第2話 魔法少女のマネージャー誕生
ポンニャンの体から女の子の声が聞こえて来た。
「お願い! 仲間になって欲しいのよ!」
え!?
「なんで女の子の声が?」
「僕の中にいるんだポン」
「はい?」
「会った方が早いよね」
そう言って、ポンニャンは私の体を飲み込んだ。
「うわぁああ! 食べられたぁああああ!!」
ポヨォオン!
食道を通るのかと思いきや、落下したのはフカフカのソファ。
「え? 何ここ、広ぉ……」
そこは綺麗な部屋だった。
「僕の体の中が魔法少女の司令室になっているんだポン」
すごい……。
そこにはピンク色の髪をした美少女がいた。
「私はモモ。宇宙銀河パトロール魔法少女部隊の隊長よ」
「へぇ……。随分と若いんだね」
私と同じくらいかな?
「13歳よ」
「私と同じだ」
「ふふふ。魔法少女は17歳までしかなれないからね。少女の特別なパワーが魔法を生むのよ」
理屈はよくわからないけど。
彼女は満面の笑みだった。
「あなたのお名前を教えてください!?」
「真寺野 穂沙」
「えーーと。日本人は名前が後だから、穂沙ちゃんでいいでしょうか!?」
「別に呼び方なんてなんでもいいけど……」
「んじゃ、穂沙ちゃんはスターブラックでお願いします!」
「いや、だから断るって」
「えええええ!? 私はスターピンクなんだよぉ? 2人で魔法少女しようよぉ。プリティで清楚な感じのヤツぅ」
「やらないよ。柄じゃないし」
「ええええ!? そんなに可愛いのに?」
あのねぇ……。
明らかに自分の方が可愛いのにさ。
「そういうお世辞は嫌いなんだよね」
「お世辞なんて言わないよぉ。穂沙ちゃんはめっちゃ可愛いよ!!」
「………」
まぁ、嘘がつけないタイプっぽいな。
「穂沙ちゃんがさ、スターブラックに
「いや。絶対にやらないから」
突然、ビービーと警告音が鳴り響く。
「穂沙ちゃん、モモちゃん、宇宙犯罪獣コワルバーが見つかったポン!」
えええええ!?
急展開!
「よし、穂沙ちゃん出動だ!」
「あ、いや。私やらないよ?」
「んじゃ見学でいいから」
まぁ、それならいいけど。
それに、ちょっとは興味があるんだよね。宇宙犯罪獣とかさ。
怖い物見たさってヤツね。
移動はポンニャンの体だった。
すさまじい速さで建物を飛び越える。
彼の体内には大きなモニターがあって、そこからポンニャンの視界が見えた。
うわぁ。VRゲームみたいだ……。
「着いたポン!」
そこはビルとビルの間にある小さな路地裏。
ポンニャンは外に設置された3階の階段の踊り場に着地した。
そこから見下ろすと、体長5メートルを超えるクマのような怪物がいた。
ひぃええええ。シンプルに怖い!
「宇宙犯罪獣コワルバーだポン!」
そいつは手に野良猫を持っていた。
『オヤツだオヤツ♪』
と、大きな口を開ける。
食べるつもり!?
「行こう!」
「え? 行くってどうやって!?」
モモはソファを蹴って天井に向かって飛び上がった。
なるほど。
ああやって外に出るのか。
んじゃ私も。
「えい」
ポヨォオン!
すると、私の体は飛び上がった。
ポンニャンの開いた口から私が飛び出す。
うぉ。出れた。
「待ちなさい! その猫ちゃんを離しなさい!!」
『なんだぁお前はぁ? 人間かぁ? ゲヘヘ。食ってやるから降りてこいよ』
「残念ながら、私はあなたの餌じゃないのよ!」
そう言って小さな棒を取り出した。
あれは、確か、スタータクトとかいうアイテムだ。
「スターピンク!
モモは発光する。
うわぁ! 眩しい!!
そこに現れたのはコスプレをしたモモの姿だった。
ミニスカートにニーハイソックス。ヒラヒラのレースに巨大なリボン。
可愛いけれど恥ずかしい。
もう、完全にコミケだよ!
「魔法少女スターピンク! 悪い子ちゃんは逮捕しちゃうぞ!! とうッ!!」
と、飛んだーー!!
「魔法キックーー!!」
え、物理攻撃?
モモの蹴りはコワルバーに炸裂。
どこに魔法の要素があるのだろうか?
私の疑問をよそに、コワルバーは10メートル以上吹っ飛んで気を失った。
「はい。逮捕ーー♪」
特殊なロープで身柄を拘束する。それは光っており未知のテクノロジーを感じさせた。
動けなくなったコワルバーは転送装置で宇宙の彼方へと飛ばされた。
キラン!
