【3日目】
今ぼくは全身をコードで繋がれている。
フーリーの助手として働く前に、ぼくのメンテナンスをするということだった。
フーリーはパソコンに向き合って何やら入力しているが、そこはぼくの預かり知るところではない。ただ、そのパソコンがやたらゴツゴツした、失礼ながら不格好と呼べるものだったので、思わず訊ねてしまった。
すると、フーリーはどこか誇らしげに胸を張って、「コイツも鉄の墓地生まれだ」と言う。廃棄されたものから使える部品を集めて、組み立てて、調整して。そうやってできたのがこのパソコンなのだそうだ。
「俺もなかなかやるだろ?」
「はい」
「淡白すぎて褒められてる気がしねぇ……」
しょんぼりと肩を落としてフーリーが呟く。それでも手は忙しなく動いてるし、目もモニタから離されることはない。そういうところはさすがだなと思う。
「うーん、調整的にはこんなもんだなぁ。悪いけどこっちの研究のためだ、取れるデータは全部吸い出させてもらうぜ」
「了解です」
「………ん、」
モニタを見つめていたフーリーが、何かに気付いたように目を細める。それを暫く眺めるようにしてから、ふいにぼくの方へと顔を向けてきた。
「お前さんの研究……もしかして」
「はい。アンドロイドは心を持つことができるかどうか。はるか昔からずっと研究され続けていて、まだ解明されていないテーマです」
「………そうか……なんで捨てられた?」
「四肢の機能不良だと判断しています」
「修理するより新しいの買ってデータ移した方が早いってか。相変わらず腐ってんなー」
「あの、何か問題でも生じましたでしょうか?」
「特にねぇって言いたいとこだが………お前さんの喋りが硬いことが問題だな」
そんなこと言われても。
「そのかったい喋り方な、兄ちゃんが自分で考えて決めたのか?何かキッカケでもあったのか?」
「いえ……初期設定です」
正直に答えたら、フーリーは頭を抱えて大きなため息を吐いていた。
それが何故なのだかは、ぼくには分からなかったけど。
アンドロイドとおっさんの365日 MELURISU @saekiminoru
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