最終話 エンディングは殴り合い

「わたしのために死になさいジュライ!」


「それはこっちのセリフだぜレン!」


 跳躍したレンに、俺は連続コンボを食らわせる。


「くう、ハメが使えたら!」


 ハメ技は、プレイヤー相手には通用しない。「フレンドリーファイア」、つまり味方に攻撃が当たってしまうことを防止する対処だ。


 プレイヤー同士の対戦は、正攻法で戦う必要があった。ハンマーや火炎瓶によるハメは、いっさい通じない。すべて透過してしまう。あれはモンスターを倒すために清められた攻撃だからだ。魔王がウルハたんを捕らえたのも、「ハメ対策」なのである。ちゃんと理由があったのだ。それでも許さんし、負けんかったが。


「くっそ! アイスボルト!」


 魔力ゲージを消費しない通常魔法で、レンが俺の足を凍らせた。


「しまった」


 俺はレンに捕まってしまう。レンは投げキャラだ。つまりこれから起きる攻撃は……。


「どりゃあ。ファイアーストーム・ドライバーッ!」


 炎の竜巻の遠心力と速度を利用した、パイルドライバーで、俺は地面に叩きつけられる。


「ぐほおおお!」


 大技をくらい、俺の体力はごっそり持っていかれた。コンビネーションで俺の聖剣までは飛んでこないまでも、ダメージは大きい。


「くっそ。まだ倒れない! さすが体力バカの騎士タイプ!」


 レンも俺の通常攻撃連打で、ヘトヘトである。


 最後の力を振り絞って、俺たちは武器を振った。


「いいかげんに、しなさあああああい!」


 聖女ウルハが俺たちの足元に魔方陣を敷いたことも知らずに……。


 

~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~



 決戦の途中で、俺たちはまた雷に打たれた。


 気がつくと、現実世界に戻されていたのである。


 あの現象はなんだったのか、未だにわからない。


 もしかすると、ゲームの世界は本当にあって、ウルハたんが助けを求めていたのかもしれなかった。実際ゲーム開発会社は当時、倒産の危機にひんしていたらしいし。



 卒業した俺たちは、同じゲーム雑誌の出版社で働きつつ、ひとつ屋根の下で暮らし始めた。


 ゲーム実況で稼いだお金のほとんどは、『フォート・ガーディアンズ』復刻のクラファンにつぎ込んだ。開発会社が寄付を募っていたから、乗ったのである。



 で、また年月が過ぎて……。

 

~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~

 

「死ねえええ!」


「くっまだまだ! 娘さんを……潤羽ウルハさんをくれるまで、僕はあきらめませんからね!」


 今は、俺とレンの夫婦は、ポチポチとコントローラーを操りながら、自称「娘の婚約者」を激闘を繰り広げている。



 俺たちの功績かは知らないが、見事『フォトガ』はリメイク版が発売になった。高校時代から数えて、三五年ぶりだ。


 その間に俺たちの間には娘が生まれた。名前はもちろん、潤羽ウルハである。


 しかし、娘は勤め先で男を作ってきた。今日は対面の日である。


 俺たちが提示した、娘を差し出す条件は、リメイク版フォトガで俺たちに勝つこと。

 その条件を飲み、婚約者の男は無謀にも俺たちに戦いを挑んできたのである。


「くそが、倒れろよてめえ! 俺たちの潤羽たんは渡さねえって言ってるだろうが!」


「どうしてご両親は、僕と潤羽さんの結婚を許してくれないんですか!」


「てめえの名前書きに食わん! なにが小次郎コジローだ! シナリオに絡んでこねえじゃねえか!」


「言っている意味がわかりません!」


 うるせえやい。モブプレイヤーが、俺たちのウルハたんに気安く触るんじゃねえ!


「いいか! てめえのようなやつに、ウルハたんはわたさねえからな!」


「二人がかりで、瀕死じゃないですか!」


 そうなのだ。こいつ割と強い。やり込んでやがる! これまで雑だった攻撃が、リメイクされて洗練されているし。


 しかも……。


「ウルハたん!」


 俺たちに攻撃をしてくるのは、よりによって我らがウルハたんだ。リメイクされた際に、プレイアブル化したのである。


「とうとうプレイアブルに!」


 援軍として、娘の潤羽がウルハたんを使ってコジローをサポートしているのだ。



「もう、パパも! ママも! いいかげんに、しなさああああああい!」


 娘の、ウルハの雷が飛んできた。

 

 

 

(完!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アクションRPGの騎士に転移した俺は、敵の悪役神官に転移した幼なじみと、聖女を取り合う! 世界の明暗なんか知るか! 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