ハメ技で攻略
「いくよ、ジュライ!」
「OKだ。任せろ!」
レンはイフリートの怪力で、自分ごとリッチとともに跳躍する。リッチの足をホールドして、パイルドライバーの体勢に。自身の周囲に、ファイアーストームを展開した。
「ファイアーストーム・ドライバー!」
炎の竜巻で加速し、地面へと突撃してくる。
「聖剣でフィニッシュだ!」
落ちてくるリッチに、俺は聖剣を突き刺す。
聖剣が光の柱を放ち、リッチの脳天を貫いた。
「バカな、アンデッドの頂点たるこのワシが!」
技による落下のダメージと、魔法技の威力により、たった数発で一面のボスが消滅する。
大幅にレベルアップをして、オレたちはステータスポイントを割り振った。
「おーし二面行くぞ」
面クリア時に立ち寄れるショップで、レンが火炎瓶を大量に買い込む。
「OK。次もハメ技で」
オレも、ハンマーを大量に購入した。
「わかってる」
そう。さっきの技は「ハメ」だ。
このゲームで魔法を発動すると、敵が硬直する。相手をつかんだままで魔法を発動すると、硬直した状態を維持できるのだ。
オレたちは、この仕様を活用したのである。
二面ボスは、キマイラだ。
火炎瓶とハンマーを投げあって、キマイラを撃退した。
さっきの『火炎瓶とハンマーハメ』は、このゲームでも有名なバグ技だ。
敵は火炎瓶やハンマーを食らうと、一瞬硬直する。その硬直時にさらに追撃をすると、もう身動きが取れない。この仕様を使って、相手に何もさせず倒す。
三面のボスは、ワイバーンだ。ある程度ダメージが入ると、空を飛んで逃げていき、安全圏から攻撃をしてくる。実に厄介な敵だ。
しかし、対策はある。
オレは、ワイバーンが壊した家から角材をゲットした。角材を、ワイバーンの腹へ投げつける。
「天空烈波斬!」
剣を下からすくい上げて、アッパーの感覚でワイバーンを打ち上げた。
「んんん、なっ!」
レンが空中でワイバーンをとらえ、空気投げを展開する。
「ダメ押しの角材! からの、天空烈波斬!」
これも、ハメの一つだ。角材でダメージを与えて硬直させ、大技を叩き込む。
相手が空中に浮くところを、他のキャラに捕獲させる。投げによってさらに硬直を促し、こちらが追撃をするのだ。
これで、相手は硬直を続けるので、空も飛べない。
ぐえええ、と断末魔の叫びを上げて、ワイバーンが絶命した。
このプレイは、二人以上いないとできない。
レンが投げキャラのビルド構成にしたのも、ハメを意識したビルドだからである。
「さて、次は四天王だよ」
「強敵だから、さっさと仕留めよう」
俺は、敵の根城へと足を踏み入れた。
四天王の一人は、なんと俺の父親という設定の騎士だ。
彼こそ魔王の側近でありつつ、聖女を亡き者にしようとしている黒幕そのものである。それがわかるのは、俺がプレイヤーでいるときだけだが。
「考え直すのだ、我が息子ジュライ! 聖女がこの世に存在していては、魔王との戦闘は避けられん。聖女を魔王に差し出すことこそ、人類にとって世界にとって正義なのだ。この父とともに世界を」
「死ねええええええ!」
オレは初手で、豪快に斬りつける。
ゲームキャラから見れば、コイツは身内かもしれん。実際、ためらうシーンもある。
だが、オレからすればウルハたんを穢す張本人だ。世界を自分の思うままにしたいだけの、外道だしな。万死に値する。ジュライが躊躇するムービーも、常にスキップするくらいだ。
「角材投げ!」
そばに落ちていた角材を、老騎士へと投げつけた。
老騎士が、くの字になって硬直する。これもゲームの仕組みを利用したハメ技だ。
「天空裂波斬!」
さらに騎士を、剣でアッパー気味に切りかかってかち上げる。
「今だ! 火炎瓶を」
「こっちはハンマーで」
宙に浮いている状態の老騎士に、火炎瓶とハンマーを投げ続けた。老騎士の硬直を、持続させる。
ゲーム的には、正攻法で倒してほしいだろう。だが、時間がない。
「ぐほおおお!」
老騎士がのけぞって、打ち倒される。
「なぜだ! なぜ我が理想が理解できん!?」
「世界の明暗より、ウルハたんを選んだからだ」
「俗物が! 世界がどうなってもいいのか!?」
倒れているジジイに、オレは剣を突き刺す。
「世界は、ウルハたんが救う。時代遅れの思考停止ジジイは、ひっこんでろ」
黒幕であるジジイにトドメを刺し、次のステージへ。
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