第53話エピローグ
理世の家に泊まったあの日から数日経ち、改めて今回の件でお世話になった面々に話をしないとだろうということで集まる場を設けてもらった。
一旦顔合わせもして、改めてあの日のお礼と、迷惑をかけた謝罪をした。
当然というかなんというか、気にするなと皆に言われただけで、むしろ寧々なんかはどうして謝るのかと抗議してきたくらいだった。
ひとまずそんな形で全員と話し合いを終えて、そこまではいいんだが……なぜか集合場所がうちになってしまっているせいで困ったことにもなっていた。
「お兄。狭いなら寧々が上に乗ろっか?」
「自分は逆に乗ってもらってもいいっす」
「ダメだから! アキくんは私の隣」
狭いのだ。
集まったのは大吾、沙羅、寧々、理世の四人。
五人が座るにはスペースが足りないせいで、ベッドに二人とテーブルを囲んで三人という構図になってるだが、対面に座る大吾の足元にはカーペットが足りておらずフローリングの上に座らせることになってしまっていた。
「仲いいなぁ」
「他人事すぎないか? 大吾」
「まあ他人事だからな。妹ってのはこの際忘れる」
一番大事なところだと思うんだけどな……。
そんなやり取りをしているうちに、わちゃわちゃ言い合っていた理世たちの会話も始まる。
「それにしても……ずっと気になってたけどこういう子だったんだ」
寧々を見ながら理世が言う。
「お兄、寧々のことどう紹介してたの?」
「服のタイプが近い親戚、かなぁ」
「思ったより無難な紹介なんだ」
そりゃそうだろう。
これでどれだけ頭を悩ませられたかわからないくらいだ。
「やっぱり……油断してたらアキくん、食べられちゃうね」
「え?」
「でもお兄、全然落ちないですよ? このおっぱいでも」
寧々がそんなことを言いながら重量感を感じる胸を持ち上げる。
サッと大吾は目を反らしていた。
「うわ……ちょっと私が揉んでいい?」
「え」
「会ったときから気になってたし、何よりちょっと、想像してたより似合ってて可愛いし」
よだれを出すかという勢いで寧々に迫る理世。
さっきまで言い争いをしていたのに……いやまああれはあれで大吾の言う通り、仲の良いやり取りなんだろうけど。
「お兄! 怖いよ!」
本気で怯えた様子でサッと俺の後ろに隠れた寧々だが、理世は止まる様子がない。
俺を挟んで不穏な動きをして……。
「この際アキくんごとでもいいや」
「は? おい!?」
俺に抱きつく勢いのまま寧々の胸に手を伸ばしやがった。
当然正面から突進された俺は理世と密着する形になるんだが……。
「あっ……ちょっといきなりそんなところ触らないでください!?」
寧々が本気で抗議していた。
いや抗議したいのは俺だ。
「苦しいから!?」
後ろは柔らかいんだけど前は……いやこれは素直に言ったらダメな奴だ。
しかも別に、理世もないわけじゃない。
思考を読み取ったかのように沙羅が冷たい視線を投げかけて来ていたが、これは無罪だと主張したかった。
「先輩たち、スカートなんですからやめた方がいいっすよ」
「あ」
理世がサッと身を引く。
おかげで俺も寧々もすぐ動けるようになって、姿勢を戻した。
大吾は絶対に見ないように目を背けてくれていた。元々見える角度ってわけでもないんだけど、律儀なやつだった。
「そういえば大吾、大丈夫なのか?」
「ん?」
「芸能活動。大吾の性格的にもう、引くに引けないだろうけど」
「あー……まあなぁ」
今になって思えばそもそも、大吾ならほかにも方法とかやりようはあったと思う。
もちろんそれだけ俺のために動いてくれたと言うことでもあるんだが、やりたくもない芸能活動を避けてでもなんとかするプランもあったんだろうと思ったんだが……。
「いやー、俺実は、この活動にアキのこと巻き込もうとしてたんだよな」
「は?」
あり得ない話過ぎて混乱する。
と思ったんだが……。
「リヨン氏がコラボ相手を探してたっていうゲーム、完全新作のFPSゲームだけど、アキもゲームでなら参戦できるんじゃないかって」
「無茶を言うな」
