後編
数日後、彼は転校して行った。
この数日間で周りは目まぐるしく変わった。
きっかけは僕だったらしい。
僕のあの行動で、少年は味方が居るんだと思えたと言っていた。
そこから少年は親に相談し、事が明るみになった。
机に書かれた罵詈雑言や担任教師の隠蔽、暴力の実態など様々なことが暴かれ、主犯格の奴らは停学処分。担任教師は退職した。
少年はいじめは無くなったものの、1度抱いてしまった他人への不信感は簡単に消えるものではなく、通信制の高校へ行くようだった。
少年とその両親からはとても感謝されたが、僕としては本当に違和感でしか無かった。
ただその1歩少年へ歩み寄っただけで感謝される。
今までずっと0歩のまま傍観者であったというのに。
◆◆◆
そして何より胸糞が悪いのが手のひら返しをした他の生徒たち。
僕と同じく傍観者の奴は居たが、それはほんの一部であり、ほとんどの人は罵詈雑言を書いたり、悪口を言ったりとしていた。
本当に悪いと思っているのか、否、思っていないであろう。
だからいじめという闇は、いつまでも残り続けるのだろう。
やっぱりこの世界は陰湿だ。
◆◆◆
僕は公園で1人ブランコを漕いでいた。
このひっそりとした場所からはよく夕焼けが見えて、心が落ち着く。
僕の家に次ぐ第2の居場所のようなものだ。
目を閉じて考える。
僕は少年を助けた。
だが、これは結果論に過ぎない。
この行動をするのがもし遅れていたら、もしあの時帰り道で主犯格の奴らを見つけていなかったら、そもそももっと早く救えば少年は通信制に通うほど心が傷つかずに済んだのではないか...。
自問自答を繰り返す。
答えなど無いはずなのに。
後悔が鼻を擽る。
◆◆◆
僕はヒーローになんてなれなかった。
無論、この世に存在していないのだ。
この世でヒーローなんて呼ばれるのはただの比喩であり、ヒーローでは無い。
それでもヒーローに憧れ、微かな期待を抱いてしまう。
僕は誰かのヒーローになれるのだろうか。
そんな自分がやっぱり好きになれない。
厭離穢土 k0n0 @k0n0
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