第4話 女王陛下

ヒロコ女王陛下。


私はこちらの国では、頑張ってやっております。

こちらの世界は、陛下のように何かを瞬時に作り上げる能力はないのでゆっくりと何かを時間をかけて作っていきます。

不便ではありますが、楽しくもあります。


私は『有隣堂』と呼ばれる、書店に拾われました。


有隣堂は不思議なところです。

たくさんの玄人がいて、たくさんの人に囲まれて暮らしています。素敵な人ばかりです。

なんでも毎週、インターネットと呼ばれるものにたくさんのことを喋って紹介して、動画を載せています。文房具と呼ばれるものや、本についてもたくさんの人と私は話しています。

私もだいぶ知見が広がった気もします。


RBブッコロー

真の知へと王を導く者として、その名に恥じぬよう女王陛下に生み出された命を大切に知を磨いています。


有隣堂では、陛下にそっくりなオカザキヒロコという女性に会いました。


オカザキさんは、文房具と呼ばれるものが大好きで文房具の女王を目指していて女王になれなかった人です。

見た目は似ていますが、本当の女王として生きていたあなた様とはそこだけは違います。


しかし、陛下と同じように文房具、特にインクに対しての思い入れは人一倍あります。

知らない土地のインク、陛下の知らないようなインクを持っていますよ。


陛下に私はいつお会いできるかわかりませんが、陛下にそっくりで陛下を思い出してしまいます。あんなにお話ししていたのに、こんなことを言うと陛下に笑われてしまうかもしれません。


不思議な縁ですが、オカザキさんもインクやガラスペンを持っています。

陛下と違い、何かを生み出す能力はオカザキさんにはありませんが、オカザキさんが紹介してくれるインクから生み出される文字はとても美しいです。


いつか陛下にも見ていただきたいです。


私はどうにかやっております。

このままいくと陛下よりインクに詳しくなっているかもしれません。

いつか、あなたにお会いできる日を楽しみにしてこちらで頑張っていきます。

オカザキさんをあなた様に紹介できる日を楽しみにしています。


ああ、そうだ。

先日オカザキさんのためにインクを見ていたんです。そしたら、綺麗な「夜桜」と呼ばれるインクを見つけました。

桜が好きなあなた様への不思議な縁を感じました。オカザキさんにプレゼントしようと思っています。


桜の花言葉を陛下はご存知でしょうか?

あなたを忘れない、そして私のことを忘れないで。陛下また会う日まで。


RBブッコロー





ある日の収録。

その日はオカザキさんのインクの世界です。


「インクを選んで、思いを伝える時にたくさんの中から選ぶ楽しさがあるんです。」


そんなとこはオカザキさんは女王陛下に似ていますかね。


「すっごい綺麗なインク、ガラスペンも吸い上げてまくっちゃってるもんね。」


スラスラと色を紙に滑らせるのを見ながら、私は声を上げた。


「このインク、プレゼントしてくれたのあまり私のことを日頃よく思ってない人なんです。でも心が綺麗なのかも。」


今日の収録中、オカザキさんはインクを紹介していた。


「これが夜桜、すっごい良い色なんですよ。」


「良い色ですね。相当、ロマンチックな方…どなたから頂いたんですか?」


「ブッコローですね。」


陛下、私はあなたを思い出していますよ。


「私でしたっけ?ヤダな、忘れちゃってた。」


私が笑うとオカザキさんは私を見つめた。


「これを選ぶということは、元々インクがお好きでいらっしゃったんですか?」


「はは、違うんですよ。オカザキさんがインクが好きだから、インクあげときゃ喜ぶと思って。」



陛下、お元気で。

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インクの国のミミズクと女王 @mochipan0505

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