第551話 思い出、あの味
腰が抜けた俺を香椎家の皆さんが気遣ってくれる。
疲れてたのかな?そんなに玲奈のこと心配して♪休んで休んで!
玲奈『大丈夫?ほんとに大丈夫?
修学旅行明けだし疲れてた?
横になる?…私のベッドで横になる?』
涙目玲奈さんは破壊力しゅごい。
大丈夫、ちょっと気が抜けただけ。
第一寝れないだろ!玲奈さんベッド!!
…松ちゃん…。
コレを持たせてくれた松ちゃんに感謝する。
解決が形になった。
少し早いけどご飯にしちゃう?
ママさん提案でリビングに沢山のご馳走が運び込まれる。
ビーフシチューに唐揚げに美味しそうなコールスローサラダ、お漬物に卵焼きに…品数多い!
なんか雑多な取り合わせだけど気取った催しで無く家庭的にもてなしたい!って心意気を感じる温かみのあるメニュー。
優奈さんが横に来て、
優奈『コレ、ほとんど玲奈が1人で作ったんだよ?
サラダとお刺身だけママでそれ以外全部玲奈!
るんるん♪って言いながら小躍りして猫のエプロンして三角巾みたいなのして♪
ウチの妹可愛いよ?良いお嫁さんになるよぉ?』
小躍りしながらるんるんって言いながらお料理してるエプロン玲奈さん…!
もう想像しただけでしゅごい。
配膳する玲奈さんの美しいこと…可愛らしいこと!
猫エプロンして、髪を後ろで纏めて…ポニーテール玲奈さん!!
胸元の猫のプリントになりたい。
俺も玲奈さんの胸元で『にゃー!』って言うバイトしたい。
その圧倒的ヒロイン感は玲奈さんファン男子なら悶えて倒れるレベル!
馳走はもともと「走り回る、奔走する」ことを指した。
加えて、「走る」と重ねて使うことで、ここから、お客様をもてなすにあたり、食材を揃えるために方々に馬を走らせ、さらに走り回って用意をすることから、「馳走」は「食事などでもてなしをすること」「もてなしのための立派な料理」を指す。
…これは紛れもないご馳走。ありがたい。
玲奈『もー!お姉ちゃんも手伝ってー!
ふふー!承くんもうすぐだからねー?
おなかペコペコにして待っててね♪
ふふふー♪』
にっこにこ玲奈さんかわよ。
やっぱ女の子は笑顔だよね。
…。
玲奈『ふー!ちょっと待ててね!』
エプロン脱いで髪戻してすぐに戻るよ!って言い玲奈さんはしばし退場。
ママさんがご飯大盛りにしてよそってくれた。
玲奈さんが来たらいただきます!
早く戻って来ないかな…。
☆ ☆ ☆
くんくん?するよ?当然でしょ! side香椎玲奈
エプロン姿を見せたいが為にエプロン着てポニテにしてアピールしたんだよ!
どうだったかな?感想聞きたいな。
パパッと身支度整えて、白に赤いラインをあしらったワンピースに着替える。
髪もセットして準備万端!
結局このワンピースタイプが1番承くんの反応が良い感じがする。
…多分承くんの私イメージは清楚、可憐、家庭的、万能って感じ…。
※それにフィジカルが足されます。
髪は下ろして…後で1束纏めて…それを三つ編みにする時間は無いなぁ。
待たせたら可哀想!承くんのお腹と背中がくっ付いちゃうよ♪
階段を降りて玄関前を通って…止まる。
忘れちゃいけないよね!
※ここでやるのに前話で読者様のくんくんしてない!ってツッコミ多数w
玲奈は今日、地に足が付いていませんw
くんくん…くんくんくん!
『…ダメ…すぐそこに皆んな居るのに…
こんな娘だって知られたら…幻滅されちゃうよぅ…♡』
コートを抱きしめて、グリグリすーはー♡
くんくんくん!
