君もどうか良き夏を。



 朝に目が覚めてテレビをつけると、ニュース番組で今日は今年初の夏日となる予定だとアナウンサーが話していた。

 とてもおかしな夢を見ていた。体感時間のずいぶん長い、まあしかし悪くない夢だった。

 俺はなんだか全く違う別人になって、どこか見覚えのある男にこんな夢を見たのだと話す、そんな夢。

「……」

 あの男に、確かに見覚えがあった。

 俺は押し入れを開けて、学生時代使っていたノートやら教科書やらを開く。真面目に勉学に励んだ形跡とともにいくつか落書きが見受けられる。

 その落書きたちの中。

 間違えた問題の答え合わせの際に必ず描いているキャラクターのその顔を見て、俺は納得した。

 正解の横にはいつもその顔があった。

 眉間に皺を寄せ、小馬鹿にしたような顔で笑う「えこう先生」が、そこに居た。

「……暑いな」

 夏が来る。

 俺は冷房をつけ、思う。

 向日葵すらもうじき咲くのだろう。

 しょうもない、現実の夏が来るのだ。

 ねえ、そうでしょう、先生。




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向日葵すら太陽でしょうもねえ 九良川文蔵 @bunzou

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