「いや、俺が見てきた中で言うと、アキは結構ゲームセンスある方だと思うんだよ。プレイ時間が問題なだけで。ほら、アキは割と浅く広くやるだろ?」
「それはそうだけど……にしてもゲームで活動していくほどとは思わないけど」
「まあそれはやってみての話として……。でもほれ、俺がリヨン氏を引っ張り出せなくても、最悪アキが直接殴り込んできたら拒めなかっただろ?」
「……」
理屈ではそうなんだがそれを実現するのにどれだけハードルが……と頭が痛くなる。
ただそれでも、大吾はそれだけ色々な可能性も考慮して、このプランを選んでくれたというわけだ。
「まあ結果的にはすぐ会えたし良かったというか、これならもうちょっとやりようはあったとは思うんだけどよ……。まあやってみるよしばらく」
「悪いな」
「そう思うなら売れないことを祈っておいてくれ」
まあ……無理だろう。
お披露目イベントとなった新作ゲームでの理世とのコラボは大反響を呼んだ。
何よりあのトップアイドルが男とイベントに出たと言うのに、批判以上にお似合いだなんてコメントが多く見えたくらいだ。
人となりも含めて見て、多くの人間が大吾なら別に……と思えてしまうくらいのオーラがあるんだろう。
「アキくん。私は芸能活動はしてるけどアイドルだから、キスシーンとか共演NGとか色々あるから安心して」
唐突に理世がそう言って腕を組んでくる。
「それはいいんだけど……」
「お兄は一般人だから何も心配ないもんね」
「まあそういうことにな……え?」
理世がさらに強く俺をひっぱる。
「どう見てもアキくんの方が危ないじゃん! こんな可愛くておっぱい大きいなんて聞いてなかったし」
寧々を見て理世が言う。
「こんな子、芸能活動してても早々見ないからね?」
「そうなんですか? どうしよお兄。私グラビアアイドルとかやっちゃう?」
「勘弁してくれ……」
できそうなところがさらに問題だ。
ただ親戚として、というか妹のように見てきた立場として、複雑だ。
「お兄が独占したいならまあいっか」
「独占させるようなタイプじゃないだろうに……」
「えー。寧々、相手決めたら結構一途だよ?」
明らかに狙ったあざとい表情でそんなことを言う。
これ、知らない人が見たら騙されるだろうな……。
「アキくん!?」
騙されたのが横にいた。
「大丈夫だから。寧々は気づいたら彼氏作ってる」
「そう……なの?」
「失礼だなぁ。もう一か月近くいないのに」
「なるほど……」
一か月が長いというのを聞いて理世も納得してくれたらしい。
「でも、沙羅ちゃんはそうとは限らないよね」
「自分っすか? 自分は別に肉便器でいいって言ってるんで、身体以外は望まないっす」
「アキくん!?」
「何もしてないから!」
肩を握ってゆすられる。
沙羅を睨むがどこ吹く風だったので大吾を見ると……。
「やめろ! 身内のこういう話が一番きついって言っただろ!」
「じゃあ何とかしてくれ?!」
そんなわちゃわちゃを見て、理世も笑う。
その後冷静になったかと思えば……。
「まあ、身体だけって言うなら……」
「そこは本気だったんだな」
理世も理世で情緒が安定しないなと思いながら、改めて集まった面々を見る。
親戚。オンラインのつながり。さらにはその親戚……。
考えて見ると不思議な縁だな。
しかもこの中に二人も芸能人がいるなんて、理世と会うまでは考えもしなかっただろう。
もはやオンラインから始まったとも、会ってからはわずかな期間しか経っていないことも忘れそうになるほど濃いつながり。
「アキくん……?」
「いや、改めてよろしく。理世」
「ふふ。うんっ」
相変わらずの黒い衣装にハーフツイン、涙袋の目立つメイク。
間違いなく地雷系のファッションに身を包みながらも、そのオーラはどこか無邪気で、似合わないくらいの屈託のない笑みで、それでも魅力的に笑いかけてくれていた。
【書籍化】都合のいい地雷系彼女とカラダだけの関係を〜ちょっとエッチで都合のいい地雷系美少女と仲良くなっていく話〜 すかいふぁーむ @skylight
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