異世界転生したら、ねこねこパラダイスで幸せを噛み締めています。

橋元 宏平

ねこねこパラダイス

「気が付いたニャ?」


「ミャ?」


「まったく、君は仔猫こねこニャんだから、木登りはまだ早いニャ」


 目が覚めると、いきなり巨大なミケネコに説教された。


 どういうこと?


「ミャー」


 声を出したつもりが、自分の口から出たのは猫の鳴き声だった。


 なんで?


「集落一大きな『イチモツの木』に挑むなんて、危なすぎるニャ。もう、登っちゃダメニャよ?」


 目の前にいる巨大ミケネコも、ニャーニャーと鳴いている。


 その鳴き声は、脳内で自動変換されて、何を喋っているか理解出来た。


 いやいや、どうなってんの? これ。


 っていうか、何? その卑猥ひわいな名前の木?

 

 訳が分からなくて、混乱しながら、状況を把握はあくしようと周囲を見回す。


 すぐ側には、緑色の葉がい茂る大木がそびえ立っていた。


 これが、「イチモツの木」かぁ……。


 確かに、大きくてご立派な巨……いや、みなまで言うまい。


 ミケネコの話によると、俺はこの木に登り、足を滑らせて落ちたらしい。


 見たところ、ここは森の中にある小さな集落か村といった感じ。


 人の姿はなく、代わりに二足歩行している猫が何匹もいた。


 良く分からないけど、可愛い猫がいっぱいで幸せいっぱい。


 え? ってことは?


 ここで俺は初めて、自分の体を確認した。


 俺の体は、真っ白な猫の毛で覆われていた。


 手を見れば、クリームパンのような真っ白ふわふわおててに、まんまる肉球がついていた。


 人として生まれたからには、絶対にあるはずのない俺の手に肉球がっ!


 思わず、顔を触ると、肉球がプニプニして気持ちが良かった。


 ついでに、匂いもぐと、香ばしいポップコーンみたいな匂いがした。


 あ~、これだよ! 俺の求めていた幸せの肉球はこれだよっ!


 絶対に叶わないと諦めていた、My肉球に感激した。


 ほっぺたを触ると、猫の長いヒゲが生えている。


 頭の上には、三角の薄っぺらいネコミミがあった。


 そこで、ひときわ大きな猫の鳴き声が聞こえて来た。


「シロちゃん! 木から落ちたんだってニャ? 大丈夫だったかニャ?」


 大きなシロブチネコが、俺に向かって突進してきて、ぎゅっと抱き締められた。


 白い腹毛がふわふわ柔らかくて、めちゃくちゃ気持ちいい。


 これ、絶好の猫吸いチャンスじゃん。


 憧れの猫吸い、ずっとやってみたかったんだよね。


 せっかくだから、思いっきり堪能しておこう。


 そこで、また別の猫の鳴き声が聞こえてくる。


 シロブチネコの腹から顔を覗かせると、サバトラシロネコがミケネコと話をしていた。


「すみませんニャ、ミケさん。うちのシロが、ご迷惑をお掛けしましたニャ」


「これくらい、なんのなんのニャ。でも、仔猫は危ないから、もう目を離しちゃダメなのニャ」


「はい、これから気を付けますニャー」


 シロってのは、たぶん俺の名前だろう。


 真っ白なシロネコだから、シロ。


 ミケネコは、ミケと言う名前らしい……まんまかよ。


 どうやら、シロブチとサバトラが、俺の親猫らしい。

 

 ミケと話を終えたサバトラが、俺に優しくニャーと声を掛けてくる。


「怪我はないかニャ? シロが木から落ちたと聞いた時には、飛び上がるほどビックリして、それはそれはもう心配したニャ。無事で良かったニャ」


 そう言って、サバトラは俺を背中から抱き締めてくれた。


 シロブチとサバトラにサンドイッチされた俺は、「ミャー」と歓喜の鳴き声を上げた。


 人間だった頃の俺は、めちゃくちゃ猫好きだったんだけど、猫アレルギーで触れなかったんだよね。


 猫に生まれ変わった今は、大好きな猫に触り放題。


 俺の望む世界は、ここにあったんだっ!


 ねこねこパラダイス、最高っ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生したら、ねこねこパラダイスで幸せを噛み締めています。 橋元 宏平 @Kouhei-K

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