主人公は、本。十刷が出た、本。
もう一度言います。主人公は、本です。
なのに中身は、まるでヒューマンドラマ。
それも、いぶし銀の、ちょうどほどよく日焼けした本たちのような。
え、管理不届きですか。そもそも、本を日焼けさせるなって?
ごもっともなんですが、人も本も、すべてにおいてうまくいく、というわけにはいかないのです。
大変、大変世知辛いのです。そういう世の中を、この作品は描いています。
けれど何故でしょうね。憂いはあっても、絶望がないのです。
「随分と低い窓」でも、私たちの前にもそれが、広がっているからでしょうか。
あなたの本棚。そこにいる彼らが、その答えを呟いているかもしれません。