第30話

 その後も何箇所のワイバーンの巣を殲滅して回った。

 8階層の階段を見つけたが、私達は帰ることにした。

 ルウの大きさがライオンサイズになり、ユイを乗せて移動出来るようになったからだ。

 明日は朝から航空免許2級を取りに行くようだ。

 私も其方に着いて行こうと思っている。

 エマは大工と打合せをして、馬車の設計図が出来たようなので其方の確認もするようだ。

 アオイも店舗の立会いと、馬車の設計図の確認をするようだ。

 ユイ達も午前中に免許が終われば、午後には馬車の打合せに間に合うだろう。

 

 ルウは今楽しそうにユイを乗せて飛んでいる。

 私の背にはアオイが乗っており、エマは自分で飛んでいる。

 エマも風魔法で飛ぶのが楽しいようだ。

 今もルウと一緒に並んで飛んでいる。

 

 私達は1階層まで飛び、ダンジョンを出る。 

 受付まで行き今日の素材を換金してもらう。

 ワイバーンの素材を幾つかと、卵を提出した。


 「卵なんてあったんだね?

 それってどうするの?

 ピーちゃんが育てるつもり?」


 「ピュィピュィピィ(そんなつもりはない)

 ピュィピュィピィピュィピュィ(売ってしまっても構わないだろう)」


 「そうですね、私はルウちゃんが居ますから。

 エマちゃんは多分テイム出来ませんしね。

 アオイちゃんが要らないなら売却しか無いですね。」


 「黒助にも言ったが、私は必要ないぞ。

 黒助が要らないなら売却で構わないからな。」


 「私もピーちゃんのお世話で手一杯だからね。

 それで構わないけど、売れるもんなの?

 もしかして食用とか?」


 「エマ様魔物の卵は食用では御座いませんので今後見つけても食さないで下さいね。

 卵の場合は鑑定させて頂いて、オークションが一般的ですね。

 魔物の種類にもよりますが、大体億は超える値段で取引されますよ。」


 「そんなに高く売れるんだね?

 安全にテイム出来るのは確かだけど、ワイバーンの卵だと幾らくらいになりますか?」


 「ワイバーンですと騎乗も出来る魔物ですので、人気は高いですね。

 前にオークションに出された時は1億2千万だったと思います。」


 驚きの値段だったが、貴重な魔物の卵だからなそれくらいしても仕方が無いのかも知れない。

 パーティー名で売却を頼み、オークションに出して貰う手続きをして私達は羽田に戻って来た。

 ユイはルウと明日の試験の予習を庭でしていた。

 ルウも言葉は理解できているので、問題はない筈だ。

 筆記テストはユイなら余裕でクリア出来るだろう。

 エマでも合格出来たのだから……。


 

 翌日私とユイとルウは羽田空港に来ていた。

 前回来ているので私が案内をしている。

 受付を済ませて、講習会場に入って待っている。

 私とルウはユイの影の中で待っている。

 基本従魔持ちは一緒に来ているので、大人しくしていれば一緒にいて問題はない。


 普通の従魔は命令していれば大人しくしているので問題無いのだが、私とルウは結構自由にさせてもらっているのでそれなりに気を遣っている。

 私は講習2回目なので、内容には興味は無いのだがルウは興味津々に聞いていた。

 ルウは人の言葉を理解しているので、人間の生活にも興味があるようだ。

 偶に1人でテレビを見ているときもあり、グルメ番組とニュース番組がお気に入りのようだ。

 グルメ番組は分かるのだが、ニュースを見て何が楽しいのかは私には分からなかった。

 

 講習の最後に筆記試験があるがユイは難なく解いていた。

 私が確認してみても合格は間違いないだろう。

 

 「自信は有りますが、如何ですかね?

 パパは如何思いますか?」


 「ピュィピュィ(問題ない)

 ピュィピィピュィ(合格している)」


 「ルュゥルュゥルュゥルゥ?(父上はこの問題が分かるのですか?)

