含み益はただの幻

 新規にポジションを取ると,その瞬間からそのポジションの損益が時々刻々と変化する。ある時はものすごい含み益になることもあれば,その逆でものすごい含み損になることもある。

 そのような含み損益はその損益をポジションを決済することによって確定させなければ,ただの幻であるということを忘れがちである。

 もちろん,含み損の方は信用取引をしていれば,その含み損によって証拠金が毀損されてしまうので,確定させるまではただの幻とは言ってられない。証拠金が毀損されてしまうと,場合によっては追証となり,そのポジションを維持できなくなるからである。

 従って,含み損は

「幻さ!」

なんて,言ってる場合ではない。

 一方,含み益の方は含み損のような状況にはならないので,安心してみていられるのであるが,問題はどこでその含み益を確定させるかである。

 誰しも含み益が最大になったときにその利益を確定したいと考えるのであるが,それは永遠に無理である。なぜなら,それは後になってみれば,分かることであり,その現場にいる限りその時が含み益が最大であるなどとは知る手段がないからである。

 そのため,含み益をさらに伸ばそうと思って利益を確定させないでいると,ある時,いきなりその含み益が一気に減ってしまうこともある。

 そうなってしまうと,ものすごく損した気分にさせられて,どうしてあの時利益確定をしておかなかったのかと悔やむ。

 しかし,たとえ大きく含み益が減ったとはいえ,ポジションを建てたときから考えると,まだまだ含み益状態なので,損したわけではない。それにもかかわらず,ものすごく損した気分になるのである。

 そして,含み益を大きく減らしてポジションを決済して利益確定をすると,ものすごく損したと思ったりする。何1つ損してないにもかかわらず。

 そもそも,含み益はただの幻に過ぎず,確定させてこそ,それが現実のものとなるのである。

 なので,いくら含み益があったとは言え,確定させなかったら,それはなかったのと同じこと。それをあたかもあったかのように悔しがるのはおかしな話なのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

相場に集う愉快なトレーダーたち いよみきゃん @iyomikyan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