第10話「ある人類の日暮れ」
「お兄ちゃん、私はきっと生まれたときからお兄ちゃんのことが好きだったんですよ」
「生まれたときからか……実際俺の記憶の限りではそうだもんな」
日和が俺を嫌っていたような記憶は過去の全てをひっくり返しても思いつかなかった。生まれたときからというのは保証出来ないが、記憶の限りでは俺が保証出来る。
「お兄ちゃんは私とずっと一緒にいてくれないんですか? そんなに他の人が気になりますか?」
「なんだよ急に」
「不安なんです、お兄ちゃんがどこかへ行ってしまうような気がしてしょうがないんです……だから、今晩だけは私のものでいてください……私だけのお兄ちゃんでいてください」
やれやれ……答えは決まっているだろう。
「ああ、俺はいつまでも日和の『お兄ちゃん』だよ、心配するな」
「うん、ありがとう。お兄ちゃん、今日だけは寝るまで手を繋いでいてくれますか? ただそれだけのことでいいんです」
日和もなんだか弱気だな。俺は誰かの何かになれるとしたら『日和のお兄ちゃん』以外に無いだろう、そう思っているので当然日和の手を握った。そして少しすると自動消灯機能で部屋の灯りが消えた。残されたのは俺と日和という経った二人の兄妹だった。
家族愛と兄妹と スカイレイク @Clarkdale
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