公王と校長と
公爵をスキルで連れてきたら、当然だけれどもう独立は果たしているため公王と呼ぶことになる。
公王陛下と呼んで、独立したことを祝うのだ。
まず公王を呼んだのだから、そこで能力で呼びだした王冠を被せる。
聖域内の王冠である。
つけられた公王は嬉しそうにしていた。
まだ他の子供達には教えて居ないスキルの能力なので、とりあえずは内緒で私は校長の前で居室を用意して貰ってその場に呼び出したのだが、それが内緒の会談のようで、秘密めいたのが良いとされた。
まあそう言うの好きな人には刺さるかもしれないと思ったが、公王も好きだったんだなと苦笑する。
すると公爵改め公王は、新たに作った金貨でその場で雇用契約を結んでしまい、30数名の若者を連れて帰る算段を整えた。
30数名とあいさつを順次行い、楽しげだ。
つくづく思うのが、自分の代でああならなくて良かったと思う。
そこまで初対面の人と仲良くできるスキルは持っていないから、公王がひどく羨ましくも思う。
ああも楽し気に話せるとなると一種の才能であった。
ついでだと公王に今現状はどのような状況下にあるのか聞いて見れば、分かったことがある。
「クレアが君に嫁ぎたがっていたから、君の伴侶にどうかと言ってある」
と言うのだ、驚いた。
嫁ぎたがる?
わたしにはもうフローラが居ると言うのにか?と聞けば、王配に伴侶があることは決して珍しくないと言うのだ。
だから第二夫人と言う形でどうかと言われ、困惑する。
公王に女王として君臨するのはフローラである。
その王配が増えるならまだしも、と考えてしまう。
「無理強いはしていない。だから安心しろ」
それと独立派が金を全員詰んで、ルザーリアを出てきたぞと言うのだ。
それは良かったなと思った。
元からあらゆる貨幣は貴族年金も含め丸ごと残しておいて、新しい通貨にしたから丸丸王家に独立するための金として旧貨幣を積んだと言うのだ。
だから彼らはすっからかんで出ていないといけないはずだがと言う。
「こっちには金山があるからな。困ったことはないと言う事だ」
だからこっちに来ても安心だよと言うように、校長の前で言って見せる公爵。
「ははあ、成程、ルザーリアは矢張り噂通りのところですか」
「そうだ、元の母国たるルザーリアはそう言う事だな。アーレンゾ公国はそう言った事はないから安心してほしい」
「畏まりました。では教師になりたい者が今、確かアル君の寮で働いていたはずですな?」
「はい。そこに居ますので、後で3か月後には最短で戻りますから、その時には顔見世が出来る事かと思いますよ」
「そう言った事でして、その帰りしなにくっついていきたい物も居ると言うんですな。我々のところにもいますから、その者らも連れて行ってあげて欲しい」
「有難うございます」
いやあ助かったとアーレンゾ公王が言うのをうけ、校長はにこやかだ。
教師がいい教師を雇えたらしく良かったと言うのだが、校長は、第一線で活躍している教師でないので、実力はこれからと言ったモノが多いですがと幾分か謙遜しているのかその返答は冷ややかだ。
確かにそうかもしれないが、これは教師が欲しかったアーレンゾからしたら素晴らしい事なのですよと言って聞かせると、その表情は解れていく。
良かった、ならば後から力の無いものを送ったと言われずに済みますなと冗談交じりに言うのであった。
札束ビンタだなと思う程に金貨がものを言う世界になってしまっている世の中だが、アルはため込んだ大金貨を使ってアーレンゾのためになる物を購入していく。
そして公王にくっ付けて持ち帰らせるのだった。
「教科書な、作らせておけばいいのであれば聖域内だろう?」
「現時点で教科書の数は少ないですから、どんどん刷らせてください。勿論手蹟は美しい者が書いてくださいね。じゃないと折角の教科書が読めませんからね」
兎も角も、全員が教科書を買えるほどに安くしましょう、自国内ではと言うと、苦笑していた。
それから公王を送って、アルはフローラと寮に帰っていった。
皆楽しく懇親会を過ごせたようでうれしそうだ。
公王は来週、ここに通っている王族と会おうと約束を取り付けられて満足そうにしていた。
来週では、何かプレゼントを用意出来るだろうと、アルに色々と用意させる手筈もしている。
さて、明日から勉強だ。
どこまでの学習が進んでいるかテストがまず行われる。
それに合格したならば、そのまま授業が無くなるのである。
皆とても楽しみだった。
あれだけ勉強したのだ、良い線はいってると思うのである。
「頑張ろうな」
「ああ!!」
アルはその様子を見て嬉しそうに笑みを浮かべていたのだった。
*****
聖域に、なるべくだったら引きこもりたい ゆう/月森ゆう @benikake
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