疫病神ハ彷徨ス 蛇足
神無月 後日 三〇一号室前
――あら、こんにちは、太一さん。奇遇ですね。こんなところでお会いするなんて。
――どうしたんですか?青い顔をして。具合でも悪いんですか?
ああ、ダメじゃないですか。そんなところに花なんて供えちゃ……
せっかく明美さんがいなくなったのに、また変な噂が立ちますよ。
――え?どうして知っているかって?
そんなことはどうでも良いんです。
約束、破りましたね。
部屋に入ったでしょう?
――惚けても無駄ですよ。全部知っていますから。
私のことも言ってしまいましたよね。
――名前を出したとか出してないとか、そんなことは関係ないんです。
私は、一切口にするなと釘を刺しました。
――ダメですよ。約束は約束ですから。
――なんでもペラペラ喋る悪い口には、栓をしないといけません。
大丈夫ですよ。太一さんは細いから、ちゃんと入ります。
………………
――あ、そういえば知ってますか?貴方が公園で話していた人……
彼、とんでもない疫病神なんですよ。
彼と関わると、災いに巻き込まれるんです。
普通なら考えられないような、酷い災いに……
だから……
――もし彼がこのことを知ったら、また自分のせいだと思うかもしれないですね。
面白いんですよ。いかにも悲劇のヒーローって感じで
でも私は、そんな彼のことが……
――あれ?もう痙攣が始まっちゃったか。
よかった。もう少し汚くなるかと思ったけど、案外地味だったな。
――はあ……勿体ないなあ。まあ、いっか。
種はいっぱい蒔いてるし……
あとは、どうやって取り戻すかだな。
鍵野君を……
一軒目 疫病神ハ彷徨ス 了
じばくばなし 澤ノブワレ @nobuware
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