第402話 君の想いと匂い【side香椎玲奈】

承くんは苦しい顔しながら私に言った、


『駆け落ちなんて出来ないし、させたく無い。』


『…そうだよね…。

残された家族が…私にも家族が居るし、承くんだって…望ちゃんやひーちゃんが泣いちゃうもんね。』


あはは。わかってたんだ。

一瞬現実逃避しちゃった!

でも真剣に承くんは言う、


『もちろん家族は大事。

でもね、俺は玲奈さんが大事。

子どもの頃から好きだったから、ずっとずっと香椎玲奈が好きだったから。』



きゅーん!って胸が痛くなる…。

録音すれば良かった…!

しんどい気持ちも悲しい思いも今吹っ飛ぶほどの言葉…

私…



『俺は子どもの頃からずっと見ていた。

香椎玲奈がいかに努力家で献身的で愛情深く周りのことを1番に考えてきたか。

小5のクリスマスパーティーの頃からずっと好きだった。

中学でいじめられてクラス委員長に祭り上げられていじめられた時に助けて貰ったこと一生忘れない!』


ただただ感じる熱に、想いに私は対応出来ない。

承くんは私の手を握ったまま、



『駆け落ち?出来ちゃった結婚?

とんでもない!玲奈さんはそんなこそこそしたり、人に色々言われる様な道を通っちゃいけない!』



薄暗い部屋でふたりきり。

一言たりとも聞き逃さないよう、私は全力で承くんの言葉を聞く。


『玲奈さんはどうしたい?どうなりたい?

無理とか、出来ないじゃ無くって。』



『…望んで無い結婚したく無い…新二くんと結婚したくないよ…。

自由に生きたい、夢を追って…大学行って弁護士になる…

その上で…好きな人と結婚したいっ…!』



わかってた自分の望み。

…改めて口に出す言葉は望む未来。

口に出すことで衝動は強くなる。

やっぱりこのままじゃイヤ!絶対に!



気付けば夜。室内は真っ暗。

ベッドに向かい合うふたり。

ふたりして正座しながら見つめあう。

さっきの言葉と熱い眼差しに胸はドキドキしっぱなし!



承くんはそっと私の手を取った。

私の右手を両手で包む。

私ははその包んだ両手に左手を添える。


視線がぶつかる、お互いの熱がこもった視線。

承くんが熱い眼差しで熱い言葉を私にぶつける。


『玲奈さん…聞いてくれる?

昔もこんな事言ったかもな…。


俺がなんとかする!必ずなんとかしてみせる!』



中学3年生の頃だったなぁ、体育祭だった。

これとそっくりの言葉をかけて貰った。

強い、熱い想いのこもった言葉。

胸が熱くなる。心強い!

さっき、欲しい言葉を貰った…。

でも、今日こそ本物の言葉が欲しい。

私はもっと直接的な言葉が欲しくって…、



『なんで?なんでそこまでしてくれるの?

…前回は『誓い』があったから…だよね?』


握り合う手と手、交わす熱い視線。

思ってたのと違うけど常に思い描いていた情景。

いつか好きな人に…告白される日私はこうするって決めてた…!



承くんは大きく息を吸い込んだ。

一際強く私の手を握り目を見ながら、





『君が好きだから。』





!!!




承くんは情熱的に手を握り私の目を見ながら続ける、




『玲奈さんが好きだから、何度でも何度でも助けるし。

どんな事でも、どんな難問だろうと必ず俺が助けて見せる!』




熱い、熱い告白。

今どきな男子にさりげなくとかおしゃれなとかじゃ無い。

承くんの熱い想いを真っ向からぶつけられ私は感無量…。




『さっきも言った事だけどね。

俺は子供の頃からずっとずっと君が好き。

…でも今はもっと好き。

この気持ちは誰にも負けない。


必ず俺がなんとかしてみせる!』



握る手は熱く、互いの鼓動が手から伝わってる気がする。

私は前々から告白されたらこう返そう?こうリアクションして…好きだよっ!って可愛く…返そう?

って色々シチュエーションを考えていた。


でもね、その情熱的な言葉に、想いに…言葉より涙が溢れて止まらない。

綺麗に可愛く…そんな余裕なんて無くって、気持ちが心が嬉しくて嬉しくて私は涙が止まらない。


誰かに大丈夫だよ!って言って欲しかったのかな?

他力本願で嫌な娘だな…。

大好きな承くんの言葉だけど中学生の頃と違って相手は大人なんだよ?とか全部そういう事が承くんの情熱的な言葉で全部押し流された。


承くんの伝えてくれた想いに、言葉に私は答えなきゃいけない。

私は泣きながら、



『…私…私は…私も…』


承くんは私の唇を人差し指で閉じると、


『だから笑って欲しい。

玲奈さんが笑ってくれるなら俺は何でも出来るしどんな事だって出来る。

…全て終わったら…返事聞かせてほしい。

…俺は玲奈さんの笑顔をいつも、いつまでも見ていたいんだ。』




求婚プロポーズされた?!

ひょっとして今のプロポーズだったの?!


もう怖い事なんか無い、彼が居る。

まだまだ大変だろうし困ったこともいっぱいあるだろう。

でも大丈夫!ひとりじゃ無いし私にはこんなに心強い武将が居る!

本当になんの根拠もなく私は大丈夫だと思った。

それは楽観でも丸投げでも無くどんな事もふたりなら乗り越えられる!って思い!

あんなにあった悲しい気持ちは全部承くんが飲み干してくれた。


承くん大好きだよ。



そう思えば思うほど身体の芯が熱くなる…!

…この部屋に来た時…悲壮感があって…緊張感があって…それどころじゃ無かった…。


ベッドでふたり横になりながら話す時も緊張感があって…。

ふたりでずっと語り合い欲しい言葉や熱い想いを伝えて貰った…。


…良く無い。良くないよ!

すっかり…承くんの熱に当てられて…承くんの匂いに包まれて…

俺がなんとかする!って漢らしい言葉に安心させられ、告白して貰って…

私…もう今日…やっぱり思い出が欲しい…!



顔と身体が火照る…!

向かいあって手を握られているシチュエーション…。

これはイケる!



はしたない女の子だって思われちゃうかな?

上手く…キスを誘って…。



でも、こんな気持ちになったのは間違いなく…承くんのベッドに居るからだよ!本当は!くんくんしながら、承次郎くんみたいにして欲しい。


責任は取って貰うよ!


私は承くんに伝われ!って想いながら熱い視線で見つめる。

恥ずかしながら私は欲情していた…。

緊張と緩和、そして告白して貰った…

※させた。


その想いと熱は私の女の子の部分に本能的にこの人だ!承くんが欲しいよ!

って思わせるのに十分なものがあったの。


だから見つめ合いながらも私はモジモジしながら太ももを擦り合わせるような仕草…本能的な疼きがあったのね…。

いいよ…承くん…♡



承くんは『あ!』って顔した…。

まずい…これは違う気がする…!



承くんはわかったって顔して…

優しく微笑むと、




『お手洗い…階段降った突き当たりだよ?』



…私は告白して貰って…5分で…肩パン3回した。



『ごめんなさい…俺デリカシーが慢性的に不足しています…。』


承くんは申し訳なさそうに呟いた…。

※承は玲奈が世界一清純だと信じています。



お手洗いじゃないのぉ!じゃあ何?って聞かれても言えないよぉ!

私は怒ったフリしながら承くんベッドに横になると、


枕にグリグリすーはー!グリグリすーはー!


くんくん!くんくんくん!

拗ねたフリして思いっきり嗅いでやったもーん!

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