第三話 魔王様、ハートブレイク

「よしっ、じゃあ行こうか」


静寂銃士ことじゅうしが和服に着替えていた。すげえ、イケメン感漂うし、どこかの貴族とかそんな感じである。

すると、なにやらごそごそとすけぽんが取り出した。


「まず、バーベキューグリルと木炭に……」


「ちょっと待て」


なんだその道具は。俺らは今から地下迷宮のダンジョンを探索するのであって、料理をしにきたわけではない。すると、じゅうしはこくこくと頷いた。


「ああ、それは俺がすけぽんに頼んだんだ。モンスターを食っていればダンジョン内に食べ物が無くても生きていけるからな。ここいらの冒険者は基本的に調理器具は持っていく。すけぽんは「アイテムボックス」という魔法があるから他の冒険者と比べると楽なんだ」


なるほど。確かにそれならばこの道具も問題はないのか。


「すまんな、まかべん。俺、これでもダンジョン内の魔物がどうゆう料理になるのか興味があってな。実は、今回、それでパーティーメンバーを募集したのだが、皆、気味悪がって……巨大ガエルの件は受け付けたのだが、もしも、見つかればで構わない」


じゅうしががっくりと肩を落とししょんぼりした。

ダンジョン飯という類なのだろうか。しかし、思ったよりは変な人ではないことがわかる。


「わかった、そうゆうのは大歓迎だ。効率よくダンジョンを進めるのにはうってつけだし。あ、じゅうしは地下迷宮のダンジョンを作ったのが魔王だって知ってるのか?俺とすけぽんはこのダンジョンの魔王討伐を目指して頑張ってるんだが」


『魔王様を討伐?なるほど、それならば私が道案内します?』


なんと、静寂ハンドキャノンが声を……いや、テレパシーで会話してきた。


「ハンドキャノン?お前、魔王のことを知っているのか?」


じゅうしが肩に乗っているハンドキャノンに話しかけている。


『はい、あのお方は私のエサ代を払わずにエサをあげるのを拒み、私を餓死寸前まで追い込みましたが、そこをじゅうし様に助けていただいたのです』


魔王、ただのクズじゃねえか。


「だが、魔王を倒すということはハンドキャノンの産みの親を倒すことになるのだが、いいのか?」


魔王討伐は確かにいるがハンドキャノンは魔王の側近。そんな簡単に魔王を倒すという目標に賛同してよいのだろうか。


『いいえ、私もちょっと魔界の女の子に失恋したからって地下迷宮に閉じこもるとかなよなよした魔王様は憧れではありません。なので、反抗期の私をパーティーとして入れてもらい魔王様に喝を入れていただきたいのです』


魔王が引きこもった理由が想像以上にハートブレイクだったのは予想外だったが、こうして、ハンドキャノンも頷いているので良しとするか。


こうして、俺らは地下迷宮のダンジョンへ足を踏み入れたのである。

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神様失格 もっけ @mokke20210918

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