第8話 心の変化

翌日、目を覚めたらベットの上にいた。

てっきり椅子に座ったままだと思っていたのですが…。

不思議に思ったが、とにかく身支度をした。

今日もやる事は山ほどあるのだ寝ている場合ではない。


「まずは…彼らに謝らなくていけませんね。」


朝起きて直ぐに広間に行くと、叶羽さんと牙狼さんがムスッとした顔で立っていた。

何を言われても今回は反論は出来ませんね。


「昨日はー」


謝ろうとした時に私が謝るより先に叶羽さんが口を開いた。


「いいよ。あんたが言うアイドルになってあげる。」


「はい?」


どういう風の吹き回しだろうか…。

叶羽さんの口からそんな言葉が出て来るとは思いもよらなかった。


「いいね、あんたのその顔。初めて見た。」


叶羽さんは私の顔を面白そうに眺めている。

昨日の内に心の変化が…いや急すぎるのでは?

不思議に思っていると今度は牙狼さんがそっぽを向いたまま話す。


「俺は…人間を許さねぇ。媚もうらねぇ。それでもいいならなってやるよ。そのアイドルとやらに。」


「…宜しくお願いします。」


二人がどうして急にやる気を出したのかわからなかったが、その日から私と彼らの関係が少しだけ変わった。

叶羽さんは思い出したかのように何かを取り出す。


「コレ、あんたのでしょ。」


それは私のスケジュールが書いてるメモ帳だった。

どこにいったのかと探していたが叶羽さんが持っていたらしい。


「ありがとございます。」


そう言って叶羽さんからメモ帳を受け取ろうとすると、叶羽さんが中身を見始めた。

中身を見られても困る事はありませんが…。


「あのさ、なにこれ。」


叶羽さんは最近書いたスケジュールを見せてきた。


「昨日の予定を書いたものですね。」


「こんな生活しててよく僕達にあんな事言えたよね。」


「それは…大変なご迷惑をお掛けしました。」


それには深く謝った。

叶羽さんは一ページめくって顔をしかめた。


「うわっ。信じらんないんだけど。」


牙狼さんもスケジュールを見て固まっていた。

確か…次のページは今日のスケジュールが書いてあったはずだ。


「…これはいらないだろ。」


「これも…、後はこれも…。」


叶羽さんと狼牙さんは勝手に私のスケジュールに書き込んでいく。

二人が書き込んでいる最中に優雅に劉鳳さんが歩いてきた。

劉鳳さんもスケジュールを覗き込むとある一か所の所を指を差した。


「叶羽、ここも消しておけ。」


「はい、わかりました。」


「お前の言う通り三食食べる。だから心配するな。」


その言葉で劉鳳さんが何を消したかわかった。

きっと毎晩、劉鳳さんの部屋へ行くという項目だろう。


「わかりました。」


そして私のメモ帳が返ってきた頃には大半の予定が二重線で消されていた。

消された項目は彼らが関係するものばかりだった。


「全部、本当に出来ますか?」


使われていない部屋、広間の掃除に食事管理、屋敷兼みんなの様子を見回り、屋敷の修復作業。

彼ら自身が自らやると言ってくれた事は嬉しかったが、本当に出来るかは心配なところ。


「はぁ?誰に言ってんの。」


叶羽さんは私を睨んだ。

そして狼牙さんも何やら不機嫌そうだ。


「一々あおってくんなよ。」


どうやら私の言葉が挑発しているように聞こえたようだ。


「そんなつもりはなかったのですが…。」


今は彼らを信じてみる事にしよう。

さて、最初の予定を終わらせましょうか。


「さぁ、気を取り直して、踊りの練習です。」


「はぁ~あ、だる~。」


「今日こそ…勝つ。」


叶羽さんは気だるげに、狼牙さんは気合に満ち溢れている。

練習をしようと思った時だった。

妖艶な声が後ろから聞こえた。


「中々面白そうだ。」


叶羽さん、牙狼さんの隣に普通に並ぶのは劉鳳さんだ。

私も驚いていたが、叶羽さんと牙狼さんも驚いていた。


「劉鳳さんも参加するという事でいいんでしょうか?」


「あぁ、私もアイドルとやらに興味が沸いた。」


「…わかりました。」


本当に今日は驚くばかりの一日ですね。

叶羽さんと牙狼さんはいつも以上に真剣に取り組み、私の助言を聞き入れてくれた。

劉鳳さんはというと…一度見てしまえば覚え、完璧に踊ってしまう人だった。


「これは…まいりましたね。」


三人で踊っているのを見ると、バランスが良い事がわかる。

ダンスも歌もそれぞれが自分の出番がわかっているかのように一人一人の良さが際立つ所でしっかり際立つ。


「急ぎで準備しなければ…。」

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訳アリ男遊郭でアイドルマネージャーやってます 好葉 @konoha00001111

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