第550話 香椎家へ
395話からの暴風雨の告白編を復習して貰うとより捗ります。
400話 告白
https://kakuyomu.jp/works/16817330656200078233/episodes/16818093078740904920
第402話 君の想いと匂い
https://kakuyomu.jp/works/16817330656200078233/episodes/16818093078916846537
この辺りの話が玲奈の頭に常にあると思ってくださいw
☆ ☆ ☆
松ちゃんを涙目で送り出した俺は身支度を始める。
17時に香椎家…。
…松ちゃん…気持ちはしょんぼり。
ノロノロ身支度。
シャワー浴びて、服を着替えて俺は夕方早めに家を出た。
…しっかり身支度して出たはずなのに…香椎さんと会う時感じる、コレで良いのか?感。
…お嬢様って感じだよなぁ。
まして家行くとさらにそう感じちゃう。
徒歩10分あれば着くいつもの道。
途中までは通学路でもある。
ひーちゃんの幼稚園の横を通り、小学校の脇を抜けていつもの橋を渡る。
このまま真っ直ぐいけばいつも青井、伊勢さんと待ち合わせのいつものコンビニがありそこから香椎邸はすぐ。
時間に余裕がある。
遅れちゃ失礼?早い方が失礼?
俺は時間きっかり行けばいいかなって思って香椎邸の前の公園でちょっと時間潰そうかな…それともグルッと迂回してのんびり歩こうか?
まだ30分あるし…中途半端だなぁ。
いかにも俺らしい…俺は迂回して少し歩いて17時きっかりに到着しようと決めて角を曲がる…。
『そっちじゃ無いでしょー!』
うわ!
向こうからこの世で1番清楚で可憐な娘さんが走って来る!
思わず逃げ出したくなったが踏みとどまる。
『承くん?何処行くのー!
こっちでしょ?道忘れちゃったの?
…どうしたの?後ずさって?』
薄いピンクのニットセーターに、黒のスカート。
それにベージュのコートに可愛いベレー帽を被った玲奈さんはそりゃもう可愛い!の一言。
髪は後ろで纏めて大層ご機嫌。
『ふふー!いらっしゃい♪
時間にはちょっと早いけど承くん来そうだなって外で待ってたんだよ!』
10月2週、風は冷たい。
結構今日は寒めじゃない?
慌ててそう言う。
玲奈さんは少し赤くなりながら、
『…だって…待ちきれなかったんだもん…。
風なんて気にしないよっ♪
聞いて聞いて!今日のね、ビーフシチュー良い出来なんだよ?
あの日の失敗作とは違うよっ!』
テンション高く言い募るこの可愛い娘さん…!
破壊力ある…!
握る手を取ると…冷た!
『冷た!早く家入った方が良いよ?』
手を取った俺の手と顔を見比べて玲奈さんは目をキュって閉じてなんか呟いた。
『もう、誰にも邪魔させないし遠慮しないっ!』
そう、聞こえた。
ちょっと胸が痛い。
『じゃあ行こ♪早いけど準備出来てるよ!
ふふー!ふふふー♪
今日は両親への挨拶も兼ねちゃう?まだ若い2人ですが…見守って頂けたら…♪
ふふー!ふふふー♪』
※連載始まって以来、初めて障害が無くなって恋愛脳になってる香椎さんをしばしお楽しみください(笑)
離そうとする手をキュって握って駆け出しそうなほど香椎さんは浮かれていた。
よっぽど自信作らしい、ビーフシチューの作成記や今開放感に満ち溢れている事、お互いの修学旅行の話、テンション高く香椎さんは俺を引っ張るように香椎邸へ。
はしゃぐ玲奈さんかわ…!
『ようこそ香椎家へ!
…コレからはちょくちょく来ることになるねー♪』
香椎さん?ちょっと今日のテンションについていけない…。
香椎さんは初めて見るかも?ってほどのご機嫌ハイテンション!
