魔王に操られた仲間を、構わずフルボッコ

 最終ステージは、燃え盛る魔王城だ。


 女大賢者リリアと、ニンジャのコジローが派手に暴れてくれたらしい。まあ、そういう設定だしな。俺たちが二人を選んでいたら、ジュライとレンが魔王城を攻撃している展開になる。


 半キャラずらしを駆使して、少しずつ魔王の軍勢を削り落としていく。


 確実に数は減っているが、敵も強くなっていてなかなか進めない。攻撃が当たらないのでどうってことはないものの、装甲が硬い上に体力がある。


「ジュライ、焦らずに行こう。急いだところで【例のイベント】は確実に起こるから」


「おう。今はレベル上げに専念するか」


 レンと背中合わせになって、前後から来る敵に対処した。例のイベントは、難易度が高いからな。


「やっと魔王まで来たよ」


「だが、ここからだよな。例のイベントは」


 最後の扉を開けて、最終ボスである魔王の元までたどり着く。

 ヤギの角をはやした青年が、杖を携えて玉座に座っている。


「ふたりとも、目を覚ましてください!」


 目の前では、聖女ウルハがリリアとコジローと戦っていた。二人の目は、怪しげに赤く光っている。魔王に操られているのだ。

 そのスキに、魔王がウルハを背後から抱き上げた。


「あああ!」


 不意をつかれ、ウルハが魔王に拘束されてしまう。

 俺たちに気づいたリリアとコジローが、振り返る。


「ハハハ。二人仲良く、あの世へ行くがよい!」


 玉座に座りながら、魔王がウルハを自分のヒザに座らせる。


「ここまでコられたことは称賛に値するが、味方を盾にされればいくら貴様らでも……なにい!?」


 俺たちが繰り出した外道な戦法に、魔王が驚愕していた。

 連続ハンマー投擲で、俺はコジローをタコ殴りに。ハンマーが尽きた。聖剣を投げつけて腹に突き刺し、素手でジャブパンチを浴びせる。「死なない」とわかっているから、できる戦法だ。

 コジローが一瞬、ダウン直前の硬直状態になる。

 そこへさらに聖剣を投げ飛ばして腹にぶっ刺して、またコジローの顔面にジャブを食らわせた。

 レンは火炎瓶をリリアにぶつけ続け、ファイアーストーム・ドライバーでとどめを刺す。


 倒れた二人の口から、魂のようなものが抜けていく。


「は、わたしたちは何を?」


「拙者は魔王に操られていたのか、不覚!」


 リリアとコジローの、洗脳が解けたらしい。


「ぬがあああ! このオレサマの正体に気づくとは!」


 フヨフヨ浮いている魂が融合して、妖術師の形を取る。四天王最後の一人だ。レン、老騎士、リッチと違い、自分は手をくださずに卑劣な攻撃を好む。


「こうなったら、貴様らに取り憑いてくれる!」


 妖術師が、俺たちに入り込もうとした。

 俺は妖術師に、聖剣を投げつける。


「同じ手を食らうか!」


 聖剣を刺されまいと、妖術師が宙へ逃げた。


「電光蹴り!」


 そこへレンが足刀蹴りを浴びせて、叩き落とす。

 ジャストタイミングで、俺は聖剣を回収して切り捨てた。

 さっき与えたダメージに、聖剣の攻撃が加わって、妖術師はあっさり絶命する。


 どうにかハメて、「相手になにもさせず」に倒せた。ヘタに暴れさせると、手がつけられなくなる。正攻法でも倒せるには倒せるが、ハメで倒さないと時間がかかるのだ。

 恐ろしいことに、ハメは公式が推奨している。


 さっき倒したジュライの父親たる老騎士も、ハメがなければとんでもなく強い。まともに戦えば、歯ごたえ十分の敵だった。


 ハメてシナリオをガンガン進めてもよし、正攻法でアクションを楽しむもよし、レベルを上げて物理で投げてもよし。このゲームは、いろんな遊び方ができるのだ。


 だが、ラスボスは厄介である。


「おのれ、味方でも平然と殴り飛ばすとは野蛮な! これが人間のやることか!」


 魔王が、俺たちの攻撃を否定した。


「そのブーメラン発言、そっくりてめえに返してやるぜ」


 俺が反論すると、魔王はウルハをどけて立ち上がる。


「やはり、世界は人間に任せておけぬ。この魔王が管理してくれよう!」


 さて、ラストバトルだ。

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