第2話 突然の出会いと別れ。
「乾杯!懐かしいな。学生の頃は毎週飲みに行ってたもんな。サークルの仲間と海でバーベキューしたり、キャンプにも行ったよな。」
「楽しかったな。」
「あっという間だった。あ、そういえば同じサークルだった夏海覚えてるか?アイツ卒業してすぐ結婚して、今年2人目の子供も生まれるらしいぞ。」
「あー覚えてるよ。あん時からモテてたもんな。」
佐藤夏海。同じサークルの中で1番可愛かった。端正な顔立ちで友人も多く、リーダー的存在の1人だった。
そんなことを思い出しながら、酒を流してこんでいく。暑かったからか酒はすすんだ。
「なぁ、お前これからどうするんだ?」翔太は心配そうに聞いてきた。
「何が?」
「何がじゃねぇよ。仕事だよ。ずっと今の仕事続けるわけじゃないだろ。またどっかに就職して仕事した方が絶対いいよ。せっかくあの大企業に勤めてた経験があるんだから。」
「まぁ、そーだな。」聞き流しながら会話は続く。
「お前はどうなんだよ。」俺は訊ねた。翔太の今が気になったというよりは、話を変えたかった。
「俺か?俺は、入社当初の時に期待の新人なんて言われて、どんどん契約も取れてさ。そろそろ昇進かな。そしたら、結婚して子供も産んで、夢のマイホーム、、なんて彼女なんていないけどな。」
自分から聞いたが少し後悔している。同級生とこんなに差が出てしまったのか。どうしても自分の比べてしまう。そんな後悔と共に俺は酒を流し込んだ。
「なぁ、お前なんで辞めちまったんだよ。」翔太が心配そうに聞いてくる。
「色々あったんだよ。別にいいだろ俺の話は。」
「良くねぇよ。お互い頑張って就活してたのに、心配なんだよ俺は。」
「余計なお世話だよ。」
「余計なお世話ってなんだよ。」翔太は少し声を荒らげた。「俺はお前のことを思って言ってんだよ。なんなら、俺が仕事紹介してやろうか?」
「それが余計なお世話って言ってんだよ!」
酔いが回ってしまったのか、俺は声を荒らげた。店中に声が響き渡り、一瞬空気が凍る。
「あ、いや、ごめん。」
「余計なお世話ね。」翔太は呆れたような顔を浮かべながら、財布からお金を取り出し帰ろうとしている。
「酔ってる時に人の本性が出るっていうのは良く言ったもんだな。こっちは好意で言ってやってんのに。」翔太は言った。
「なんだよそれ。少し仕事が出来るくらいで上から目線か。仕事が出来るってそんなに偉いのかよ。」
「悠晴、お前変わったよ。大学4年間のお前はもっと目標があった。なのに今はただの派遣社員じゃないか。せっかく大企業に勤めてたのにな。」
「じゃあ俺帰るわ。明日も仕事だしな。」
翔太は席を立ち帰って行った。それを追いかけることは俺には出てきなかった。
そしてその3ヶ月後翔太は自殺した。
猛暑日 牛すき @newushi0713
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