埋葬

たま

埋葬

 望月若葉は、愛犬を失った悲しみを抱えて、近所の林にやってきた。彼は愛犬を天国に送るために適切な場所を見つけようとしていた。愛犬の遺体を入れた袋を抱えて、小道を進む。ここがいいと思った場所に穴を掘り、袋を置き、土をかぶせた。


 その帰り道、彼は予想外のものに遭遇した。土を掘る音が聞こえ、若葉はその方向に歩いていく。そこには、クラスメイトの佐伯瑠美がいた。彼女は、若葉と同じく何かを埋めていた。




「何を埋めてるの?」若葉は尋ねた。


「妹」と瑠美は答えた。




 若葉は驚愕した。初めは、からかわれているのだと思った。しかし彼女はずっと泣き続ける妹が鬱陶しくて、ついには突き飛ばして殺してしまったと話した。


 普段の彼女の振る舞いは、良心の欠落を感じさせる。気に食わない相手は無視するし、大人を敬う姿も見たことがない。瑠美は、スコップで土を掘り返し始めた。彼女は、自分が殺した妹の遺体を見せようとしている。


 若葉は怖くなり、逃げ出した。見なかったことにしようと思いながら、遠くへ走る。しかし彼の心には、瑠美が言っていたことが残っていた。何度も瑠美の顔を思い浮かべ、若葉は彼女に正直に向き合う決心をした。


 若葉は、瑠美が今後他人を傷つけることのないよう、警察に通報した。彼女が本当に妹を殺めたのか、事実は若葉の耳まで届かなかった。ただ一つ知ることができたのは、瑠美が精神科病院に入院するということだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

埋葬 たま @tama03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