荒涼

機杜賢治

荒涼

瞳閉じ星の隙間に溶けだして泳いだ宇宙そらからすが一羽


睦言むつごと枕詞まくらことば言霊ことだまが宿るか試し産霊むすひの闇夜


鉛筆が紙にこすれて静寂に音を残して想い残して


踏み鳴らす真冬のよるの雪のをただ聞きたくて僕はさ迷う


落ちてくる雪のひらひら黒髪に触れてとどまり白梅はくばいの花


灰色に閉ざされた空まじり合う白い吐息が唇濡らし


感情のままにつぶやく言の葉は寄る得られずさ迷うかずら


月光の竹林揺らす渡り風去りて残したさざ波の音


酒喰らひ散ってしまへと浴びるほど胸咲く花はあゝ咲き乱れ


通り雨千のしずくが落ちてきて欠けた心は万感ばんかんに消え


雷鳴に夕立ち気配感じれば窓閉め庭の鳴き虫あばよ


黄昏にカーテンのないがらんどう灯りよ何処よ遠くの人よ


ぶっ壊せわめく獣が腹にいてまあ落ち着けとぼく頭撫で


どのつらが気取るか見ろよ毎朝に鏡のお前ただの人なり


黄昏に陰るやしろ木枯こがらしを聞いては拾う万葉のうた


秋濡れてせた緑は我が定め老いて染まるは冬のま白に


老いようと僕の世界は変わらない写真の君もずっと鮮やか


月灯り虫の奏でる石琴せっきんの調べ優しく包む静けさ


夜の風酔い連れ去りて僕一人 たたず宇宙そらは星が散り散り


雪の降る花も実もなき痩せた木に餌を求めて鴉留まるゝ

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荒涼 機杜賢治 @hatamorikenji

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