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 我々は、孤独ではない。

 ある世界の、さる学者がそう提唱したのは、今からひとつと半世紀前の事だという。

 我々が暮らすこの世界の外には別の世界が存在し、我々と同じように人々が生活している。

 環境も違えば、暮らしの様式も異なるだろう。我々とは、異なる理論、技術を有しているかもしれない。そもそも、我々と同じ生態であるかも疑わしい。

 それでも我々は、やはり孤独ではないのだと。

 ALONE's計画。

 そう呼ばれた計画が実現に至ったのは、今から一世紀前。この混沌の海で初めて作られたケイオスクラフトは、今では博物館に飾られているような骨董品の化学推進ロケットだった。

 長い旅路の果てで、彼らは知る。

 今まで星と呼んでいた夜空に浮かぶ光のひとつひとつが、我々が住むこの世界とは別の“世界”の灯火であるという事を。

 そして、さる学者が提唱した通り、他の世界は彼らが基盤とする“科学”とは別の理論で繁栄を築く者達が住んでいた。

 科学の前身に過ぎなかった錬金術で発展した世界があった。彼らがかつて見切りを付けた蒸気機関が異様に発達した世界があった。機械と肉体を繋ぎ合わせる技術を確立した世界があった。

 そして、魔法や呪い、気功や超能力。

 彼らには理解しようのない不可思議な論理で回る世界が、文字通り星の数ほどあったのだ。

 そこに住む人々もまた、彼らが知る人類の姿とは大きく異なる者達がいた。

 獣の特徴を備えた者。生まれた時から鋼の身体を有する者。ひどく長命な者。死のない者。そもそも肉体を持たぬ者。

 世界というカタチが決して一つとは限らないという事を知るのと同時に、人類の定義もまた拡がった。

 その全貌を知る者は、一世紀半経った今でもなお、居ないだろう。

 混沌の海を泳ぎ渡り、世界の種を蒔く、ゼリーフィッシュを除いては。

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ゼリーフィッシュ・スクランブル 読み切り版 楠々 蛙 @hannpaia

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