第17話 当日

いつもと変りない朝に俺は目覚める


机に広げられたノートや教科書、問題集などが開いたまま置かれている


期末テスト前日には勉強を北条さんに手伝ってもらった

そのおかげかスラスラと問題を解けていたし、もしかしてこれも女神の影響なのだろうか


そう考えながら支度を済ませ、リムジンに向かう

傍には北条さんもおり、テスト対策は万全と言えるだろう






「はい、それじゃあ今から――はじめ!」


一斉に全員が用紙をめくり、カリカリとペンの音が走り始める


解ける!!解けるぞ!

最初に一番苦手な英語が来たが、一度も悩むことなくスラスラと答えがわかった

ここまで行くと逆に怖いが気にしないでおこう

その調子で残りの3教科も無事解くことができた


「あれ、もしかして俺って天才だったのか…?」


あまりのできの良さに自分でも恐ろしい

北条さんがすぐに俺の元まで来て心配してくれた


「ご主人様、今日のテストは大丈夫でしたか?」


俺は意気揚々と返事を返す


「ああ!自分でも怖いくらいに問題が解けた!」


その返事にほっとしたのか「よかったぁ~(´;ω;`)」と言いながら北条さんが抱き着いてきた


「なっ!!お前まさか北条とデキてたのか!!??」


黒野が目を丸くしながらそう言う

勘違いが起きそうなところを寸で止める


「いや違うわい!これは挨拶みたいなもんだよ」


北条さんにハグしてもらえるのは嬉しいが俺にはミラさんという許嫁がいる

安易にそうした行為をするのは周囲にいらぬ誤解を生んでしまう

ゆっくりと北条さんを離し、元の席に一度座る

机にかけてあるバッグを取り、ペンや筆箱をしまう


「なぁこの後暇か?昼時間あるんだし遊びに行こうぜ!」


暢気に黒野がそいうが、明日も一応テストはある

しかし確かに遊びたいという気持ちもある

ちらっと北条さんを見ると”だめですよ”という顔でこちらを見返してくる



「う…黒野済まない。お許しが出なさそうだ。またテスト明けに暴れるくらい遊ぼうぜ」


「ま、それならしゃーねえな。また明日な!」


そう言って一斉に生徒たちが帰宅し始める

俺も北条さんと共に帰路に着こうとした

廊下を出てすぐに見覚えのある女性が立っていた

ミラさんだ

その横にエリカさんもいた


「久しぶり、ミラさん」


こうして話すのは本当に久しぶりだ

ミラさんは日本語をここまでうまく話せるのだからほかの強化も余裕なのだろうか

ドイツ語を喋れない自分が情けない


「私の許嫁としてしっかり解けたか?」


「うえ!?」


あのミラさんが自分から許嫁と言うなんて焦ったが、それは俺を試しているかのような言い方だった

なるほど、まだまだ許嫁とは認めていないということか

あまり最近は話せなかったから少しの会話でもなんだか嬉しい


ちょっとずつだけど彼女に見合う男になれてるかな?


笑顔でそれぞれのリムジンに乗った俺たちは別々の方向に帰る


また明日も面倒なテストだ















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チート能力を手にした俺が異世界で新たな人生を歩もうとしたら、なぜか現実世界に残されたままだった 山田 @soviet

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