第21話 最終話
それから数ヶ月後、俺は妻に提案を出した。君の故郷である八戸で暮らさないかと。それなら君のお母さんの面倒も見られるし、俺だって幸造さんと云う友達と会える事が嬉しいと。
「本当? 貴方は東京生まれの江戸っ子よ。都会を捨てて田舎で暮らせるの?」
「別に捨てるとか大袈裟なものじゃないさ。娘の香織も居るし時々東京に帰り娘の処に転がり込むさ」
「それも良いわね。でも香織が嫌がるんじゃないかしら」
「その時は孝之の処へ行くさ」
「駄目よ。新婚さんの邪魔をするつもり?」
半年後、俺達は幸造の紹介で中古の家を買った。俺達が八戸で暮らすと言ったら飛び上がって喜んだそうだ。その前に妻と二人で北海道への旅に出た。二人揃っての旅は新婚旅行以来である。俺は旅先で幸造夫婦へのお土産を買った。すると妻が口を出して来た。
「貴方そんなに帆立貝を買ってどうするの」
「決まっているだろう。君の実家と幸造さんとこへの土産だよ」
「ばかねぇ、八戸は帆立でも有名な所なのよ」
「そうか、それなら孝之と香織に送り、幸造さんには君が選んでくれ」
妻は腹を抱えて笑った。妻があんなに笑う女だとは知らなかった。
これは楽しい旅になりそうだ。俺はレンタカーの運転席に座り「次の目的地は」と妻に聞いた。
妻との離婚騒動で俺が一番変わったのは、妻と良く話す事と、これまでになかった気配りするようになった事、物事を勝手に決めず妻に相談するようになった事かな。
了
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悔いなき人生を 西山鷹志 @xacu1822
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