オカルトを信じていなかったのに死んで目が覚めたら沖縄のユタ家系に転移しました

桜庵

はじまり

西成 彩にしなり あや 共学の高校に通う女子高生。

高校に入学してひと月が経ちクラス内ではいくつかのグループが出来上がっている。


朝のホームルーム前。

高校に入学して間もないというのに隣のクラスにかっこいい男子がいるだとか、クラスの中に気になる男子が出来たとか、クラスの中にいい雰囲気の男女がいるだとかそんな浮かれた話が度々聞こえる。


「(皆、そういう恋バナとか好きだなぁ…。まぁ、私は興味ないけど。)」

彩が興味ない素振りでグループの中で話を聞いてると、一人の女子が放課後の話を持ち出した。


「ねぇねぇ、今日の放課後ヒマ?私、隣のクラスのイケメン君とお近づきになりたいんだよね。そのためにこっくりさんをしたいなって思うの。皆にも協力して欲しいの。お願い。」

そう突拍子もない事を言われ彩が反応する。


「こっくりさんとかありえないでしょ。あんなん嘘に決まってるじゃん。皆で指を十円玉においてるから各々の力が働いて十円玉が勝手に動いてるだけって証明もされてるよ。」

オカルト系を全く信じない彩は言いだしっぺの子に伝える。


「えー。そんなのやってみないとわかんないじゃん。もしかして彩…怖いの?」

「んな!そんな訳ないじゃん!いいよ、そこまで言うならやってやろうじゃないの。この世にオカルトなんて絶対ないんだから!」

言いだしっぺの子に煽られた彩はついムキになり話にのってしまった。

チャイムがなりホームルームや、1日の授業が始まっていく。



――放課後

彩のグループは5人だ。5人で紙やら十円玉やら準備してこっくりさんを始める。

「(こっくりさんなんて…。)」


そう思いながらやる気のない態度で十円玉に指を乗せ事を進める。

皆はどこか期待している様子だが指を乗せた十円玉は動かない。


言いだしっぺの子が何度も質問しても何を言っても反応はない。

皆はお互い顔を見合わし落胆した様子を見せる。

さらに問を続けるが、やはり何も起らなかった。


もう20分くらいはしているだろう。

言いだしっぺの子は反応がない事にしびれを切らし、終了の言葉を告げる。

皆は十円玉から指を離し、それぞれが帰る支度をする。


「やっぱり何も起きなかったねー。」

「ほんとだねぇ。やっぱり自分で何とかするしかないかぁ。」

「まぁ、頑張れー。」

「帰ろ、帰ろ。」

皆が話しながら教室を出る。


「(やっぱり何もなかったじゃん。くだらない。オカルトなんてありえないっての。)」

彩も内心そんなことを思いながら帰る。


だが……こっくりさんをした時点で事はすでに起きていた。


こっくりさんとは霊の召喚儀式だ。

準備するものや手順が簡単な為一つの遊びとしてする人は多いが、動物霊や人型の霊、存在の弱い浮遊霊や強い存在の霊、様々なものを引き寄せてしまうため安易にしてはいけない。


この時は何も起こらなかったが、実は強いものを呼び寄せてしまっていた。


強いものは自分の存在を表したり隠したりできる。

故にあえて反応を示さず自分の存在を隠していたのだ。

そこにいるのに。


それを知らない彩たちは平然として帰宅する。

そこにいたものは狙いを彩に定めた。

つまり彩に憑いたのだ。


彩はオカルトの否定派だ。

当然憑いたところで気配も何も感じない。


彩は何も感じないまま帰宅途中、小さな交差点で横断歩道の信号が赤になっているのを確認し立ち止まる。


右側から大きなトラックが来るのが視界の端に入る。

と同時に横断歩道の真ん中にうずくまる女の子の姿が見えた。


「(そんなところでうずくまって、助けなきゃ!)」


トラックが来るのもあり、うずくまる女の子を助けるため道路に飛び出した彩。

女の子に触れようとするがさわれない。

それどころか目の前から消えたのだ。


「え…」と思ったときには遅かった。

彩の体はトラックにぶつかり宙に舞い数メートル先に転落した。

打ちどころが悪く即死だった。



「(あれ…わたし…どうしたんだっけ…。たしか……帰り道に信号待ちしてて…そしたら道路の真ん中に女の子がいて…助けなきゃって思って……それから……。あ…トラックにぶつかったんだった…。あんなにスピード出てて大きかったし…。わたし、死んだんだ…。)」


「ん、ん~?私…生きてる…?ここ…どこ…。トラックにぶつかったはずなのに…体…痛くない。」


彩は目が覚め、自分の体に手を当てどこもケガもなければ痛くないのを疑問に思う。辺りを見回すと人の背丈くらいはある緑の葉っぱがたくさん生えている。

青く広い空に背の高い緑の葉っぱ。

見覚えのない場所や自分の今の現状に混乱する。


彩が見慣れない風景の中どうにか人や建物を探そうと葉っぱをかき分けながら進んでいくと広い場所に出た。


少し先の方から人の声がするので駆け足で近づくと同い年くらいの女の子と少し腰の曲がった高齢の女性が話しながら歩いていた。

彩がやっと人に会えた喜びでその二人に声を掛ける。


「あの!すみません!ここっていったいどこですか?私、自分がなんでこんな見慣れないところにいるかわからなくて…」


彩の姿を見た二人は驚き、高齢の女性が突如涙を流し、彩に泣きながらつかみかかる。

あいいぇーあらまぁ御殊みことぬーが、くぬとぅくになんでこんなとこにめーなち、うまんちゅとぅ毎日みんなで……。めーなち毎日……。やしがだけどじょうとうやっさぁよかったよぉ…。じょうとうよかったがんじゅーんでぃ無事でじょうとうよかった。」


「(な、何言っているのか全然わかんない!)あ、あのー…。」

突然の高齢女性の言葉に意味が聞き取れず困惑する彩に同い年くらいの女の子も話しかけてきた。


御殊みこと!ずっと長い間どこにいたの!みことが十歳の時に行方不明になって七年経つんだよ!おばぁも皆も心配して時間を見つけてはずっと探してたんだよ…。でも……。見つかってよかったぁ。」


女の子の話を聞いてさらに困惑する彩。

それを見た高齢の女性が立ち話もなんだからと家に行き話をすることになった。

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