と、夜空の星になる。
早い……。
モモは普通の姿に戻った。
「ね。簡単でしょ?」
確かに。
あっという間だったな。
「……終わったんだね。これで悪者はいなくなった」
「そういうわけにはいかないポン!! 宇宙犯罪獣はまだまだいるんだポン!! 全て逮捕しないと僕たちは帰れないポンよ!」
そうなんだ。
「まぁ、大変だけどがんばってね」
いやぁ、良い物が見れたな。
まるでアニメの世界みたいだったよね。
グーーーーキュルルルルゥーーーー!!
「な、なんの音!?」
「わ、私のお腹の音ぉ〜〜。お腹空いて動けない〜〜」
と、モモはヘナヘナとしゃがみ込んでしまった。
仕方ないなぁ。地球を救ってくれたお礼をしようか。
「ズルズル。これカップラーメンっていうの? 美味しいね!」
私の家に帰って台所を漁って来た。
丁度、カップラーメンがあったので食べて貰っているところだ。
「ねぇ穂沙ちゃん。これ見て」
そう言って空中に表示させたのはメーターだった。
赤く点滅してゼロの表示になっている。
「何これ?」
「スターパワーを表すメーターなの。これがゼロだと魔法少女に
ゼロじゃないか。
「どうやったら回復するの?」
「えへへぇ……。もっと甘い物はないかな?」
仕方がないので冷蔵庫に入っていたプリンをあげる。
明日の私のオヤツだったんだけどな。
「これは美味しい! スターパワーが回復するよ!」
メーターは3分の1まで回復していた。
横の数字は1分となっている。
「この時間は何?」
「これで1分間だけ魔法少女になれるんだよね」
「へぇ。じゃあ、定期的に甘い物を取らないとダメってこと?」
「そうなんだよぉ」
「満タンで何分変身できるの?」
「3分だね」
「じゃあ、とりあえず満タンにさせた方がいっか。甘い物なら砂糖でもいいのかな?」
「あーー。お菓子じゃないとメーターは回復しないんだよ」
そうなのか。
「んじゃ、台所で探してくるね」
「あーー。もういいよ」
「なんで? また宇宙犯罪獣が出て来たら危ないんじゃないの?」
「もう食べれないんだ。カップラーメンでお腹、一杯になっちゃった。えへへ」
「はぁ?? じゃあスターパワーは貯めれないの?」
「うん。ナハハ」
「笑ってる場合じゃないでしょう!」
胃袋くらい自分で管理して欲しいよ。
「それでよく魔法少女が務まるよね?」
「えへへ。だって地球の食べ物って美味しいんだもん」
いやいや。危機感どうなってるのよ。
「モモは食いしん坊なんだポン。だから、スイーツ以外も食べちゃうんだポン」
「でもそれじゃあ、スイーツが食べれなくなってスターパワーが溜まらないよ?」
「そうなのよねぇ」
「ま、魔法少女になれなかったら宇宙犯罪獣の逮捕はどうなるの?」
「……で、できないかも。あはは」
いやいや。
さっきだってもうちょっとで猫ちゃんが食べられてたんだよ?
あんな凶暴な怪物が人間を襲ったら大変だよね。
「危機管理してよ」
「あはは、困っちゃったな。私って見た目は地球人そっくりなんだけどね。中身はポンニャーラ星人だから地球のことがよくわかんないんだよね」
「で、でもでも地球の危機だよ?」
「うん」
「宇宙銀河パトロールの仕事でしょ?」
「う、うん」
「仕事仕事ぉ!」
「あははは」
「笑ってる場合か!」
「でもさ穂沙ちゃん。マザーコンピューターで調査したんだけどね。地球って一杯、美味しい物があるんでしょ?」
「そ、そりゃああるけどぉ」
「スパゲティでしょ。たこやき。ビーフステーキ。唐揚げ。ハンバーガー。ピザにグラタン。グフフフゥ……」
「ちょっちょっとぉ! まずはスターパワーを貯めることを考えなきゃあ!!」
「う、うん。でも食べたいよねぇ」
ダメだこりゃ。
「ポンニャン! モモを管理してあげてよ!!」
「それはできないポン。僕は魔法少女の支援型ロボットだポン。
ええええ〜〜。
「もう穂沙に頼むしかないポン。お願いするポン! モモの食事の管理をして欲しいポン!!」
「ええええええええええええ!?」
モモも頭を下げた。
「私からもお願いします! 地球のことはまだまだよくわからないし。穂沙ちゃんがいたら助かるんだよねぇ。魔法少女にならなくていいからさ。私の側にいて助けてくれないかな?」
いやいやいやいや。
ハッキリ言って断りたかった。
でも、彼女が働けないと宇宙犯罪獣が人を襲うわけで。
……うう、不本意だけど、やらざるを得ない。
彼女の食事の管理。
魔法少女になるためのスイーツマネジメント。
こうして、私は魔法少女のマネージャーになった。
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