目利きと仕入れ

花里 悠太

天然?

「いいのが入ってるよ」


 仕入れ先の店に入るなり、店主が声をかけてきた。

俺はこの店の常連。

親父の代から使わせてもらってる付き合いだ。

店主は早速とばかりに勧めてくる。


「良いやつ仕入れたんだよ。見てみろ」

「ふーん、確かに見た目は良いね」


 言いながら商品を見定める。

かなり育っているが、ハリがあって見た目はとても良い。

良い商品に見える。


 しかし、店主も百戦錬磨の商売人だ。

ぼーっとしてるとあっという間にぼったくられてしまう。


 確認しようと商品に手を伸ばすと、店主が忠告する。


「おっと、触ったなら買ってもらうぜ?」

「触らなきゃ買えるかわからないだろ」

「こっちだって商売だ。そこは譲れないね」

「あー、わかったわかった。じゃあじっくり見させてもらうよ」

「どうぞ、ごゆっくり」


 触ることもできないのか。

それじゃあわからないじゃないか。

しかし、この業界でずっとやってきたこの俺だ。

そこは目利きでなんとか見破ってみせると気合を入れる。


「見た目すごく良いけど、これ天然かい?」

「養殖じゃねえよ。捕まえてきたんだから」

「こんなのがそこら辺にいたら目立つだろうに」

「運が良かったんだな。買うなら今だぞ」


 立板に水とばかりに店主は応える。

養殖じゃないのは嘘じゃなさそうだ。

養殖者ようしょくものは早い段階で出荷されてしまうのでここまで成長しない。

しかし、天然の上者じょうものにしては安すぎる。


「おい、これ加工してるだろ」

「おっと、言いがかりか」

「言いがかりなもんかよ。この値段で天然者てんねんもののこんな上者じょうものが出てるわけないよな。それに一部整形痕が残ってるぞ」

「あー、見抜かれたか。お前さんも目利きが効くようになったなあ」


 やっぱりな。

小さい頃から施設で育てた養殖者ようしょくものならまだしも、こんな上玉がそこら辺にいるわけない。

猿ぐつわをかまされて震えている女性を引き続き見下ろして続ける。


「豊胸はしてるよな、後鼻。他は?」

「後二、三カ所は闇医者にイジらせたが。繁華街でたむろってたのを拉致ってきた天然者てんねんものだから嘘じゃねえだろ」

「拉致って勝手に整形して、天然者てんねんものを謳うのは黒よりのグレーだけどな。まあ、買うから値引きしてくれよ」

「へいよ、まいったまいった」


 しっかり値切ることに成功して、他にも二、三人購入。

買い取った商品達を連れて娼館へと戻った。



店に戻るとメニューに追加。

キャッチコピーを入れておく。


「新入店。天然な子。あなたのために可愛くして待ってます」

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目利きと仕入れ 花里 悠太 @hanasato-yuta

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