『ほんとは…本人にしちゃいたいっ!
くんくん!くんくんくん!』
コートに身体を擦り付けちゃう…抱きしめて…♡
バタン!リビングの扉が開きお姉ちゃんが顔を出した。
目が合う。
ニマァ
バタン!
扉が締まった。
優奈『もう玲奈来るよー!』
…お姉ちゃんにヤバいとこ見られた…!
☆ ☆ ☆
戻って来た玲奈さんは…本当に綺麗で…!
白に赤ラインの入った清楚なワンピース!
髪も下ろして、後ろで1束結んでいる。かわええ!
清楚可憐とは玲奈さんの為にあるような言葉よ…!
※先程まで欲望のまま…
上気した頬でお待たせ!って言って俺の隣に座る。
胸がきゅーってする。
『着替えたんだね?』
玲奈『うん…どう…かな?』
『…とても似合ってる…。
綺麗だと…思う…。』
『ふふー!ふふふー♪
もう…承くんったらぁ♡』
優奈さんが反対側からズイっと、
優奈『こんな清楚可憐に見えて…うちの玲奈フィジカルモンスターだからね?結構プロレスごっことかも得意かも。
…うちの両親も得意でね…。』
※優奈には先ほどのコートに絡みつく玲奈がコブラツイストかけてる様に見えました。
玲奈さんを揶揄うように茶化したあとゲンナリした顔。
…うん、両親のプロレスごっこは想像したく無いなぁ。
それより横でぷんぷんしてる玲奈さんかわええ…。
それより…両隣娘さんが居る状況…パパさんの目が痛い…!
わかる、うちの父さんだって望が男連れて来たらSATSUGAIしちゃうかもって常々口にしているもの。
…世の中の娘さん、パパを大事にしてあげてください…。
そして食事が始まった。
玲奈『ふふー!それはね?』
料理に解説してくれるシェフ香椎。
そのどれもが素晴らしくって…香椎家は結構にんにくを食べるらしい。
…これが玲奈さんの活力の…フィジカルの源…!
唐揚げは塩味で胡椒とにんにくが効いててレモン汁めっちゃ合う!
ご飯がすすむ!
玲奈『ビーフシチューはね?
丁寧に下処理した野菜たちを煮崩れない様に細心の注意を払って…
牛肉もスネ肉を長時間丁寧に煮込む事によって…!』
うま!
…。
優奈『玲奈?承くんがコレじゃ無い感出てるよー?』
『いや!ちが!』
優奈さんが余計なことを!
その言葉に涙目玲奈さんは俺を見つめる。
俺は慌てて、
『お肉美味しい!
トロッとして、肉感あって!
でも、昔ここで食べた【あのビーフシチュー】が1番美味しかったなって一瞬思っちゃって…。』
涙目玲奈さん!可愛いけど胸痛い!
玲奈『あれから大きくなって…美味しいものいっぱい食べたから…私の料理美味しく無くなっちゃった?
小さい頃美化してるんじゃ?
もうあの頃の玲奈じゃ無いってこと?』
玲奈さんのおめめの涙ダムが結界しちゃいそう!
全然!コレ美味しいよ!
…ただ、あの感動の味が忘れられないってだけで…。
ママ『玲奈?あの煮崩れちゃった失敗作で良いんじゃ無い?
そもそもあれだって失敗作では無いでしょ?具が崩れただけで?』
玲奈『具が崩れたら失敗なの!
具がゴロゴロの食べごたえのあるビーフシチューが正解なんだから!』
優奈さんが芝居かかった仕草で、
優奈『5分後ここに来てください…
本物の玲奈のビーフシチューってヤツをお目にかけますよ…。』
それ前にも見ましたけど…。
☆ ☆ ☆
5分後。
『うま!これ!
俺が子供の頃感動したあの味!
