空に浮く
むーが
天気
青と白の美しい対比が見え、暖かな日が差し込む。
見下ろした先には木々が生い茂っている。
周りは草原のようだ。そよ風が吹き抜けて爽やかなにおいがした。草が風に揺られてカサカサと音を立てる。
山の美味しい空気を目一杯に吸い込んだ。
これから僕は空を飛ぶ。
空から見る景色を想像するだけで期待で胸が膨らむ。
一応さっき確認したばかりだが装備がしっかりしているか見直す。
よし、大丈夫だな。
手をグッと握り風が来るのを待つ。しばらくすると丁度良い向かい風が吹いてきたのを感じる。
今だ!
体に力を入れて走り出す。
翼の部分に空気が入ってきたのか、ふわりと体が軽くなり体が浮いた。
雄大な光景に目を奪われる。
見とれている内に曇天になり、今にも雨が降り出しそうだ。
おかしい。天気予報は曇りにしかならないはずなのに。
悪い事は続くようで風が強くなってきた。
このままだと制御出来なくなる!
できるだけ急いで地上に降りようとする。だが風に煽られて着地点からズレていく。
なんとかしようと手を尽くすが、ただ風に流されるだけに、とどまる。
これ以上はどうしようもない。諦めて風に身を任せる事にした。
風がある方向へと流れていく。
一体どこに向かっているんだ、これ?
ドンドン高度が増していったと思いきや、ついには竜巻に吸い込まれるように引き寄せられていく。
このままだと危ない! 僕はまだ、ここで死ぬ訳にはいかないんだ!
必死で操縦して竜巻の所から離れようとする。だが風の暴力には勝てなかった。
竜巻に飲み込まれた。
真っ先に風圧に負けた翼が使い物にならなくなる。
風に揉みくちゃにされて平衡感覚がなくなり、どこが上なのかすら分からなくなる。
石でも当たったのか、追い討ちをかけるかのように頭に痛みが走る。
ハッと上体を起こす。
どうやら、いつの間にか気を失っていたようだ。
ここはどこだ? 風に飛ばされたから位置がわからない。
手がかりを得ようと装備を確認するが装備丸ごと無くなっていた。
一体どうなってやがる! 値段、高かったんだぞ!
怒りを抑えきれず足を殴る。
足のジンジンとした痛みで少し落ち着いた。それに釣られるように頭が痛いのを思い出す。
痛いのを無視して起き上がる。
辺りを見渡すと離れた所には半球状の物があるが一体何だろうか。白に一部が透明になって中が見えている。
あまり見かけない形状だが、もしかして家か?
人がいるなら場所が分かるかもしれない。
とりあえず聞きに行くしかないか。
上手く歩けず、ふらふらして転びそうになりながらも、なんとか家の入り口らしきものにたどり着いた。
ドアにノックをすると中から人が出てきた。
僕を見るなり胸ぐらを捕まれる。
「なんでお前がここにいるんだ! さっさと出ていけ!」
頬を殴られて呆然とする。
人は中に入ったようで、もういなかった。
よく分からないが、ここの住民に嫌われているようだ。
前途多難な予感に目眩がしそうだ。
これからどうしようか……。
空に浮く むーが @mu-ga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます