沖縄での生活
家の中が見えないように積上げたブロック、石垣を回り込んで敷地内に入ると、赤い屋根瓦の木造一階建ての一軒家だ。
建物は横に長く、おそらく奥行きもあるだろう。
だが、目の前の角度からはどれだけの奥行があるのかは確認できそうにない。
「あ、あの~…私、みことって呼ばれていますが、名前…『あや』って言います。事故で死んで、目が覚めたらあの場所にいました。」
しばらく続いた沈黙を先に破ったのは彩だった。
その彩の言葉に女の子と高齢女性は顔を見合わせた。
「え~っと…あや…さん?……えっと…はじめまして…。私、みことと同い年で
「
「待って、おばぁ…。方言いっぱいしゃべられると、わからんくなるから標準語でお願い。」
「
「よろしくお願いします…。えっと…ここ…って沖縄…ですか?
?教科書で見た事のある家の形なので…。」
「そう、ここはうちなぁ。沖縄
彩は優那と名乗る少女とサヨと名乗る高齢女性から
みことは10歳になる年、従姉妹や友達と島で行われる年に一度の大きい祭りに参加している時に行方不明になったそうだ。
国吉家の親戚や国吉家に関係のある人たち皆が総出で島中を探したが見つからず、神隠しにあったのではないかと判断したという。
だが、6年経った現在でも諦めず時間を作り探していたのだそうだ。
それから、みことの両親は幼い頃に事故で他界しており、この赤瓦の家にサヨと名乗る高齢女性と一緒に暮らしていたのだそうだ。
彩は自分に何が起こっているか現状を把握しようといっぱいいっぱいの中、さらに信じられない事を耳にした。
みことは幼い頃から人には見えないものが見える不思議な力を持っていると言うのだ。
「……そういえば、さっきからこの大きな窓の向こう…カーテンの隙間から家の中を覗いては通り過ぎていく人が何人も見えるんですけど…これって…誰か親戚とか知り合いじゃなくて?」
「それはおそらく
「……マジ?」
「大マジ。サヨおばぁ、ユタをしてるし、国吉家はそういう家系なの。それに引き寄せられて来てるみたいな。まぁ、おばぁがいる限り家の中は安全だと思う。……たぶん。」
「たぶん…って?というか…ユタ…って?」
「あー……たまに強いやつとか入ってくるの。ユタは簡単に言えば霊能者…かな。」
「霊能者……。というか…お化けに強いとかあるの…ですか?」
彩の言葉に頷く二人。
それと敬語はいらないと伝え、今度は彩の話を聞かせて欲しいと耳を傾けてくれた。
「そんな事があるんだねぇ。だけど…聞いたところ、その事故死から数日は経ってるさぁ…。申し訳ないけど…」
サヨは言いにくそうに言葉を濁した。
「…ですよね。私…みことさんではないですけど…。
帰る場所もないですし…。
事故から数日後ならもう火葬とか終わってどうにもならないので…このまま…生活します。
信じられない事ばかりですが…受け入れるしか…ない気がして…。
いや、簡単には受け入れられないですが…。」
彩は余裕がない頭をどうにか動かし、俯きながら一つ一つ言葉を紡いだ。
「あやさん、私、家がすぐそこだから出来る限りサポートするね。学校とか…はまた考えよう。」
「優那さん…ありがとうござ…あ…ありがとう…。それと…名前…みことでいいです…。
私の記憶では『彩』は一度死んでるので…。皆さんには申し訳ないですが…。」
彩の言葉に再び顔を見合わせる二人。
「…わかった…。気を遣わせてしまってごめんね。」
「
「…おばぁ…言葉の頭の方、方言出てる。」
「
サヨおばぁと優那の二人は可笑しさが込み上げ笑いあい、彩はそんな二人のやり取りを見ながら少しだけ張りつめていた気持ちが和らいだ。
「(これから『みこと』として沖縄での生活が…。)」
彩はグッと拳を握りこれからの生活を不安に思いつつも、目の前の二人を見ていたら案外大丈夫なのではと、どこか安心も覚え始めていた。
オカルトを信じていなかったのに死んで目が覚めたら沖縄のユタ家系に転移しました 桜庵 @haruka0709
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