花守の竜だけの魔法

豆腐数

人にもよるだろうけど、アニメぽぽたんはマジで落ち込んだ。

 桜が一瞬で散って、代わりにツツジの花が咲き始める今日この頃。どっこにでも顔出して咲き始めるナガミヒナゲシやっべえな。一つの花から何百もの種を撒き散らす、西洋タンポポよかヤバイ雑草花ですが、個人的にはこの花が咲く時期になるたび「花守の竜の叙情詩」っていうラノベ思い出すので嫌いじゃないです。


 作中ではアマポーラと呼ばれている、ナガミヒナゲシよりもう少し赤い色であるこの花が、ようは春先にあちこちで咲きまくってるヒナゲシだと知ってから、この時期にヒナゲシを見ると思い出すパブロフの犬になってるんですよね。全3巻、全ての巻の表紙に真っ赤なヒナゲシが描かれてるんですが本当に綺麗なんですよ。表紙だけでもググってみてほしい。現実では困った雑草、作中でもネガティブだったヒナゲシの名前が、1巻終盤に変化する流れは何度思い返しても最高の作品だと思う。


 桜の花のモチーフの話も大好きだけど、こっちはいかんせん競争率が高すぎる。桜見たら良くも悪くも色んな作品が浮かんでしまう。ザッと浮かぶだけでもギャルゲなら「ダカーポ」「季節を抱きしめて」、文学だったら「桜の樹の下には」「桜の森の満開の下」など。カクヨムでも素敵な桜の物語をいくつも読んだ。もちろんそれぞれモチーフの使い方は全然違うのだけど。それだけにレベルの高い作品が集まり、私の脳内連想ゲームでは激戦区なのだ。


 案外タンポポモチーフは穴場の狙い目で、ギャルゲーだと「ぽぽたん」しか知らない。原作ゲームのギャルゲーじゃないと難しい、大胆な伏線の張り方とぶっ飛んだタンポポの意味も好きだけど、それ以上に別物ながら隠れた良作であるアニメ版の、重く切ない回収が忘れられない。小説ならやっぱり有川浩さんの「ラブコメ今昔」の「ダンディ・ライオン」が印象的かな。文庫版後書き読む限りだと、作者の方が取材入れたりなんだりで気合入れてるのは他の作品みたいだけど、男女共に惚れる流れが素敵すぎて、この作品が一番お気に入りなんですよね。ヒロインのダンディ・ライオンの褒め方もすごいが、二人がぎくしゃくしてる時、男子側が思わずカメラのシャッターを押すとこで泣いてしまった覚えが。


 そんなたくさんの花の物語の中、ヒナゲシをメインに使った作品は、自分が知ってるものではこの「花守の竜の叙情詩」だけ。他にも探せばあると思うけど、少なくとも定番ではないと思う。王道なファンタジーだけどずっと忘れられず、春に仲間のヒナゲシが咲くたびただ一つこの作品を思い出すのは、作者の方の淡路帆希さんの着眼点と練り込みの賜物でしょう。プロってこういう、自分なりに練り込んだ演出と着眼の部分がちょっと違うよなあと思う。


 長くなりましたが、電子書籍も出てる「花守の竜の叙情詩」、この機会に読んで一緒にヒナゲシ見るたび思い出す魔法にかかりませんか。キャラの心情も、ヒロインの水浴びシーンさえもセクシーというより美しい、ガールミーツボーイハイファンタジーです。1巻だけでも綺麗に終わってるのでお試しに1冊読んでみるのも良いかと。


 いや、他の作品が気になったらそっち見てくれても全然構わないんですけど。アニメぽぽたんなんかはアマプラもあるし。dアニメストアの連携か、各話レンタル購入じゃないと見れなかっはずだけど。こっちは結構際どいお風呂場シーンもほぼ毎回あるよ。私は同時期に見た「トップをねらえ!」と合わせて「ビーチク見れたからってなんだよ……。美少女の姉ちゃん達のビーチク見たところで、この重く切ないSFで負った傷は癒えねえよ……」ってなりましたがw「ぽぽたん(アニメ版)」はタイムトラベルSF、「トップをねらえ!」はウラシマ効果を見事に使った重い切ないSFロボもの人間ドラマです。どっちもタイトルでこういうの好きな人がスルーしてそうな気がする。特にアニメぽぽたん。

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