…一方俺は松ちゃんとの別れを経て…なんかローテンション…。
人様の家に来て、テンション上がんないとか言えない、俺は必死にアゲようと心掛ける。
『ふふー!パパもママも承くんに会うの楽しみにしてるんだよ?
今日は記念日だね♪
この間の…あの言葉…そう言う意味だよね?』
※告白→プロポーズだったと玲奈は解釈しています。
『…あの言葉?』
なんか背筋が寒い。
さっきからなんだ?この寒気…?
玲奈さんは表情豊かにころころ笑い、くるくる回って笑いかけ、ご機嫌そのもので今にも踊り出しそう。
これが4度目の訪問…
1回目は小学五年生の…あのクリスマス会…
2回目は中3のケンカしちゃって…パパさんと揉めかけたやつ。
3回目は去年の秋に待ち合わせすっぽかして…香椎さんへ謝罪する為のカレー作って持って行った日。
コレで4回目。
『入って入って!
ふふー!承くん来たよー♪
香椎家へようこそ♪』
大きな香椎邸の前、いつも帰りはこの前を通る見慣れた外観。
ニパって笑う可愛い香椎さんが扉を開けて先導してくれる。
『いらっしゃい立花くん。』
『あらあら♪いらっしゃい♪』
『承くん!お疲れー!』
パパさん、ママさん、優奈さんが出迎えてくれる。
美男美女の一族なんだよなぁ。
『本日はお招き頂きまして…つまらない物ですが…。』
俺は一礼して、修学旅行のお土産、『白い人たち』の大箱を差し出す。
パパさんが受け取り、
『これはご丁寧に。
ありがとう。
どうぞ上がってください。』
俺に入るように促す。
俺はお邪魔しますって言って家にあげてもらう。
『ふふー!コート預かるよ?』
…まだ秋だしそんなにかさばる上着を着て来た訳では無いが…。
にっこにこの上機嫌で後ろからコートを脱がそうと玲奈さん…。
…パパさんママさんの前で恥ずかしいんじゃ?
優奈『出た!嫁ムーブ!』
パパさんの目が優しいまま大きくなる。
あわわ!
『ふふー!コート掛けに掛けておくよ。
…襟…ちょっと…乱れてるかな?』
コートを掛けてくれた玲奈さんは正面に周り…
俺の首元、ワイシャツの襟を直してくれたんだけど…
少し顔を赤くして上目遣い玲奈さんつよい。
パパ『…。』
ママ『あらあら♡まぁまぁ♡』
優奈『バカっぷるw』
香椎家の皆さんの視線が刺さる!
優奈さんはニマニマと、ママさんはあらあらって微笑ましい。
…パパさん…人間ってこんなに目が開くの?
『ふふー!どうぞ♪』
…広い綺麗なリビングに通される…。
よく見たらパパさんはなんか怪我してる?
それにすごくお疲れ。
ママ『パパったら昨日階段で転んじゃって…
玲奈の件が落ち着いて気が抜けちゃったのかしらね?』
優奈『やだ!もう!
そんなおじいさんみたいなw』
パパ『ちょっと転んでね?』
パパさんは恥ずかしそう笑った。
ママさんは上機嫌で、
ママ『おじいさんじゃ無いわよ?
パパは♪今も昔も素敵なの♪』
優奈さんは肩をすくめて俺に笑いかける。
優奈『うちの両親は今もラブラブなの!
ごちそうさま!って感じでしょ?』
☆ ☆ ☆
リビングのソファーへ通されて、しばし談笑タイム。
当然、話題は婚約破棄問題。
パパさんは少し聞いてた俺と松ちゃんの話の詳細を姉妹から聞いていたらしく、
パパ『本当に…なんとか言えば良いか…。
娘たちから詳しく聞いたよ。
立花くん…本当にありがとう。』
そう言って俺の手を取るパパさんの手は大きく硬く乾いた、家族を守る父の手だった。うちの父さんの手と少し似ている。
…そして転んだ傷痛そう。
『香椎…玲奈さんと約束した事を守っただけです。』
俺の言葉にパパさんもママさんも嬉しそうに頷く。
姉妹はそれを見て嬉しそうになにか話していた。
あ!