初めてこんな美味いもの食べたあの味!』
玲奈『本当?本当に?』
『おかわりお願いします!』
具がとろとろに溶けたビーフシチューは玲奈さんの感性では失敗作。
俺にとっては思い出の味!
具がとろっとろになって…めっちゃ美味い!
全部シチュー部分に溶け出してるから…シチュー部分めっちゃ美味い!
なんか白い液体かかってるし…なにコレ?生クリーム?
俺は決して先のビーフシチューに不満があったわけでは無い事を丁寧に説明する。
お肉部分はあっちのが美味しいもん。
優奈『じゃこうすれば良いじゃん。』
優奈さんはゴロゴロバージョンからスネ肉をトロトロバージョンへと移した。
『…!
めっちゃ美味い…!
…もう一杯おかわり良いかな?』
玲奈さんは嬉しそうに、
玲奈『そんなので良いの?
もう!もう!!
ふふー!ふふふー♪』
…結局ビーフシチューを3杯頂いた。
もちろん美味しかった!でも3杯食べるよね?って玲奈さんの期待する眼差しに耐えられなかったからである。
もう小学生じゃ無いんだもん、流石にヨソ様のお家で3杯おかわりは肩身が狭い…。
玲奈『もうおなかいっぱい…かな…?』
玲奈さん!そんな顔しないで…俺はご飯も3杯食べた…。
香椎家の皆さんに昔から変わらない食いしん坊の子供って思われてるんだろうなぁ…。
☆ ☆ ☆
食事中も話しながらだったけど、食後そのまま色々な話し。
パパさんは俺の進路を聞いてきた。
失礼かも知れないけどって前置きして、
パパ『玲奈から、大学進学希望って聞いてるよ。
…弟さんの医療費の話も。
どうかな?承くん、うちで援助させて貰えないかな?
援助じゃ無くても君の未来への投資として大学費用うちが出したい。』
パパさんは何度も丁寧に俺を気遣う言葉をかけてくれる。
…以前の一件が尾を引いているんだろう。
パパ『君の献身と尽力、香椎家は心から感謝している。
今回の慰謝料だってそうだ、なんならウチが払うから婚約破棄してくれって何度も申し込んでるのに交渉にすらならなかった。
それが松方家からいくらでも払うと言う…。
なんなら君に全部差し上げても良い位。』
『え?いや俺が貰う道理が無いです。』
パパさんはうんって頷いて、娘達から聞いている通りの男だと呟いた。
パパ『…いつか君がうちに…いや、未来への投資なんだ。
だから無利息、無期限で無催促。大学費用をうちで肩代わりさせて貰えないだろうか?』
玲奈『…都内の大学なんてどうかな?
私も都内の大学へ進学する予定だから!
…ご飯だって作ったり…お互いの家行き来しちゃったり…♡
ふふー!ふふふー♡』
さすが玲奈さんのパパ。細身のイケオジでしゅっとスマート。
身長は俺より少し小さい170㎝位だけど大きく見える。
父って生き物は誰もが大きく懐が深い。
そっか、話して無かったっけ?
俺は両親と親友たちにしか話していなかった夢を告げる。
『…費用なら大丈夫なんです。
俺、防衛大学校へ進学したいって思ってまして。』
遠慮しないでって顔をする夫妻に説明する。
防衛大は自衛隊の幹部を育成する大学相当の教育機関で卒業すれば4大相当の単位が取得出来る。
玲奈『…聞いてない。』
『初めて話すからね。』
在学中から給与は出るし、各種運転免許もタダで取れる。
全寮制でお金がほぼかからない。うちには下の子も居るし弟のひーちゃんはお金がかかる!これ以上両親の負担にならないでむしろ家を助けられる!
玲奈さんはなんか呆然としている。我に帰ったのか。
玲奈『…でも…危なく無いかな?