 ルュゥルュゥルュルュゥ(私では解けませんでした)」


 「ルウちゃんは解けなくても大丈夫ですよ。

 その為にママが居ますからね。

 ルウちゃんにはこの後頑張って貰いますからね。」


 「ルュゥルュゥルュルュゥ(はい母上任せて下さい)」


 掲示板の前で待っていた私達だが、色も形も違う2種類のグリフォンを肩に乗せているユイは目立つようで注目を集めているようだ。

 従魔は1人に1匹が普通なので2匹も連れているのは珍しいからな。

 

 時間になり、合格の番号が発表されたら掲示板を見てみるとユイの番号はしっかりと載っていた。


 「これで後は実技試験だけですね。

 ルウちゃん、一緒に頑張りましょうね。」


 「ルュゥルュゥ(はい母上)」


 実技試験もルウなら問題ないだろう。

 ユイの言葉を理解しているのだ、指示さえ間違わなければ大丈夫だ。

 昨日の練習を見ていれば合格は間違いない。

 受付に合格した旨を伝え、試験会場に向かう私達だが会場にいた試験官は、私が試験を受けたときの教官だった。

 誰が教官でも問題は無いが、知っている人だと安心できるのは私が元人間だった名残なのだろう。


 教官から前の通りに自主性に任せた試験が始まる。

 ユイが1番に手を挙げ試験を開始する。

 この辺の話は私やエマから聞いていたのですんなりと試験を受けるユイ。

 ルウに跨り開始位置まで駆け上がる。

 ルウも基本は空歩のスキルで駆け回る飛び方だ。

 補助や加速時などに風魔法を併用するので、燃費や小回りなどが効く飛び方だ。


 ユイの的確な指示に従って行くルウの姿は、天空と地上の王者に相応しい勇猛で繊細な飛び方だった。

 私はどちらかと言えば、ピシッピシッとお手本の運転のような飛び方だったので見ているものを惹きつけるような飛び方ではなかったと思う。

 アレがグリフォン本来の飛び方なのだろう。

 昔の王族が国旗や紀章に用いたのが良く分かる姿だった。


 ユイとルウの実技が終わり戻って来る。

 ルウは満足げな顔をしていたが、ユイは少し不安そうな顔をしていた。


 「ルウちゃんが優秀すぎて、私の指示で飛んで無いんですよね。

 アレだと私は必要ないものと思われても仕方ありませんね。」


 「ピュィピィピュィピュィ(アレで落ちることは無い)

 ピュィピィピュィピィピュィピュィピィ(アレで落とされるなら全員不合格だ)」


 「ルュゥルュゥルュルュゥ(母上御免なさい張り切り過ぎました)

 ルュゥルュゥルュルュゥルュゥ(母上と飛ぶのが楽し過ぎました)」


 「ルウちゃんは完璧に飛んでくれましたよ。

 私の問題なので気にしないで下さい。

 合格して外でも飛べるようになりたいですね。」


 「ルュゥルュゥ(はい母上)」


 そんな話をしながら私達は掲示板の前まで戻って来た。

 後は合格したのを確認して免許を持って帰るだけだ。

 これなら午後の馬車の打合せには間に合いそうだな。

 掲示板の前で時間を潰していると、全ての受験者が戻って来たようだ。

 暫くして係が掲示板に合格者の番号を出すアナウンスを流す。

 受験者が注目する中、合格者が発表された。

 ユイの番号は、勿論載っている。

 皆んなで受付に並び、免許証を受け取り帰宅することにした。

 此処から飛んで帰ればお昼には間に合いそうだ。

 ユイには悪いが、お昼を作って貰おうと思っている。

 

 表に出て、免許取得者が空を飛んで帰って行く。

 ルウがライオンサイズになりユイを乗せる。

 私もルウに合わせて大きさを揃える。

 2匹が並ん飛んで羽田のウチまで帰ろうと思う。飛んで帰れば5分と掛からずに帰ることが出来るからな。


 ウチに着いたら、エマとアオイは離れのリビングで寛いでいた。

 離れは既に出来上がったようで、大きなリビングとキッチンが有り、その奥には大きなお風呂が作ってあった。

 此方もユイの合格を報告して、合格祝いと離れの新築祝いでは無いがユイに料理を作ってもらうことになった。

 午後には馬車の打合せもあるのでお酒は飲めないが、お昼から豪華な食事になったのは言うまでもない。

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