第2話 友達
体力がないけど、なんとか逃げようと足を踏み出した、はずだった。
足がつっかえて転んでうつ伏せになってしまう。
ぶつけた所がジンジンと痛んだ。
いつもなら、そんな事にならないのに。
もう、これじゃ助からないよね。私も、あんな変態になっちゃうのかな。
にじみ出てた涙がポロポロ落ちていく。恐怖で体が震えるのを抑えてジッと動かないようにする。
ただ、その時を待った。
足音が真横まで来る。心臓が早鐘を打つ。耐えきれなくて唇を噛んだ。
だけど何もなかったかのように足音は遠ざかっていく。そのうち耳を澄ませても足音は聞こえなくなった。
一体、何が起きたの?
顔を、そっと上げて周りを確認する。でも、いくら見ても何もいない。
更に体を起こして軽く服に着いたものを払う。そして辺りを見渡す。やっぱり誰もいない。
どういう事なの? もしかして私が見えなくなった?
でも私、うつ伏せで動かなかっただけだよ。それが良かったのかな。うーん、……考えても分かんない。
とにかく、この状況を伝えないといけないよね。
でもどこに連絡した方が良いのかな? それに話したとしても信じてもらえるか微妙じゃない?
まあ、いいや。とりあえず友達に連絡してみよう。確か休みだったはずだし。
ポケットからスマホを取り出して番号を押す。しばらくすると電話が繋がった。
「はいはい。あんたから電話してくるなんて珍しい事もあるのね。それで、どうしたの?」
「走り方が独特な変態たちに襲われそうになった」
突如、静寂に包まれる。確かに私が変なことを言っているから、そういう反応も予想していたけど。
「えっ?」
「だから! 走り方が、独特な、変態たちに、襲われそうになった!」
「いや、聞こえてない訳じゃないのよ。理解することを拒否したくなったというか、考えたくなくなったというか……」
「一応、聞くけど冗談という事はないわよね?」
「緊急事態にそんな事を言うほど余裕ないよ」
電話越しに、ため息が聞こえてきた。
「そうよね。知ってたわ。よほどの事がない限り、あんたが言う訳ないって」
それに足音が聞こえてきたような? 気のせいかな。いや、変態たちの姿が見えた。気のせいじゃない!
「ともかく、その変態たちが、いつ来るか「あっ! 変態たちが来た! 電話、切る」分から、ってえ?」
問答無用で電話を切る。話を最後まで聞かなくてごめんねって後で言えたら良いな。
さっきした事をもう一度やるのは怖い。
だから、とにかく走る。逃げ切ってやるんだ!
酔っぱらいたちの襲撃 むーが @mu-ga
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