怪我とか…事故とか…望ちゃんもひーちゃんも心配するだろうし、それ以上の事だって…。』
恥ずかしながら俺は語る。
大事なモノを守りたい。守れる漢になりたい。
もし有事の際…例えば東欧の戦争を例に挙げる。
なにがあるかわかんない世界、この大事なモノと思い出溢れるこの国を守りたい。
パパ『…普通じゃない世界だよ?
玲奈が言った事故や怪我じゃ済まない世界だよ?
それでも行くのかい?
うちがお金を出すよ、都内の大学に通って…玲奈と青春して楽しく過ごして就職して…人並みの夢を生活をじゃダメなのかい?』
言葉と裏腹、パパさんの目は俺が翻意しないってわかってるよって優しい目だった。
確認だね。
『…はい、大事なモノを守れる漢になるのが俺の夢です。
青臭い、耳障りの良い格好良さげなこと言ってる自覚はありますし、きっと簡単じゃ無い事はわかってて覚悟の上です。』
パパさんは何度も頷いて、
パパ『玲奈、諦めなさい。
男が決めた事だよ、もう彼は夢を見つけてる。
玲奈みたいにね。』
玲奈『だって!でも…。』
…玲奈さんと同じ大学行けるわけ無いけど…
都内で大学生活…たまにお出かけしたりご飯ご馳走になって…めっちゃ楽しいだろうなぁ…!
優しいキャッキャうふふな青春が浮かんでたまらなくなる
いやいや、男子高校生の生き様は色無し恋無し情けあり!
パパさんはズイって前傾姿勢。
なんだ?!
パパさんは真剣な表情で、
パパ『…それで…娘と…玲奈と交際するんだよね?』
玲奈『きゃ♡
って言うかぁ…もう承くんにはプロポーズされてるしぃ♡』
言葉遣いおかしくない?
おかしくなくなくなくない?
玲奈さんは一息で…あの暴風雨の一夜の話しをそれはもう細かいところまで丁寧に説明してのけた!
俺もちょっと曖昧なところまで!
優奈『ふむふむ…構成が…!』
ママ『うんうん♪きゃー!それでそれで?』
パパ『…。』
…俺そんな事言ったっけ…?
冷や汗が出る。
ダラダラ…10月なのに…暑く無いのに…。
語り終えた玲奈さんはツヤツヤしてて…
玲奈『
承『だから笑って欲しい。
玲奈さんが笑ってくれるなら俺は何でも出来るしどんな事だって出来る。
…全て終わったら…返事聞かせてほしい。
…俺は玲奈さんの笑顔をいつも、いつまでも見ていたいんだ。』
って…!
ふふー!ふふふー♪
そんな訳でプロポーズされちゃったのでした♪』
似てない俺の声真似で一文字一句誦じて見せた新川の才媛。
汗が…止まらない…!
俺そんな事言ったかなあ?言った様な気もする。
玲奈さんの抱いてのシーンや駆け落ち→出来ちゃった結婚の件ではパパさんの顔見れなかったもん…もし望がこんな事うちの父さんに言ったら…憤死する。
パパさんは空を仰いで…大きく深呼吸して…拳を握った。
…俺殴られる?無罪だと主張する!
でもパパさんの気持ちを考えたら1発くらい殴られてやらなきゃいけない気はする。
パパさんは絞り出す様に、
パパ『…玲奈と交際するのかい?それとも結婚を前提に…婚約?』
やっと婚約破棄出来て安心したとこに別に男がお嬢さんくださいって来たらしんどすぎる。
…でも、大丈夫。
俺はソファーから床に降りる、床に降りて正座して頭を下げる。
土下座じゃ無い。
でも丁寧にハッキリ。
『…俺はお嬢さんと…玲奈さんと付き合う積もりはありません。
…もちろん結婚も。』
そう言って頭を下げた。
しーんって音が聞こえる。
人が4人居てこんなに物音しないって事あるんだね…。
玲奈『
※コレはなんですか?
玲奈さんは焦点の合わない瞳でそう呟いた。
久しぶりに玲奈さんの生イングリッシュを聞いた…。
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