俺は思い出す!持参して来た書類?
さっき松ちゃんに託された大きい封筒を取り出す!
ママ『それは?』
出かけに、松方新二さんが来て香椎家に手渡して欲しいと預かったものですって答えて取り出す。香椎家宛なので中身は見ていない。
パパさんに手渡すと、
パパ『…これは…あぁ…。』
パパさんはさっと流し読んでそれをママさんの手渡す。
パパさんが天を仰ぐ。
ママさんの手元を覗き込む娘たち。
パパさんは俺に向き直り、
パパ『コレは、婚約を破棄したって事を松方家が、新二くんが有責で婚約破棄になったって文面に、新二くん、弁護士…松方先輩のサインまである。』
俺にはよくわからなくって。
それでどういう事なんでしょうか?
と尋ねる、ママさんが俺にその書類を手渡す。
姉妹も書類を目で追う。
パパ『つまり、今回の婚約は松方家の不貞行為で婚約破棄に至り、松方家が有責で慰謝料を払って婚約破棄に至りましたって当事者のサインと捺印をした書類。
婚約破棄の証拠だね。
…そしてコレは玲奈を守る為のモノでもある。』
俺は渡された書類を汚さないように気をつけて読む…。
確かにそんな内容の書面でママさんが続ける。
ママ『…婚約破棄って外野からは理由がわかりにくい。
知らない人は玲奈の不貞行為やスキャンダルで破棄に至ったって考える人も出て来る。
…人間ってそういう下衆な部分があるのよね。
娘側にも問題があったんだろう!みたいな?』
そんな事ある訳ないだろ!
…でも…あの暴風雨の日…一緒のベッドに…あれ不貞行為になるのか?
ママさんは続ける。
ママ『何処にでもこっちがふしだらだったんだろう?何かやらかしたって思う人が居るのよ。
…この書面はそれを全部松方家側の責任で慰謝料を払って解決したって責任の所在を明記しているのよ。
…ご丁寧に香椎家令嬢は未成年で指一本触れていないって明記までして。』
そう言うと優奈さんに似た笑顔でうふふって笑って俺に笑いかけた。
玲奈さんが近づいて来て見せてって言った。
パパさんが厳かな声で、
パパ『つまりこの書面を持ってこの香椎家と松方家の婚約問題は解決。
婚約解消が確約され、もう二度と蒸し返される事も無いし、玲奈が責められたり貞操を疑われる事は無いって言う事だね。』
!!!
これで完全解決。
あとは慰謝料支払い位のもので別にそれはいくらでも良いしいつでも良い。
慰謝料が払われるイコール責任の所在って程度。
別に慰謝料で儲ける気も無いってパパさんは呟いた。
『ん♪んー♪』
書類見せて?って玲奈さんはニコニコ嬉しそう。
俺は立ち上がり大事なその紙を丁寧に、それこそ賞状を渡すように両手で厳かに、
玲奈さんもそれを察して、笑いを堪えながらも立ち上がり嬉しさを隠せなさそうに恭しく両手で受け取った。
『…玲奈さんの未来…取り戻せた…。』
漏れた言葉。
玲奈さんは目をキュって瞑ってパッと開けた。
泣き笑いみたいな表情で玲奈さんはその紙を胸かき抱き、
『…承くんのおかげだよ…。』
そう言って満面の笑みを浮かべた。
何故か中学時代の修学旅行を思い出した。
どんな事よりその笑顔を見れたことがなによりのご褒美だって思った。
俺は何故か腰が抜けた。
この件は終わったと思ってたけど形として完全に解決したってわかったからか俺はソファーに崩れ落ちた。
…香椎家のソファーは柔らかく弾力があり俺の体を優しく包み込んだ。
…高級ソファーすげぇって思った。
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