐるみとうことらしい。
こうして、モモは真寺野 桃、と名前を変えて地球人となった。
彼女はその容姿をいかしてモデルとして働くことになった。
持ち前の明るい性格と抜群のプロポーションは、男の子のみならず同性からも絶大な人気を得ることになる。
最近は歌手デビューの依頼まで入って来ているようだ。まぁ、彼女の才覚ならば当然だろう。
そんな彼女だが、私のマネジメントは必須なので、同じ中学校に通うことになった。
また、きっかけは食事のマネジメントだけだったのだけど、モデルのマネジメントも兼業することになってしまった。
まぁ、学業の片手間にできることだから問題はないんだけどね。
「授業終了! 穂沙ちゃーーん! 一緒に帰ろう!!」
私の学生生活は一変した。
目立たない、地味な中学生女子だったのに……。
「おいおい。真寺野が桃ちゃんと帰ってるぞ?」
「真寺野さんって人気モデルと友達なの?」
「いいなぁーー」
「羨ましい……」
小学生の頃の私だったら、さぞや鼻を高くしただろう。
人気のある人物と、友達である優越感。
そんなものに浸って人生を満喫していたに違いない。
しかし、もうそんなまやかしの力に溺れることはない。
幼馴染の奏也の件で学んだ。もう他人に依存するのは辞めよう。
私は私なんだから。
「ねぇねぇ穂沙ちゃん。今日はどこでご飯食べるぅ? グラタン? お好み焼き? ラーメンも良いねぇ」
「んもう。まずは美味しいスイーツから食べなくちゃダメでしょ。今日はパフェのお店に行くから。そこでスイーツを食べてスターパワーを回復しましょうよ」
「えへへ。だねだねーー。パフェも楽しみーー」
魔法少女としての活躍は順調である。
週刊誌や新聞、ニュースに動画配信と、あらゆるメディアに取り上げられていた。いまや、スターピンクは地球の平和を守る正義のヒーローである。
昨日も、ワニみたいな宇宙犯罪獣を逮捕したところだ。
なので、スターパワーのマネジメントは気を張っておかなければならない。
彼女のエネルギー切れは犯罪獣の犯行を野放しにすることなのだから。
「まずはスターパワーの回復よ。いい?」
「はーーい。その後は美味しいご飯だよね?」
「入ったらいくらでも食べていいから」
「にへへぇ。楽しみぃ」
彼女は食いしん坊の癖に食が細い。
元々の性質らしい。彼女のグルメに付き合っている私の方が太りそうだ。
彼女のマネジメントと並行して、自分の体重の管理を厳重にするのはいうまでもないだろう。
「早く行こ行こ♡」
「はいはい」
と、桃は私の腕を抱く。
この姿は校内の注目を益々浴びることとなる。
勝手に写真を撮るのはやめて欲しいよ。
まぁ基本は無視をしてるけどね。
ただ、誤算はあった。
それは私が桃の帰りを待っている時のこと。
「穂沙……。なんか最近、忙しそうだな」
と、声を掛けて来たのは奏也だった。
あらあらぁ?
人気モデルの友達が羨ましいのかな?
「まぁ、親戚の相手をしないといけないからね」
「そっか……。まぁ、おまえに友達ができたんならそれでいいかもだけどさ」
ふふーーん。
強がり言っちゃってぇ。
「もしかして紹介して欲しいとか?」
「はぁ?」
私の元には日々、何通ものラブレターが届く。
そのどれもが、桃に渡して欲しい物なのだ。
勿論、丁重にお断りしているけどね。
でも、幼馴染の奏也なら考えなくもない。
「今日は桃と一緒にクレープを食べに行くんだけどさ。奏也も来る?」
「……なんだよ。その嬉しそうな顔は?」
「別に」
思えば、私は彼に頼ってばかりだった気がする。
私ができることといえば人気漫画を貸してあげることくらいだったろう。
1つ年上の彼は、スポーツ万能で、見た目もよくて勉強もできる。加えて、校内一の人気者だ。
私が付け入る隙がない。なんだか与えて貰ってばかりだった気がする。
今なら、その恩を返せるかもしれない。
そこに、不思議な優越感が湧いてくるのだ。
一見すると、桃の魅力に頼っているようにも見える。
でも、私は彼女のマネージャーだからな。
桃の交友関係を決めるのは私の仕事でもあるのだ。
つまり、私の特権。私の采配。私の力。
この人気モデルと一緒にスイーツを食べれるのは私の許可を得た者だけなのだよ。
ふふふ。
「奏也ならいいよ。ニヘヘ」
「……いや。遠慮しておく。おまえが元気ならそれでいいし」
「あ、そう。人気モデルと一緒にスイーツを食べれるチャンスだったよ?」
「興味ないよ」
「ふーーん」
まぁ、彼は女の子には不自由してないか。
隣町の中学校からも女の子が彼に会いに来るくらいだからな。
「まぁ、会いたくなったらいつでも言ってよ。サインだってあげれるよ」
「なんかマネージャーみたいだな」
「まぁね。私が管理しないと彼女やってけないもの」
「楽しそうだな」
「そう見える? 結構忙しいよ?」
「まぁ、おまえが楽しいならそれでいいよ。出かけるんならさ。気をつけろよな」
「え?」
「エイリアンが人を襲ってるだろ?」
「ああ」
宇宙犯罪獣ね。
「あんまり人気のない所とか行くなよな」
「心配してくれてるの?」
「そんなんじゃないけどな」
お兄ちゃん振るなぁ。
もう私は中学生なのにさ。
「何か困ったことがあれば言えよ」
それは私のセリフだって。
「じゃな」
そう言って去って行った。
だから、あなたの力になるのは私なんだってば。
そんな時である。
「穂沙、モモ。大変だポン! 街中に宇宙犯罪獣が出たんだポン!」
私たちはポンニャンの中に入って現場に向かった。
今のスターパワーは半分ちょっとか。
変身可能時間は2分。
できればマックスの3分にはしておきたいよね。
「んじゃこれ食べて」
カバンから取り出したのはチョコレート。
臨時用の回復スイーツ。携帯ができて便利なのよね。
本当は毎回これで回復してくれると楽なんだけどな。
彼女は食いしん坊なので色んな味を楽しみたいらしい。
「ありがとう穂沙ちゃん。モグモグ」
よし。これでスターパワーは満タンだ。
ポンニャンの中から飛び出す。
街中では宇宙犯罪獣が大暴れしていた。
それは象のような化け物だった。
『グハハ!! クッキーにして食ってやるぅううう!!』
長い鼻から光線を出す。
それを浴びた人間はクッキーになってしまった。
『いただきます! モグモグ』
ああ、食べられたーー!?
「宇宙犯罪獣クイシンゾーだポン。クッキー光線で人間をクッキーにして食べるんだポン」
「食べられた人は助かるの?」
「大丈夫だポン。逮捕できれば食べられた人間は助けることができるポン!」
だったら早く逮捕しなくちゃ。
「モモ!」
「うん!」
彼女はスタータクトを取り出した。
「スターピンク!
いっけぇ! やっちゃえモモ!!
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