愛が狂気を生むのか、狂気が愛を育むのか。

 主人公の青年には、大事な彼女がいた。しかし主人公はある事故をきっかけに、好きな人に想いを伝えようとすると、言葉が出ないという「症状」に苦しんでいた。そんな主人公であっても、彼女は主人公と一緒にいてくれた。彼女もまた、悩みを抱えながらも必死に……。
 主人公には姉と妹がいた。母親は交通事故で既に他界しているし、父親もいない。妹は主人公のせいで母親が死んだのだと思い込み、主人公を責めていた。そのため兄妹が家に帰省しても、家では不穏で重い空気が満ちるだけだった。しかし、姉や妹と記憶のすり合わせをしている中、徐々に事故の記憶にすれ違う点が出てくる。そして兄妹は姉の導きもあって、ついに事故の本当の記憶に辿りつくのだった。
 妹と和解した主人公は、これで彼女に想いを告げられると思っていたのだが、それは失敗に終わる。しかも家にはまだ解決すべき問題があった。
 それは母親の妹に当たる叔母の存在だ。どうやら叔母が事故の記憶に関りがあったようだ。一体叔母は何が目的なのか?

 愛する人にそれを伝えられない苦悩。
 それでも前に進もうとするひたむきさ。
 家族の絆。
 それら全てが心に刺さる一作です。

 是非、御一読下さい。