第5話 ハッピーエンド

 

 ──2年後。


「レイナ様。このお菓子すっごく美味しいです」


「サリオンが作ってくれたの。ユキが気に入ったのなら、持って帰れるようお願いしておくね」


「ありがとうございます!」


 シルフォード公爵家の中庭にて、レイナお嬢様とユキさんがガーデンテーブルで談笑しています。


 どうやらユキさんは私が作った茶菓子を気に入ってくださったご様子。お土産用にいくつか用意しておきましょう。



 お嬢様がユキさんと一緒に笑い合っている姿を見られて、私は嬉しいです。


 レイナお嬢様の身体に玲奈さんの意識が混じって既に2年が経っています。1年以内に死んでしまうと言っていたお嬢様の破滅ルートを、私は無事に全て潰すことに成功したのです。


 お嬢様に聞いた話ですと、本来はユキさんがこの国の王子と結ばれるはずだったのですが……。


「レイナ様。明日の魔法試験、私はちょっと不安です」


「大丈夫よ。ユキは魔法の制御が完璧になったんだから。自信を持ちなさい。試験の時は私が見守ってあげるからね」


「は、はい。頑張ります。レイナ様がそう言ってくださるなら私、やれます!」


 どうやらユキさんは王子ではなく、レイナお嬢様に惹かれてしまったご様子。


 少し前、学校でいつも彼女が後をついてきて困ると、お嬢様が私に相談してきました。困ると口で言っていても、どこか嬉しそうだったのを覚えています。


 誰かに頼られると自分のこと以上に頑張れてしまうレイナお嬢様にとって、ユキさんはとても良い友人になることが出来たようです。


 ちなみにユキさんがレイナ様と仲良くなろうとしたルートでは、お嬢様は隣国の貴族に嫁がされてしまうはずでした。隣国の貴族は私が処理しておきましたし、シルフォード公爵にも諸々交渉済み。


 レイナお嬢様の未来は守られたのです。



「あっ、サリオン」


「はい。なんでしょうか?」


「あなたが作ってくれたお菓子をユキが気に入ったの。いくつか持って帰らせたいのだけど、まだあまりってあるかしら?」


「たくさんございますよ。お土産に持っていっていただきたかったので、準備しておきました」


「さすがサリオンね。いつもありがとう」


「恐れ入ります。私はレイナお嬢様の専属執事ですから」


 これからもその笑顔を守らせてください。



 私はサリオン。

 レイナ様の専属執事で──


 貴女ためならなんだって出来る、この世界最強のハイエルフです。

 

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最強万能なハイエルフ執事は、悪役令嬢のバッドエンドを認めない 木塚 麻弥 @kizuka-maya

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