後書き(2)セクシャリティ解説への応援コメント
ノロノロ読みになってしまいましたが、ようやく結末を見届けることができて嬉しく思っています。中世ヨーロッパの絵画のような美しい風景描写にまさしく「人間」を描いた愛憎劇が錯綜し、非常に重厚な物語でした。
ともすると危うい表現になりがちなセクシュアリティ関連の描写も、三人の力関係がほぼ互角だったからこそ、三つ巴の戦いとして没入することができました。特にティモシーとナンシーの契約はどう考えてもナンシーの方が割にあわないと思うのですが、彼女の気迫がさながら負け戦でも勝負に打って出る戦国武将のようで、鮮烈な生き様に息を飲みました。むしろシスヘテロ男性として最も優位なはずのティモシーが、勢いでは三人のなかで最も押されていたように見え、結果的に「試合に勝って勝負に負けた」感が味わい深かったです。一方で、熾烈なライバルである二人がビビアンの小悪魔っぷりには戦友のように共感するシーンもあり、こういった描写が憎しみだけではない絶妙な関係性を表していたと思います。
また、あとがきでフィクションにおけるセクシュアルマイノリティの描かれ方やキャラクターのSOGIについてきちんとご説明されているのも、とても好ましく感じました。作者さまが苦心した部分については、やはり本編のスピンオフという位置づけが物語に制限をかけてしまったのかな、と思います。いつかもう一度類似のテーマで作品を書かれたら、その時はきっとまた楽しみに読ませていただきたいです。
作者からの返信
完走&感想ありがとうございます!
三人の関係性を見守りながら物語をじっくり堪能していただけたご様子で何よりです。
作品全体の雰囲気や、あとがきの補足についてもご評価をいただきまして嬉しく思います。
おかげさまで、今後このテーマに取り組む場合は、現実世界で現代寄りで考えてみようかな、と少しモチベーションを持つことができました。
どうもありがとうございます。
後書き(1)プロットについてへの応援コメント
素晴らしく素敵な物語に巡り合わせていただきありがとうございました!
ご紹介いただいた時はメリバと仰られてましたが、私的には十分にハッピーエンドでした。
序盤の展開に、物語上のヒロインとしてのビビアンの嗜好・行動の不安定さ、それから話の雰囲気からくる不安はありましたが、ビビアンが純粋に主人公を求め始めたあたりから惹き込まれていって一気読みしてしまいました。
階級社会が残る舞台もとてもよかったです。単純に好きになったから一緒になることができないという舞台装置としての階級社会と立場の強いキース、それをぶち壊してしまえるような最初の復縁へのギミックが素敵でした。ビビアンからすれば逃げた訳ですが、それでも最後に頼ってくれたのがティモシーだったことに読んでいて救われました。
ナンシーについては、ティモシーからすれば自分が愛する人に与えることができない物を持っている(しかも肉体面で)、男としてとても敵わない寝取り相手なのが辛いですね。
打ち明けあえたのも全てが終わったあと。ビビアンが言うようにせめてどの段階ででも打ち明けていたらもっと平和な結末もあったのかも。ナンシーは二人のどちらからも責められた可能性がありますが、せめて出産前であったなら和解もありえたかもしれないのが残念です。ビビアンはキースに続いて二度目にも拘らず、早い段階でティモシーに相談できていたら……と。
LGBTQ+についてはすみません、私はその辺あまり難しく考えないで物語を書く方なので、好きならいいじゃん程度の理解の人です、申し訳ない。
いずれにしても最後のビビアンの『いま手元に残ったものにただただ感謝する』という選択は、彼女らしい素敵な選択だと感じました。それだけに全編を通してビビアンの蓮っ葉な印象に素直さが感じられ、ティモシーを愛していたいという想いが瑕疵を覆せる程に好印象だったからだと思います。
素敵な復縁話をありがとうございました!
作者からの返信
熱い感想をありがとうございます!
ビビアンを気に入っていただき、そしてハッピーエンドと感じていただけて嬉しく思います。
男性読者から見ると序盤の展開はストーリーの中でどういう意味を持つのか、LGBTQ+タグに反応してその気で読むのでなければ少し戸惑いますよね。
そういった懸念はありましたが、思い切って企画に参加させていただいて、ご満足いただけたようで何よりです。
ありがとうございました。
編集済
フィナーレへの応援コメント
拝見しました。
LGBTをただの「萌え」ではなく、ちゃんと社会との関係性を持たせて物語を進行していたのがお見事!
昨今ジェンダー・男女差別撤廃等騒がれていますが、本来人間社会で生きる中では「自らの性のままに生きる」事と「現実の男女の明確な区別」との対立は避けて通れないと考えています。(LGBTを否定する意図はありません)
ティモシー、音楽家での活躍はまるで現実世界のヨーロッパで活躍していた数々の作曲家そのもの。スキャンダルも結構あったから世界観がリアルでした。
2人のヒロインとは対象的に中性的な少年期を過ぎると普通の男性に。これがビビアンを愛するにはかなり障碍となったよう。ナンシーとの取引でトンデモ策を実行するけどその後に責任を持てたのには安心。
ビビアン、女性が好きな女性ですがある意味成長期においてはどんな人間にもある事。現実では宗教教義もあってタブー視されてきましたが、実際は同性愛も多々あったのかも。日本も江戸時代から以前では結構あけすけだったようだし。
彼女の不幸はLGBTではなく欲しいものを全て欠かすことなく求めていたのが原因のようにも思えました。だからこそ自分の習性を捨てきる事も出来なかった。
ナンシー、彼女もLですが男装しつつも本来は女性服が楽な模様。何にでも化ける事が出来る劇団員なのは彼女にとってまさに天職。
ビビアンが母として出来なかった事を成し遂げ、偶然とは言えその代償として命を失う展開があまりにも神懸っていました。
異世界タグにも関わらずリアルな現実の中で生き抜こうとする3人の物語を楽しませて頂きました。
PS.
恐れながらレビューを書かせて頂きました。
作者からの返信
naimedさん
コメントをいただきまして誠にありがとうございます!
この作品は、異世界どころか現代ものとしても書いても問題ないよね、と自分でも思いながら書いていました。
素敵なレビューまでいただき、光栄です。
キャラクターについても的確に読み取っていただけて嬉しく思います。
好きになった人に、性別を理由に拒否されてしまう辛さを異性愛者の方にも疑似体験していただこうという思惑もあり、ティモシーにはだいぶ辛い思いをさせました。
重たい物語でしたが、その重さをご堪能いただけたようで何よりです。
ありがとうございました!
没シーンへの応援コメント
当方の企画に参加してくださり、ありがとうございます。
以前、なろうで読ませていただいた時には没シーンは未読でした。やっぱりおっしゃる通り、転生の話を入れないバージョンの方がしっくりきますね。
ティモシーがしたことは、普通に考えればすごい裏切り行為ですけど、ビビアンにとってはむしろ子供を授けてくれたと思えるぐらいなんですよね。LGBTQ+でない私は、どうしても切ない結末に感じてしまいましたが、色々な幸せの形があるんだとも感じさせてもらいました。
作者からの返信
田鶴さん、コメントありがとうございます!
賑やかしで企画に参加させていただきました。
ティモシーのことは、ええ。主人公だからと言って為した行動が正しいとは限らないんですよね。ビビアンだから奇想天外な受け入れ方をしてくれたのでありまして。
他の読者さまからはナンシーの立場からのご意見もいただいていて、やはりどの立場からも切なさの残る読後感となるようです。
メリバエンドなので、成功なのかもしれません。
完読ありがとうございました。