縦読み推奨というだけあって、読み応えがとにかくすごいです。ただ、愛と呪いをテーマとするだけあって内容が重く、その表現力の高さも相まって序盤は本当に自分まで苦しくなってくる錯覚を覚えてしまいそうなほどでした。十話、十一話まで読み進めることで、ようやく少し救われたという思いが出てきます。この反動は少し癖になりそうです。
この話をターニングポイントとして、呪いの謎も少しずつ明らかになってきそうで、これ以降に周辺の人物も動き出し、物語が一気に進みそうな印象になっています。心の機微を感じるだけでなく、呪いの謎を追うというサスペンス的な色もここではっきりと出てきます。
主人公の青年には、大事な彼女がいた。しかし主人公はある事故をきっかけに、好きな人に想いを伝えようとすると、言葉が出ないという「症状」に苦しんでいた。そんな主人公であっても、彼女は主人公と一緒にいてくれた。彼女もまた、悩みを抱えながらも必死に……。
主人公には姉と妹がいた。母親は交通事故で既に他界しているし、父親もいない。妹は主人公のせいで母親が死んだのだと思い込み、主人公を責めていた。そのため兄妹が家に帰省しても、家では不穏で重い空気が満ちるだけだった。しかし、姉や妹と記憶のすり合わせをしている中、徐々に事故の記憶にすれ違う点が出てくる。そして兄妹は姉の導きもあって、ついに事故の本当の記憶に辿りつくのだった。
妹と和解した主人公は、これで彼女に想いを告げられると思っていたのだが、それは失敗に終わる。しかも家にはまだ解決すべき問題があった。
それは母親の妹に当たる叔母の存在だ。どうやら叔母が事故の記憶に関りがあったようだ。一体叔母は何が目的なのか?
愛する人にそれを伝えられない苦悩。
それでも前に進もうとするひたむきさ。
家族の絆。
それら全てが心に刺さる一作です。
是非、御一読下さい。