ペトリコール

@Yorube4

第1話 前兆

「...調査員が帰還しました。調査員と通信しますか?」

人工音声の問いかける声。いつものようにこう返事をする。

「ああ。よろしく頼む。」

十台以上はあるであろうモニターのひとつに、少しのノイズの後、調査員の姿が映しだされる。

「こちら本部。結果を報告してくれ。」

「...はい。個体数、個体の様子、雨に対する警戒心、信仰心、これらすべてに異常はありませんでした。しかし気になる点がひとつありまして。」

「なんだ?」

「雨の降る回数が異常に増加している点です。以前までは週に一回ほどだったのですが、今回の調査時では二日に一回のペースになっています。...これも、の影響なのでしょうか。」

「そうだな。まあ、二日に一回のペースで、今のところ個体に変化がないのであれば気にする必要はない。なんせまだ個体についても、雨についても不明な点が多いのだ。個体がどれくらいのはたらきをし、どれくらいの間生きるのか。それすらもわかっていない。」

「まだ実験段階のそれを送り込むなんて、政府もどうにかしていますよ。」

「発言に気をつけろ。この通信にさえ監視システムは組み込まれているんだ。

...また一か月後に調査を依頼する。ご苦労だった。」

本部とはいえど、この部屋には本部長以外には複雑に入り組んだ回線とモニターくらいしかいない。なぜなら、この部屋は丸ごと国家の機密情報だからだ。国民にすら知られてはいけない。絶対に...。























上空に大きな箱がやってきた。雨が降る。急いで帰らなければ。

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