まさしく『男の小説』。味覚にたとえるなら、苦みと渋みがちょうどいいバランスで混じり合った世界です。カクヨムには闘いを通し成長していく少年や青年を描いたお話がたくさんありますが、この物語の主人公・上泉は、すでに自分の人生を諦観した大人の男。そんな彼が目の前に立ちふさがる敵に、彼なりの流儀で対処していく。
とにかく上泉氏がいちいちカッコいいんですよ!(いきなりミーハーですみません)所作も言動も、本当にいちいちカッコいい! そばにいたら、たぶん声はかけたくない。ちょっと離れた場所から見つめていたい系イケメンです。ほかの登場人物も、若くなくたって悪者だってカッコいい。皆が皆、心のなかに確固とした自分というものを持っているからじゃないかと思います。
孤独を背負った上泉の、時として読者さえも拒む距離感が、私にはむしろ心地良いです。だから、人ならぬものが出てきたり、騎士あり日本刀あり異能ありと物語世界はファンタジーでも、その魅力プラス人間ドラマの重みが感じられるのかもしれません。
ちなみにこれを書いている時点で、第八章。お話は先行きがまったく読めず、それゆえ私は常にわくわく追いかけている状態です。
しかし、上泉氏には『端正』という言葉がぴったりなんだけど、作者さんの書かれる文章も『端正』。