むせる

くもまつあめ

むせる

お昼時間。

お弁当を席で食べていると、おにぎりのちりめんじゃこがのどに引っかった。

一気にむせこんで、声も出さずに苦しむ。

口にはまだおにぎりが残っていて、吐き出さないように吹き出て来ないように、かといって咳を止めることも出来ない。


たまらず、席を離れてトイレに駆け込み、なんとかおにぎりを飲み込んで大きく咳をする。


ゲホゲホ


引っかかるちりめんじゃこを出そうと喉と腹筋がよく動く。


はぁはぁと落ち着くと、涙か浮かんでいる目をこすり、なんとか持ち直す。


(最近よくむせるなぁ)


鏡で乱れた髪と服装を整えながら考える。

こんなにむせなかったのに、最近どうしたんだろう。

そんなこんなで昼休みが終わり、自分の席で集中していると、隣の席の奴の本や文房具が自分の席にはみ出ている。


(まただ…)


こちらが何も言わないのをいいことに、まったく悪びれる様子もない。

一度やんわり忠告したものの、

「そんなにはみ出てないけど」

の一言だった。

いやいや、どうみても不法侵入レベルだろうよ…

と思ったが何も言わなかった。


それから何度も何度もはみ出してきて、それでまたこの状況だ。


うんざりして、今日の今日こそ絶対に言ってやると意気込んで

(いい加減にしてくださいよ!)


…と言いたいところを我慢してぐっと言葉を飲み込んだ瞬間…


ゲホゲホっ!!


また急にむせこんだ。

昼のおにぎりの時とは思えないくらい、苦しい。

またトイレに駆け込んで口を手で覆って何度も咳をする。


何度目かの咳の後、喉の奥から何かが出てくる感触があった。

手のひらにそっと乗せてみると、小さな青い飴ような塊だった。

よく見ると、

飴の塊のようなものに

『いいかげんにしろよ』

と小さな文字で掘りこんであった。


(慌てて飲み込んだからなぁ。)


飴の塊ををゴミ箱に捨て、手を洗い席に戻った。

吐き出したせいか、喉も気持ちもスッキリとした。







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